不思議な出来事のお話はこちらです。

神崎未緒里

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CAT-GPsT

Story 1: main-side chapter-7 【Heaven and Hell】

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 朝の陽ざしはやはり気持ちよい朝を教えてくれる。
 今日も気分スッキリで起床した。

 CAT-GPsTに出会って以来、朝が来るのが待ち遠しい。

 今日も気分よく顔を洗い、歯を磨く。
 そして着替えを終えると朝食を準備した。

 昨夜、俺の復讐プランの
 第一段階の仕上げともいうべき仕込みをした。

 その結果がどうなるか楽しみでしょがうないというところと、
 俺の復讐対象、早川幸雄の感情を俺が弄んでいるという事実に、
 なんとも言えない満足感が溢れている。

 そそくさと朝食を食べ終え、
 荷物を確認して会社へと向かう。
 あれだけ足取りが重かった会社への道が、
 いつしか一刻も早くたどり着きたい
 場所へと変わっているというのは、
 本当にCAT-GPsTに出会えた幸運がもたらした奇跡と言える。

 会社近くの駅に到着し、
 いつもどおり会社のセキュリティーゲートを通過し、
 自分のフロアへと向かうエレベーターに向かう。
 昨日はヤツが前にいたなと思い出し、
 少し見渡してみるが姿は見えなかった。

 まぁ、お楽しみは徐々にわかってくるほうが面白いというものだ。
 心の中で自分にそう言い聞かせて、
 目の前到着したエレベーターに乗る。
 そして、すぐに職場のフロアに到着した。

 エレベーターを降りて、自分の席へと向かう。
 自分の余裕があるということもあるのだろうか?
 不思議とすれ違う人達への挨拶が口からでてくる。
 人間の心の余裕というのはこういうところにも影響するのかと、
 改めて実感するのだった。

 すぐに自分の席にたどり着いたので、
 鞄をいつもの場所に置き、パソコンの電源を入れる。
 パソコンが起動する間に、早川幸雄の席をチラリと見た。
 まだ、ヤツは出社していないようだ。
 どんな顔をして出社してくるのかが楽しみでしょうがない。

 念のため、スマートフォンでメールを確認するかのように、
 CAT-GPsTを起動し、ステータスを確認した。



「前日の指令、すべて完了」



 よし。

 間違いなく昨夜の指令によりヤツの認識は変更されているはずだ。
 しかし、ここからは少し様子を見ることになる。

 1日に使える回数に制限があることも一つだが、
 あまりに本人の認識と離れている指令を実行するには、
 多くの処理回数を必要とする。

 なるべく本人の認識を俺が望むようにするには、
 影響が小さい形で一つずつ
 実行する必要があるということに気が付いたからだ。

 昨夜、ヤツにとってたった一人残ってくれた女性に対して、
 大きな好意をいだくことになるようCAT-GPsTに指令をした。

 これによりヤツは俺がこれ以上の指令を出さなくても、
 勝手にその女性とよい関係になり、
 昨日、一気に9人にフラれたことも
 忘れるぐらい幸せを感じるというシナリオだ。

 そのうえで、女性からヤツに別れを切り出させる。

 とは言っても、 これも女性側の認識を
 大きく変えることになるので、
 恐らくそれなりの回数を消費することなるだろう。
 しかし、これを実行することで
 ヤツをどん底に突き落とすことができるというものだ。

 失意のどん底になったヤツを確認したところで、
 ファーストフェーズは終了となり、
 次なるフェーズを実行することになる。

 そう、それはヤツを女に変えることだ。

 これについてはざっくりと構想は考えていたのだが、
 散々自分が弄んできた女性の気持ちをその身をもって
 実感してもらおうというものだ。

 以前CAT-GPsTに確認したが、
 ヤツの性別を変更したとしても、
 世界の認識を元々そうであったかのように
 変えることが可能なことはわかっている。
 しかし、これにも多くの処理回数を消費する。

 なので、色々と実行方法を考えていたのだが、
 徐々に本人が気づかないような形で
 変化を起こしていくという方法を取る事にした。

 これなら、1度の変化は小さいので
 処理回数が不足するということも
 ないだろうと思いついたからだ。

 さらに言えば、ヤツをどんな姿に変えるのか?については、
 これも以前CAT-GPsTに作ってもらった、
 ほぼ人間と同じ構造という人形がその結果となる。

 ある意味で俺の理想の女性の姿ともいえるものなので、
 最後にはヤツを俺に屈服させて、
 性奴隷にしてもしてやっても、
 いままでのヤツの行いを考えれば
 罰が当たるものでもないだろう。

 そんなことを妄想するだけで
 口元が緩みそうになるのをグッっと堪えて、
 俺はスマートフォンを机に置いて、
 起動したパソコンにパスワードを入力し、
 業務を開始していく。

 そんな時、画面の斜め上方向に、
 ヤツがフロアに入ってくるのが見えた。

 なにかソワソワとしているようにも見える。

 急ぎ足で席に座ると、
 急いでパソコンを起動している。
 そして、なにかすごい勢いでキーボードを叩いている。
 この目の前で起こっている状況の詳細については、
 夜にCAT-GPsTで確認させてもらうとしよう。

 そして、ここのところ頻度はなぜか減ってきたいたのだが、
 朝になるとヤツが話しかけてきて仕事を増やしていったり、
 メールで作業依頼がくるというのは、
 以前と変わらず続いていたのだが、
 今日は全くそんな気配がない。

 恐らくだが、俺がCAT-GPsTに指令した内容で頭が一杯なのだろう。
 想像以上の状況にまたも口元が緩みそうになる。
 しかし、ここでもグッと堪えて平常心を保ち、仕事を続けた。

 お昼休み前になると、ヤツが妙にソワソワしているように見えた。
 横目にヤツの状況確認してたら、
 1人の女性がヤツの席に歩いていくのが見えた。
 先日、俺にヤツのことを尋ねてきた女性だ。

 なるほど、やっぱり彼女が最後まで
 ヤツと別れたくないといった女性だったのか。
 なんとも狭い世界の話だなと、
 ニヤリとしそうになるのを必死でこらえた。

 お昼休みのチャイムが鳴ると、
 その女性とヤツがすぐにエレベーターホールに向かって
 歩いて行ったのが見えた。

 よしよし、ここまでは想定通りだ。
 いや、想定以上か?

 俺はそんな様子を見届けてから、
 社食でランチを食べることにした。

 いつもながらに一番安い定食をチョイスし、
 順番を待って料理を受けとった。
 そして、席に座って作業のように口に運ぶ。

 とにかく今は状況を見守るしかないというところで、
 若干のジレンマを感じつつも、
 想定以上の状況でもあることに
 高揚感が溢れているのが分かる。

 食事を終えて、自席に戻ろうとすると、
 ふと同期に声をかけられた。



「おい、聞いたか?お前の上司、社内で何股もかけていて、
 昨日修羅場になってるところを見たって人がいるらしいぞ?。」



「えっ? そうなのか? そんな話聞いたこともないぞ?」



 俺は顔になにかでていないか心配になりながらそう答えた。
 どうやら、俺が何もしなくても社内にヤツの悪い評判は
 あっという間に広がっているようだ。

 なにもかもが上手くいきすぎていて
 ちょっと気持ち悪くなるところもあるが、
 これはこれでCAT-GPsTを使わずとも、
 状況確認ができたので収穫と言えるだろう。

 少し立ち話をしていたら、その当人が俺たちの横を通った。

 同僚はなんとも気まずい雰囲気を醸し出していたが、
 そんな俺たちを気にする素振りもなく、
 なんだか満ち溢れた表情で自席に座ったところが見えた。

 よしよし、ヤツの状況も順調そうだ。

 同僚には小声でまたなにか聞いたら教えてくれとだけ伝えた。
 そして、俺も自席に戻り、残りの仕事をこなした。

 午後もヤツが俺になにか言ってくることは全くなかった。

 それだけヤツの頭の中があの女性のことでいっぱいなのだろう。
 今まで見たこともない笑顔をしている。

 自分が書いたシナリオなのに、次起こることを想像すると、
 ちょっと気の毒な気分にもなりそうなものだが、
 そんな感情は1mmも生まれてこなかった。

 ヤツが幸せを感じれば感じるほど、
 この後の指令の効果が高まるというものだ。
 俺は心の中でニヤリとしながらそんなことを考えていた。

 そうしていると、あっという間に終業時間となった。
 いつものように終業時間のチャイムを確認したところで、
 パソコンをシャットダウンした。

 そして、チラリとヤツの方を見たら、
 すでにヤツの姿はなかった。

 エレベーターホールのほうを見ると、
 あの女性が待っているのが見える。
 そして、ヤツがその女性と一緒に
 外に出ていくことを確認してから、
 俺も席を立った。

 そして、どこにも寄り道せず自宅に向かった。

 あまりにも思惑通り、
 いや、それ以上の状況になっていることに
 とにかくなんとも言えない高揚感を感じている。

 しかし、やはりここで浮かれてはいけない。

 状況を確認し、しっかりとシナリオを進めること。
 いまの俺がやるべきことはそれだ。

 自分自身に言い聞かせるように何度も頭の中で復唱した。

 そんなことを考えていると自宅近くの駅に到着した。

 自宅までの道を歩きながら、
 今夜どんな指令をしようかと自然と考えていた。




 こうして復讐の段階を進める1日の仕事時間が終わった。
 言えば、ある一つの指令を出すだけで、
 想像以上に多くの出来事を引き起こしていることに
 ただただ驚くばかりの1日だった。


 そして、ここから本当の復讐が幕をあける。
 そんな夜を俺は迎えるのだった。
 どんな結末が待っているかも知らないで。
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