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男爵家への報せ

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 数日後、数名の騎士が書状を携えてオーガスティン男爵家にやってきた。

 自邸に戻っていたオーガスティン男爵は物々しさに息を呑み、騎士が差し出す書状を恐る恐る受け取って中を読むと驚愕に目を開いた。


「なっっっっ!!娘が学園を除籍…?!なぜ?!」


「恐れ多くも王太子殿下に横恋慕をしまして。
 行動や口に出さないならまだしも、出した挙句にあろう事か、婚約者である公爵令嬢へ直接危害を加えました。同学園に通うことは危険と判断し、学園長、理事長の判断により除籍処分となりました」
「公爵様の?!!危害なんて、なぜっっそんな!」

「被害者である公爵令嬢によると、クレア・オーガスティンは王太子殿下と相愛であると妄言を吐いていたそうです。そして階段の最上部から突き落としました。これには目撃者がおります」
「そっっそんな馬鹿な…!編入前にある程度の身分差、貴族の常識を教えるように…妻に申し付けたはず…!バネッサ、バネッサはどこだ?!」


 手紙を握り締めた男爵は、真っ青な顔のまま屋敷内に居る妻の名を叫んだ。
 使用人が呼びに行ったのか、さほど大きくない屋敷の奥から、妻バネッサがゆっくりと、騒がしさに眉を顰めながら出てくる。


「何事ですの?あなた?」


 バネッサは夫の青い顔を見て、ただ事ではない事を察して側へ寄った。


「何かございましたの?」
「私はお前に以前、『クレアに貴族の常識を学ぶように教育しろ』と言ったな?」
「え…?ええ。あんな下賤な者に学べるとは思えませんが…」

「ちゃんと教えたのか?!教師をつけるようにとも言った筈だっ!」
「あっ貴方落ち着いてくださいましっ。何があったのですか?!」

「クレアが、恐れ多くも王太子殿下に横恋慕して、婚約者である公爵家のご令嬢に直接危害を加えたそうだっ!」
「え゛…!!!」

「謝罪…いや男爵如きが謝罪など、到底受けてはもらえんっ!まずい、まずいぞっ!このままでは、息子に代を変えても立ち行かなくなるのは目に見えている。終わり、終わりだ…!」


 膝をついて項垂れる男爵を、愕然と眺めるバネッサは、膝の力が抜けたのか夫の横にぺたりと座り込んだ。
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