可愛い姉・美人な妹

ユウキ

文字の大きさ
上 下
48 / 69
サイドストーリー フレディ奮闘記

歪な関係

しおりを挟む
ジェライト伯爵家に着くと、伯爵夫妻に出迎えられる。

伯爵当主はアマンダに似ていて、短いがまっすぐな黒髪をと丸く黒い目が印象的。人の良さそうな、強く出ることはなさそうな印象を受ける。
夫人はすっきりとした目元をしていて、真っ直ぐな栗色の髪を結いあげて、少々派手に思える室内ドレスを着ていた。

公爵家が来るということで、張り切ってしまったのかもしれないな。


「シューコット様、本日は娘のアデラインをお誘い頂きありがとうございます。どうぞ宜しくお願いしますね」
「…………?」


(ん?何を言っているんだ?
僕、アマンダ宛に手紙を出さなかったっけ?緊張して宛名間違ったりしたか?
いやでも、返信は確かにアマンダからだった気がするんだけど?)

返事に困っていると、伯爵が背後に目をやってから僕へと告げる。


「二人とも何かと無作法があるやも知れませんが、寛大な目で見ていただければ幸いです」
「アデラインは所作も美しくて、心配なんて必要ありませんわ。
 さぁ、こちらへアデライン」


何かとアデラインとばかりを推す夫人に眉が寄るが、アデラインと共に出てきたアマンダを見て口元が綻んだ。


「やぁアマンダ嬢、アデライン嬢。二人ともとても素敵な装いだね。
 色違いだけどそれぞれとても似合っているよ。今日は両手に華で周りに羨ましがられてしまうかな」



色違いと分かるドレスだけど、控えめな華やかさのあるラベンダー色のドレスが、アマンダの髪色に良く合っている。恐らくアデラインの見立てなのだろう。

アマンダの隣でやり切った満足感で、鼻が鳴りそうな笑顔を向けるんじゃない。


「フレディ様、妹共々お誘いいただき感謝いたしますわ。本日はどうぞ宜しくお願いします」


丁寧に礼をとったアマンダに続いてアデラインも礼をとる。
その後ろで手を打ち鳴らしてアデラインだけをひたすらに褒める夫人。呆れた視線を向けるも、止める気が本当にあるのかと思うほど小声で嗜める伯爵。


(…………成程)


収拾がつかないと感じたのか、アマンダが促して来たので3人で馬車に乗り込んで走り出した。


「いやぁ、アマンダ嬢から聞いてはいたけど、予想以上に……その…」
「強烈でしょ?アレでも人前だったのでマシなんですよ。ふふふ」


図書室での雑談で、掻い摘んだ事情を聞いていたのだけれど、「あれでマシ」とは…。家内での扱いの格差はもっと酷いのではないだろうか?
あまり調査を入れるのはどうかと思っていたが、やっておくに越したことは無いかもしれないかな。

そう算段を心中で付けて、目の前でイチャイチャしている姉妹に水を刺すことにした。



「あー、ハイハイ、そこから抱擁してベタベタする流れは分かったから。
 今日行く隣国で流行中の絵画展なんだけど、画商のオーナーと話せるようにしたから、時間いっぱいまで話せると思うよ」

「「流石先輩!」」

「もう先輩じゃないんだけど、まぁ良いや」



気心の知れた“先輩”枠から脱せるのはいつの事になるのやら……
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:84,014pt お気に入り:3,067

【完結】研究一筋令嬢の朝

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:400

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,391pt お気に入り:7,008

伯爵令嬢は身代わりに婚約者を奪われた、はずでした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:1,919

私が消えた後のこと

恋愛 / 完結 24h.ポイント:84,348pt お気に入り:393

王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:454pt お気に入り:5,697

私の好きな人には、他にお似合いの人がいる。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:325

王妃は離婚の道を選ぶ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:11,776pt お気に入り:1,505

処理中です...