可愛い姉・美人な妹

ユウキ

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サイドストーリー フレディ奮闘記

アデラインの試験

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アマンダが居る法務局市井部門は、僕の宰相補佐室のある棟の幾つか下の階ある。

まだ補佐の雑務をする僕は、そちら付近への雑用を片っ端から奪い取っていったり、ランチに誘ったりとチラホラと顔を出す事を繰り返していた。


いわゆる牽制だ。


僕とアマンダを交互に見て探る視線を投げてくる輩に、にっこりと微笑みながら凄んでおく。


「先輩、どうかしました?」


不思議そうに僕と、視線の先を探ったアマンダには「なんでも無いよ?」と言って凄んでいたのを即座に引っ込めた。


学園の時同様に、「新人のアマンダには公爵家の嫡男が付いている」と言う噂が静かに広まっていったのは、当たり前だった。


時々休みの合う日に一緒に出かけて、アデラインと合流したとき、べったりとアマンダにくっついてグルグル唸って僕へと牽制してくるのだけど、そう言った日々のお陰か、学園の時よりも僕の心は穏やかだ。



アデラインの採用試験にも付き合って、近くのカフェで待った。

ずっと眉を下げてソワソワして、ついには手を組んで祈り出すアマンダは本当にいじらしくて可愛い。

アデラインはアマンダや僕につきあって勉強したせいか、3ヶ国語とスラング、訛りにも強い。

他国の専門書や私小説をも扱うこの出版社であれば、間違いなく即採用となるだろう。


「そんなに祈らなくても絶対受かるよ」
「そ、そうなんだけど。自分が行くのは全然アレでも、アデラインが行くと思うと何だか緊張しちゃって」


まだ手を合わせてにぎにぎと落ち着かなさそうにするアマンダの手を包むように両手で握ろうとしたら、


「あ、アデライン!」


タイミング悪く、建物から出てきたアデラインに気づいたアマンダは勢いよく立ち上がって飛んでくるアデラインを両手を広げて抱き留めた。


「お姉様!これ、この冊子を翻訳したら本採用にするって!」
「え、面接と軽いテストだけじゃなかったの?」
「うん!お姉様、私嬉しくって!」
「まだ早すぎかもよ?翻訳完璧に仕上げなきゃ」
「そうなんだけどっ」


姉妹の感動の隙に、冊子をヒョイっと抜き取って中を見た。
2ヶ国語と、引っかけのような西海岸特有の訛りを混ぜてあるが、アデラインでも問題なく翻訳できそうだ。
コレは最終試験の難易度高めの課題じゃ無いだろうか?わざわざ面接と簡単な試験しかしない1次試験で、手元に用意しておいた面接官の周到さに恐れ入る。


もちろん言われた期限にきっちりと完成させたアデラインが、採用内定をもぎ取ったのは言うまでも無い。
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