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サイドストーリー フレディ奮闘記
フレディ気付く①
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いつもの場所に、人が増えた。
僕の有意義な時間が……と思うたびに、首を傾げる回数が増える。
アデラインは姉の隣をキープして、僕を排そうと必死だけれど、僕は反対側に座ったり、真前の席をキープしたりと大人気なく対抗した。
最終学年という事もあり、父が晩餐の時に尋ねてきた。
「フレディ、お前も来年には文官となって働くのだろう。そろそろ相手は見つかりそうか?」
我が公爵家は王族が降下する、いわゆる受け皿的な側面がある。権力はあまり持たない方が好ましく、降下する女性の王族が今代は居ないので、結婚相手は割と自由で良いとされていた。
しかし、歴代頭が良い者が多い公爵家なので、お相手は同じ学園の成績上位者から相手の居ない令嬢を選ぶことがままあった。その為お相手は在学中に自身で見つけるか、卒業後に両親が縁談を持ってくるかになるのだが。
「そうですね、まだ……」
その瞬間に僕は食事の手をピタリと止めた。
「そうか、じゃこちらで探すか?」
「いえ、結構ですよ、父上。どうやら目星は付いていた様ですから」
「……?そうか?変な言い方をするんだな。まぁ、探さなくていいなら良い。後々面倒にならん様にさっさと確保する方が良いぞ」
「そうですね。善処いたします」
父の言葉に頷きながら、僕は心の中がじんわりと熱を持つのがわかる。
相手が居ないかと聞かれた瞬間、僕の中に既にあった答えが目の前で輝いて存在を主張した気分だった。
あの特別な空間の、緑の光に彩られた彼女が、脳裏に鮮やかに浮かんだんだ。
僕の有意義な時間が……と思うたびに、首を傾げる回数が増える。
アデラインは姉の隣をキープして、僕を排そうと必死だけれど、僕は反対側に座ったり、真前の席をキープしたりと大人気なく対抗した。
最終学年という事もあり、父が晩餐の時に尋ねてきた。
「フレディ、お前も来年には文官となって働くのだろう。そろそろ相手は見つかりそうか?」
我が公爵家は王族が降下する、いわゆる受け皿的な側面がある。権力はあまり持たない方が好ましく、降下する女性の王族が今代は居ないので、結婚相手は割と自由で良いとされていた。
しかし、歴代頭が良い者が多い公爵家なので、お相手は同じ学園の成績上位者から相手の居ない令嬢を選ぶことがままあった。その為お相手は在学中に自身で見つけるか、卒業後に両親が縁談を持ってくるかになるのだが。
「そうですね、まだ……」
その瞬間に僕は食事の手をピタリと止めた。
「そうか、じゃこちらで探すか?」
「いえ、結構ですよ、父上。どうやら目星は付いていた様ですから」
「……?そうか?変な言い方をするんだな。まぁ、探さなくていいなら良い。後々面倒にならん様にさっさと確保する方が良いぞ」
「そうですね。善処いたします」
父の言葉に頷きながら、僕は心の中がじんわりと熱を持つのがわかる。
相手が居ないかと聞かれた瞬間、僕の中に既にあった答えが目の前で輝いて存在を主張した気分だった。
あの特別な空間の、緑の光に彩られた彼女が、脳裏に鮮やかに浮かんだんだ。
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