その化学は欲望に恋をした

神崎未緒里

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エピソード1 ある女性研究者の末路

第二話 事の準備は慎重に

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C2Sの二人目の被験者としてターゲットにしたのが、
俺を研究室から追い出した女性研究者である高坂美雪だ。








助手である高木美咲がうまくアポイントを取ってくれたこともあり、いつものホテルで意見交換という体で打ち合わせを行うことになった。


前回センサーのセットアップなどは経験があるので打ち合わせの前に部屋にセンサーをセットアップすることにした。


打ち合わせ時間の3時間前から部屋は抑えておいたので、助手の高木美咲と部屋の各所にセンサーをセットアップした。


なお、高木美咲には毎日のように研究者でたるもの常に色々なデータをとることが大切だと日頃からインプットはしている。

だが、そもそも彼女は俺がすることに疑問をもつことがないようにプログラムしてあるので本当に便利で信頼できる助手だ。


あとはC2Sをどうやって高坂に飲ませるか?

これが結構な難題なのだが、ここでふといいことを思いついた。

そう、奴は無類の甘い物好きなのだ。これを利用しない手はない。

早速、高木くんにホテルのラウンジでショートケーキをいくつか買ってきてもうことにした。

簡単に要件を伝えると高木くんは嬉しそうにラウンジへ向かって行った。

そしてしばらくするとすごい勢いで戻ってきた。




「先生~!買ってきました!!」


「おお、ありがとう。じゃ、冷蔵庫に入れておいてくれ。」


「はい♪」


高木君が冷蔵庫から離れて他の作業に入ったのを見計らって、俺はそのショートケーキに乗っている
一つのイチゴにC2Sをいくつかピンセットで埋め込んだ。

いえば1mmあるかないかの球体のカプセルなので目立つこともない。

そしてこういうスィーツを目にしたら欲望に素直な奴の事だ、必ず最初にこのイチゴを食べるはずだ。

あとはバックアップの意味で紅茶にも溶かし込めるように準備もした。



そうしているとあっという間に約束の時間が近づいてきた。



椅子や机をセットアップしているとロビーから電話が鳴った。

どうやら高坂が到着したとのことだ。

高木君に迎えにいかせて俺は部屋で待つことにした。



しばらくして部屋のドアが開き高木君が案内する形で高坂が部屋に入ってきた。

それを見た俺はしれっとこう声をかけた。





「やぁ、久しぶりだね。」


「なに?!悠木?!どういうこと!?」


「おいおい、そんな怖い顔をするなよ。 君の論文がとても素晴らしいものがあったから、 今後の研究のために話を聞きたいというだけのことだよ。」



 
そういう俺をじっと睨みつける高坂。










改めてみるとルックスという意味では美人顔にしっかり主張する胸が目を引く。



そしてそれなりに身長が高いこともあり、カッコイイ女性という事が似合う感じだ。

まぁ、その自慢のルックスとももう少しでサヨナラなんだがな!と心の中で独り言をつぶやいた。



そんなことは悟られないように俺は高木君に紅茶を用意するよう指示を出した。





「まぁ、立ち話もなんだからそこに座れよ。お茶とお茶菓子用意するからさ。」


「わかったわよ。まぁ、知らない人間じゃないし一応話は聞きましょうか。」





よしよし、なんとかスタートラインまではたどり着けたようだ。





高木君に紅茶を用意さている間に冷蔵庫からケーキを取り出した。

高坂用のケーキだけ違う皿で用意しておいたのでそれを間違えることなく高坂の前に置く。

俺達の前には違う皿にのったショートケーキを置いた。





「高木君、あとはボクがやるから席に座って高坂先生に資料をお見せしておいてください。」


「はい!お湯は準備できましたのであとはお願いいたします。」





そう言って高木君は資料を手にとって高坂の横に座った。

このために高坂の最新の論文を高木君に読み込ませておいたのだ。

普通に質問をできるレベルにはレクチャーをしておいたので、最初から普通に会話が成立しているようだ。

高坂もこういう形でしっかりと話が進めば気が緩むというものだろう。


俺は紅茶のポッドに茶葉を入れてお湯を注いだ。

数分後にC2Sを1個入れたコップに紅茶をまず注いだ。軽くスプーンで混ぜるとうまくカプセルが溶けてくれた。


これも間違えないように高坂の分だけ違うカップで用意して先にテーブルに置き、自分たちに分は別のカップで用意してテーブルに置いた。





「あら?悠木にしては気が利くじゃない。私がショートケーキ好きってよく覚えていたわね?」


「ああ。君とは良くも悪くもよく話をしたからね。こういうことは覚えがいいんだよ。」


「ふ~ん。アンタもちょっとは変わったのかしら?まぁ、でもお招きいただいてありがとう。いま、とてもいい質問をいただいてところよ。」

 
「そうか。紹介するよ。俺の研究室の助手をしていくている高木君だ」





そう言って俺は高木美咲紹介した。

こういう形式的なことをしっかりやることで高坂を油断させるという作戦だ。

高木君の愛想の良さもあり、高坂の警戒心がかなり和らいだようだ。

俺は事前に読み込んでおいた高坂の論文について触れながら話をはじめながらこう促した。





「まぁ、堅苦し形じゃないしな。紅茶とケーキを食べながらとしようじゃないか。」


「そうね。じゃありがたくいただくわ。」





高坂はそう言って予想通りショートケーキのイチゴを口にした。

もぐもぐと租借をしたかと思うとゴクリと飲み込んだ。

よし、今回の作戦の最初のところはクリアだ。

高坂は続けてケーキを口にしながら紅茶を口に運ぶ。

こういうときによいタイミングで高木君が高坂に話かけてくれる。




そのときに手元のPCの画面にC2Sのセンサー感知状況を表示させる。

うまく高坂の体内でネットワークを作り始めていることが確認できた。

3%という数字になっているが、あとは時間が経てば進行度があがっていくはずだ。





「あら?このケーキとっても美味しいわね。どこのものなの?」


「ああ、ここのホテルのやつだよ。スイーツは結構レベルが高いんだよ。」


「ふ~ん。知らなかったわ。帰りに見ていこうかしら?」





そう、帰るときにお前がお前であったならと、心の中で叫びたくなったのをグッっと堪えた。

こうしてC2Sを飲ませることに成功はしたが、定着させるまで時間を稼ぐ必要がある。

しばらくの間論文についてなんてことのない話を3人で続けた。

その間も目の前のモニターの進行度はあがっていく。

そして、やっと25%にたどり着いた。

前回のデータから言えばここまでくればトリガーキーワードが効いてくるはずだ。

そこでさりげなくキーワードである「男」という単語を使ってみることにした。





「そういえば、俺が研究室を出たあと、男のメンバーは誰か残っているんだったか?」





俺が「男」と言葉を発したときに高坂が小さくビクンとしたように見えた。

しかし、本人はそれに気が付いたそぶりはなくこう返してきた。





「そうねぇ。あの後男どもは他の研究室にいってしまったから、今は二人ぐらい残ったぐらいかしら?」


「そうなのか?そんなに男どもは居心地がわるかったのかねぇ?」


「どうなのかしら?偶然じゃない?」





なんだか少し言いにくそうな感じを含みながらそんな返しをしてくる高坂。

目の前モニターではまもなく進行度は40%になろうとしていた。

そろそろ反応がでてくることだなと、ふと高坂の胸元に目をやると、先ほどまでのしっかりと主張していた胸の膨らみが若干ではあるが減っているようにも見える。

同時になにか高坂が足をもぞもぞと動かしているのがわかる。

これはうまく機能し始めている証拠かもしれないなと、俺は会話の中にうまくキーワードを入れながら話を進めた。

モニターの進行度が50%を超えたあたりで、さすがに高坂も自分の身体の異変に気が付いてきたようだ。





「ん?この部屋なんか涼しくない?」


「どうした?さっきからずっと同じだぞ。」


「なんか胸元がスースーするのよね。」





そういって胸に手を当てたときに高坂の表情が変わっていくのが分かった。




「えっ!?どういうこと。。。」




さぁ、ここからが俺が仕込んだショーのスタートだ。



俺は思わず口元が緩むのを感じた。
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