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サイドストーリー フレディ奮闘記
初めての出会い
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彼女と出会ったのは、2学年に上がって暫くした頃。変な噂を耳にしたことがきっかけだった。
「は?参考書?」
「そうそう、新入生代表だった女の子が参考書を手作りしてるって」
「ふぅん?それで、買ったの?」
「いや、貴族なのに金取るらしくってさ。自作だろう?もうちょっと静観かな~」
「なんだ、見たことないのか?」
「ほら、ガリ勉のくせに成績イマイチのマーティンがいたろ?あいつが食いついたらしい。あいつの成績が上向いたら考えようかなって」
「成程、まさしく“静観”だな。どこで手に入れるんだ?」
「マーティンからは図書室って聞いたけど」
そんな事をよく一緒に行動する友人から聞いた、その1ヶ月くらい後。
偶々課題に必要な資料を探しに、図書室へと訪れた時だった。その噂を思い出した僕は、借りた資料を片手にまた図書室の中へと取って返した。
人が殆どいない静かな場所。さり気なく探しながら奥へ奥へと歩を進める。
(いないなぁ。居ないのか?)
そんな風に思いだした頃、図書室の最奥の読書スペースに彼女は居た。
時間が止まったかのような、静かな静かな空間。
窓から見える木々が柔らかな緑に染まる光を跳ねさせ、彼女の真っ直ぐな栗色の髪に彩を添える。
そんな事、気にもしない彼女は姿勢良く机に向かって紙束と本を見つめていた。
(綺麗だ……)
暫く惚けて見つめていた僕は、ハッと気を取り直してゆっくりと足を進める。
(確か新入生代表の名は…)
完璧で静謐な空間を壊すのが躊躇われたのか、緊張してコクリと喉が鳴る。
「……ねぇ君、アマンダ・ジェライト?」
咄嗟に出てしまった言葉は、どう考えても不躾なそれで。内心で頭を抱えた僕だったが、彼女はスッと僕に顔を向けた。
「ええ、初めまして。図書室でございますので座ったままで失礼致しますわ。どなたか存じませんが、何でしょう?」
微かに微笑んだ彼女に、僕は小さく咳払いをして取り繕う。
「ああ、失礼。私はフレディ・シューコット。
噂で聞いたんだけど、君の作る参考書に興味があって………」
確かに興味はあったから、そう切り出すと、彼女は微笑を深めてにっこり笑ねえから横の椅子に置いておいたのであろうカバンの中から、2冊の分厚い本を取り出した。
「成程。ではこちらが1学年の参考書、2学年のものはこちらです。
残念ながら最高学年の3学年は作成中でございますので、ご期待に添えないのですが」
「は?参考書?」
「そうそう、新入生代表だった女の子が参考書を手作りしてるって」
「ふぅん?それで、買ったの?」
「いや、貴族なのに金取るらしくってさ。自作だろう?もうちょっと静観かな~」
「なんだ、見たことないのか?」
「ほら、ガリ勉のくせに成績イマイチのマーティンがいたろ?あいつが食いついたらしい。あいつの成績が上向いたら考えようかなって」
「成程、まさしく“静観”だな。どこで手に入れるんだ?」
「マーティンからは図書室って聞いたけど」
そんな事をよく一緒に行動する友人から聞いた、その1ヶ月くらい後。
偶々課題に必要な資料を探しに、図書室へと訪れた時だった。その噂を思い出した僕は、借りた資料を片手にまた図書室の中へと取って返した。
人が殆どいない静かな場所。さり気なく探しながら奥へ奥へと歩を進める。
(いないなぁ。居ないのか?)
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時間が止まったかのような、静かな静かな空間。
窓から見える木々が柔らかな緑に染まる光を跳ねさせ、彼女の真っ直ぐな栗色の髪に彩を添える。
そんな事、気にもしない彼女は姿勢良く机に向かって紙束と本を見つめていた。
(綺麗だ……)
暫く惚けて見つめていた僕は、ハッと気を取り直してゆっくりと足を進める。
(確か新入生代表の名は…)
完璧で静謐な空間を壊すのが躊躇われたのか、緊張してコクリと喉が鳴る。
「……ねぇ君、アマンダ・ジェライト?」
咄嗟に出てしまった言葉は、どう考えても不躾なそれで。内心で頭を抱えた僕だったが、彼女はスッと僕に顔を向けた。
「ええ、初めまして。図書室でございますので座ったままで失礼致しますわ。どなたか存じませんが、何でしょう?」
微かに微笑んだ彼女に、僕は小さく咳払いをして取り繕う。
「ああ、失礼。私はフレディ・シューコット。
噂で聞いたんだけど、君の作る参考書に興味があって………」
確かに興味はあったから、そう切り出すと、彼女は微笑を深めてにっこり笑ねえから横の椅子に置いておいたのであろうカバンの中から、2冊の分厚い本を取り出した。
「成程。ではこちらが1学年の参考書、2学年のものはこちらです。
残念ながら最高学年の3学年は作成中でございますので、ご期待に添えないのですが」
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