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目撃者は静かに微笑む

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 クレアは拘束されたまま、学園内にある警備室に連れて行かれた。恐らく先程の顛末の聞き取りが行われるのであろう。

 皆が粗方去った後、ローランドは各方面に知らせを飛ばし終わってから警備室に向けて歩を進めた。
 メイナードに任されたからには、側近であるローランドには、全てを明らかにして報告する義務が発生するのだ。


 向かう道すがら、ローランドは状況を冷静に考察する。


 ダンスの授業は女子生徒は練習用の簡素なドレスへ、男子生徒は体の線が判るようにシャツと黒い細身のパンツに着替えるために、他の授業より終わりが早い。そのため、あの時間の大階段周辺はほぼ無人である。

 目撃者は居ないかもしれないなと、第三者の証言が無いという状況にローランドは眉間にシワを寄せてしまう。


 その時、練習着のドレスをきた女子生徒が、足早に歩くローランドを呼び止めるべく声をかけてきた。
 よく見ると、先程エレノアの欠席の伝言を頼んだ女子生徒ではないだろうか?着替え終えていないところを見ると、伝言の役目を果たした後、急いで戻ってきたのだろうか。


「あの……シュートルト様…よろしいでしょうか?」


 その女子生徒はローランドへ近寄ると、躊躇いながら彼女が見た光景を途切れ途切れに話した。


「……そうですか、お手数ですが一緒に来てくださいますか?」
「はい、もちろんです」


 真剣な面持ちで返事を返したその彼女── エレノアと同じクラスであり、公爵を主人と仰いだ手駒である彼女は、静かな微笑みを称えたままローランドの後について行ったのだった。
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