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アイザックルート失敗②
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アイザックは寂しげな瞳を向けるクレアを背にして、潮時かなと考えていた。
クレアとは、アイザックの家が経営する店の近くで、柄の良くない男達に絡まれていたのを、「営業妨害になったら嫌だなー」と思い、しょうがなく助けたのがきっかけだった。
貴族や裕福な平民へのコネづくり目的で入った学園で、偶々中庭でクレアと再会したのだ。
クレアは目を輝かせて「運命かしら!」と言っていたが、アイザックは「縁があったのだろうが、そんなのでいちいち運命を感じていたら商売なんてできやしない」と内心で毒つきながら、じと目になりそうなのを瞬きをして堪えた。
しかし、再会して「馴染めない」「爪弾きにされている」とぼやくクレアは、何故か生徒会長である王太子殿下と、宰相子息、騎士団子息と一緒に居る事が多い。
それを見かけたアイザックは、その瞬間にクレアを“めんどくさそうな客”から、“コネ造りの駒”へとカテゴリーを変更した。
これがなければ、きっと“めんどくさそうな客”から“めんどくさい顔見知り”へとカテゴリーを変更していたと思われる。
何故なら、会えば淑女科の愚痴を溢し、馴染む努力は見受けられない。所作は一向に改善される気配がなく、普通科に通う富裕層の平民の方が所作は綺麗だ。
残す特徴といえば、可愛らしい見てくれくらいではなかろうか。
そして時折向けられる、「私、分かっているからね」みたいな目線にどうも神経が逆撫でられる気がしてならなかった。
そこへ最近、『金髪ボブカットの淑女科の女子生徒が、食堂で王太子殿下の婚約者である公爵令嬢にぶつかって倒れさせて謝罪もなく逃げた』という噂が流れた。
貴族の娘が通う淑女科で、金髪ボブ頭なんてクレアしか思い当たる人物がいないが、その噂を聞いたとき、クレアが公爵令嬢と揉めたのを尾ヒレ背ビレが幾重にもついたのかと思ったのだが、実際に見た者が多数いる“そのままの事実”だという。
(あ、これ詰んだな)
この瞬間クレアを“コネ造りの駒”から“めんどくさい顔見知り”に変更して、そのうち断つと心に決めた。
今日わざわざクレアに声を掛けたのは、“駒”の機能がまだ残っているかの確認をする為だったのだが、見事に一人でガツガツとサンドイッチを頬張る、どう見てもやけ食いをしているクレアを見て、終了のお知らせが頭の中で鳴り響いた。
「ばいばい、おじょーさん?」
笑顔で呟くアイザックの声は、背後の離れたベンチに座るクレアには、届かなかった。
クレアとは、アイザックの家が経営する店の近くで、柄の良くない男達に絡まれていたのを、「営業妨害になったら嫌だなー」と思い、しょうがなく助けたのがきっかけだった。
貴族や裕福な平民へのコネづくり目的で入った学園で、偶々中庭でクレアと再会したのだ。
クレアは目を輝かせて「運命かしら!」と言っていたが、アイザックは「縁があったのだろうが、そんなのでいちいち運命を感じていたら商売なんてできやしない」と内心で毒つきながら、じと目になりそうなのを瞬きをして堪えた。
しかし、再会して「馴染めない」「爪弾きにされている」とぼやくクレアは、何故か生徒会長である王太子殿下と、宰相子息、騎士団子息と一緒に居る事が多い。
それを見かけたアイザックは、その瞬間にクレアを“めんどくさそうな客”から、“コネ造りの駒”へとカテゴリーを変更した。
これがなければ、きっと“めんどくさそうな客”から“めんどくさい顔見知り”へとカテゴリーを変更していたと思われる。
何故なら、会えば淑女科の愚痴を溢し、馴染む努力は見受けられない。所作は一向に改善される気配がなく、普通科に通う富裕層の平民の方が所作は綺麗だ。
残す特徴といえば、可愛らしい見てくれくらいではなかろうか。
そして時折向けられる、「私、分かっているからね」みたいな目線にどうも神経が逆撫でられる気がしてならなかった。
そこへ最近、『金髪ボブカットの淑女科の女子生徒が、食堂で王太子殿下の婚約者である公爵令嬢にぶつかって倒れさせて謝罪もなく逃げた』という噂が流れた。
貴族の娘が通う淑女科で、金髪ボブ頭なんてクレアしか思い当たる人物がいないが、その噂を聞いたとき、クレアが公爵令嬢と揉めたのを尾ヒレ背ビレが幾重にもついたのかと思ったのだが、実際に見た者が多数いる“そのままの事実”だという。
(あ、これ詰んだな)
この瞬間クレアを“コネ造りの駒”から“めんどくさい顔見知り”に変更して、そのうち断つと心に決めた。
今日わざわざクレアに声を掛けたのは、“駒”の機能がまだ残っているかの確認をする為だったのだが、見事に一人でガツガツとサンドイッチを頬張る、どう見てもやけ食いをしているクレアを見て、終了のお知らせが頭の中で鳴り響いた。
「ばいばい、おじょーさん?」
笑顔で呟くアイザックの声は、背後の離れたベンチに座るクレアには、届かなかった。
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