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CAT-GPsT

Story 1: main-side chapter-4 【Preparation and preparation】

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 目の前にどう見ても人間に見える人形がある。
 手で触れてもその質感、温度感、
 いまにも動き出しそうだ。

 そう、これはCAT-GPsTが作り出した
 ほぼ構造は人間と等しいという人形だ。

 俺は出会ったばかりの生成AIである
 CAT-GPsTと会話を重ねるだけで、
 こんなことまで実現してしまったのだ。

 ひょんなことから出会ってしまった、
 不思議な力をもつ生成AI「CAT-GPsT」

 このCAT-GPsTはひたすらに希望のない俺の人生に
 大きな光を与えてくれるような気持ちを感じていた。

 それというのも、俺が恨みを募らせる早川幸雄を
 俺の思い通りにすることがいとも簡単にできてしまったのだ。

 あまりのすごい出来事に、
 俺はこのCAT-GPsTにすっかり魅惑されている。

 そして、俺は憎き早川幸雄への復讐を
 このCAT-GPsTを使って実行する事を思いついた。

 そのためにCAT-GPsTで実行可能なことを
 あれやこれやと確認していたのだが、
 そんな夜はあっという間に
 日付が変わる時間も間近になっていた。

 大まかな復讐のシナリオと、
 副産物として出来上がったこの人形を使った
 ヤツへの復讐の構想はだいたいできあがった。

 あとはこれを実行していくだけなのだが、
 どういう順番でいつ実行するように
 CAT-GPsTに入力していくか?が、
 計画成功の大きなポイントとなると俺は考えていた。

 可能であれば今夜、最初のトリガーとなる指令を出す
 というところまではやってしまいたい。
 しかし、CAT-GPsTには1日に実行できる回数に制限がある。
 まずはあといくつ指示を実行できるのかCAT-GPsTに確認した。


「今日はあといくつ指示をすることができるのか?」


 すぐにこう表示された。


「CAT-GPsTは日本時間の午前3時に1日の使用回数リセットがかかります。
 本日はあと5回使用することが可能です。」


 なるほど、あと5回か。改めてもう一つ質問した。



「1回というのはこちらが入力した質問や指示が完了して1回となるのか?」



 少し間があいてこう表示された。



「はい。質問や指示が完了となるところで使用回数が1回消費されます」



 ふむ。では、その回数を増やすことはできるか聞いてみた。
 するとこう回答が表示された。



「CAT-GPsTの利用期間、利用回数、内容を分析し、
 日々使用回数は変化いたします。
 CAT-GPsTの負荷が大きい処理が続いた際には
 1日の使用回数が減少する場合がございます」



 おそらく、今日やったような物体を作り出すというよな内容は、
 負荷が大きいというものになるのだろう。

 だとすると、性別を変えるであったり、
 複数の人間の認識を変更するというのも
 やはり処理が大きいものになるのだろうと
 おぼろげながら考えていた。

 であるならば、復讐計画をいくつかに分割して、
 徐々に実行していくほうが
 CAT-GPsTへの負荷という意味でもよいのだろう。
 あまりに無理をして使用回数が減ってしまっては大変だからだ。

 一旦、CAT-GPsTの制限に関する内容を頭の中で整理しながら、
 今回のプランをどう分割していくか考えることにした。

 まず、最初の段階として考えていた、
 いまヤツが股をかけている女性達に、
 ヤツが股をかけているという事実を認識されること。
 これは今日中に仕込んでしまいたい。

 しかし、その上で各自の行動までセットアップしようとすると
 あまりに負荷が大きすぎるとなる。

 では、一旦女性達に認識を与えて、
 その後各自の行動にまかせみるというはどうだろうか?

 以後の状況についてはCAT-GPsTを使って把握した上で、
 こちらの意図に近い動きをした女性から
 ヤツへ別れを切り出させていくというのはどうだろうか?

 だんだんと具体的な手順にまとめていく。

 人間は憎しみというエネルギーが大きいほど、
 頭が冴えわたっていくのだなと我ながら感心するばかりだ。

 今日まずこれを実行するとして、その結果、今考えている
 地道なプロセスを積み重ねるとなると、
 第一段階だけで1週間ほどはかかるだろう。

 しかし、CAT-GPsTの制約から考えれば、
 これが現実的なところだ。

 様々な制約と実行する物事の重要さや優先順位を
 自分の中でなんとかまとめることができたように感じたので、
 ついにCAT-GPsTに最初の指令を出す。



「昨日調べてもらった早川幸雄と現在付き合っている
 女性をすべて特定することは可能か?」



 すぐにこう表示された。



「はい。可能です。」



 その回答を確認し、続けてこう入力した。



「では、その女性すべてに同じ認識をこちらから流し込むことは可能か?」



「はい。実行可能です」



 よし、ここまでは想定どおりだ。
 ここで、いよいよ具体的な指示を入力する。



「では、いますぐにヤツと付き合っているすべての女性に対して、
 ヤツが自分以外の何人もの女性と
 交際しているという事実を認識させてくれ」



 しばらくしてこう表示された。



「かしこまりました。
 ただし、対象人数が10人にもなるため、
 本日の残り使用回数すべてを使用しての
 実行となりますが問題ありませんか?」



 おい、10股もかけているとは正気か?
 逆にそんな状況をうまくさばいていることに感心すらするのだった。
 しかし、この第一段階は絶対に実行しなければならないものだ。
 意を決してこう入力した。



「わかった。今日の残り回数すべてを使って実行してくれ」



 またも少々間が空いてこう表示された。



「かしこまりました。
 では、このメッセージを表示した段階から、
 順次、ご希望された早川幸雄の交際女性全員に、
 彼が他に9名の女性と交際している事実を認識させます。
 なお、この認識が完了するのに
 10時間ほどお時間をいただきますがよろしいでしょうか?」



 やはりこれは相当負荷の大きな処理なのだなと思いつつ、
 そもそも時間をかけて第一段階を完了させると
 自分の中で決めていたので、すぐにこう入力した。



「かまわない。実行してくれ。実行終了予定時刻だけ教えてくれ」



 CAT-GPsTはこう返してきた。



「実行終了予定時刻は本日のお昼12時頃を予定しております。
 なお、本日の利用回数が上限に達しました。
 また明日のご利用をお待ちしております」



 そう表示されると画面には
 「See You」だけ表示されて、
 入力することができなくなった。


 その画面を見た瞬間、
 ふぅと大きな溜息を無意識についていた。
 なんとも言えない高揚感と緊張感に
 どっと疲れを感じていた。

 そして、今日はもう入力することができない
 CAT-GPsTを閉じ、PCの電源を切った。

 もう深夜3時前になっていたので、
 軽くシャワーを浴びてからベッドで横になった。

 こうして、いよいよ俺の復讐がはじまった。
 もう後戻りはできない。
 不思議と決意を固めよう気持ちが湧き上がってきた。

 と、同時にこのCAT-GPsTを手にした日から、
 常識は考えられない出来事を 次々と経験していることに、
 改めて高揚感を感じていた。


 俺にできないことはない。
 ついに俺の人生に光があたるときがきたんだ!
 そんな前向きに気持ちにあふれたまま眠りについた。



 こうして、CAT-GPsTを使った
 復讐プラン実行の最初の夜は終わった。
 短いような長い夜だった。
 後から思えば、この日が自分自身の人生の
 ターニングポイントだったように思える。


 その結果がどうなるかもその時は知る由もなかったが。
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