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CAT-GPsT
Story 1: main-side chapter-2 【Execution and Verification】
しおりを挟む明るい陽射しで目が覚めた。
いつ以来かの熟睡だった。
時に悪夢にうなされることも多かっただけに、
本当に気持ちのよい起床はいつ以来だろうか?
ベッドから起き上がり、うーんと背伸びをする。
ここ半年で感じたことのない今日という1日を、
心から楽しみにする朝を噛みしめるように。
とはいえ、昨夜、最後にCAT-GPsTでお願いをした内容が
本当に実行されるのか?
まずはそれを確認したいところだ。
いつものように顔を洗い、歯を磨く。
なんともウキウキするような気分が湧き上がってくる。
着替えを済ませて、朝食を食べる。
朝食を食べながら、CAT-GPsTはスマートフォンでもアクセスできるのだろうか?
と、ふと疑問に感じてて、スマートフォンのブラウザーからアクセスをしてみた。
昨日はなにもしなくても画面が表示されたが、
スマートフォンからアクセスをしたところ、
パスワードの設定をするように促された。
アクセスができればいいやとパスワードを設定した。
すると、昨日見た黒い背景に緑色の文字が表示される画面が現れた。
そして、こうメッセージが表示される。
「おはようございます。ゆっくり休めましたか?
本日8時半にタイマーがセットされておりますので、
お忘れなく。では、よい1日を。」
どうやらパソコンからのアクセス時と
同じ環境にスマートフォンからもアクセスできるようだ。
これで場所を選ばず利用することができると自然にニヤリとしてしまった。
朝食を食べ終わり、そそくさと家を出る。
毎日憂鬱だった電車通勤も今日は希望に満ちあふれている。
あの地獄のような日々からついにおさらばできるかもしれないからだ。
30分ほど電車に揺られて会社最寄りの駅に到着した。
少し浮かれるような足取りで会社に向かう。
そして、始業15分前に席についた。
いつもなら始業後にヤツから、
あれやこれやと仕事を押し付けられるのが日常となっていたが、
CAT-GPsTが本物であれば今日は違うはずだ。
そうであってくれ。
心からそう願っている自分がいた。
そしてついに始業時間となった。
いつも始業時間にはチャイムが鳴るのがうちの会社だ。
少し長いチャイムが鳴り終わるといつもなら、
ヤツ、早川幸雄が俺の席にやってくるはずだ。
いつもは絶対に見たくないヤツの顔を今日は見たくてしょうがない。
そんな気持ちを抑えて静かにPCのメールチェックを始めた。
そんな時、ついにその瞬間は訪れた。
早川幸雄がこちらに向かって歩いてくる。
そして、こう言った。
「おはよう。今日なんだけど予定の会議がなくなったから、
いつも手伝ってもらっている仕事の半分はこちらでやっておくことにするよ。
やってほしいことはこの後メールするよ。」
それだけ言って早川幸雄は自分の席に戻っていった。
おい、これは本物だぞ?
俺はあの早川幸雄をコントロールすることに成功したんだ!
しかもそれが当然であるかのように自然な形で。
俺は思わずにやけそうになるのをグッと堪える。
そして、この力があればなんでも思い通りじゃないか!と、
いままで感じたことのない、
何とも言えない高揚感に俺は包まれていた。
しかし、仕事中にスマートフォンをあまり触っていては、
周りからなにを言われるかわかったものではない。
一旦お昼休みに次どうするか考えることにして仕事に集中した。
気持ちに余裕があるからなのか、とにかく仕事がスムーズに片付いていく。
そして、あっという間にお昼休みの時間となった。
俺はお昼休みのチャイムが鳴るのを聞いた瞬間に席を立った、
そして、会社をでて一人になれる場所を探した。
近くに個室の漫画喫茶があった。
ランチメニューも表示されていたので、
ランチがてらその漫画喫茶に入ることにした。
受付を済ませ、個室に入る。
とにかく時間がもったいないので日替わりランチを注文して到着を待った。
ランチが到着するまで、今日成功した出来事を改めて思い返えしてみた。
昨日CAT-GPsTで俺がお願いしたとおり、
早川幸雄がいつも押し付けくる仕事の半分を
ヤツにやらせることに見事に成功した。
この調子であれば、おそらく全ての仕事を
押し付けこないようにすることも可能だろう。
しかし、こうやって自分の仕事量が減っただけでは
いままでの苦痛の日々の復讐はなにも達成できない。
どうやってヤツに復讐をしようか?
俺の頭の中はそのことでいっぱいになり始めていた。
そんなことを考えていると日替わりランチが到着した。
とにかく食べておかないと頭も回らない。
目の前に運ばれてきたものを順番に口に運ぶ。
そうしながらもヤツにどうやって復讐をしようかと様々な案を考えていた。
まず考えるのはヤツに俺が苦痛を味わっていたことを認識させたい。
しかし、実行するのは最後でいいだろう。
次に思いついたのはヤツに屈辱を味合わせたいということだ。
高学歴だのエリート部門にいただのと、
ヤツはとにかく俺を見下す態度ばかり取ってきた。
しかし、昨日CAT-GPsTで調べたところによれば、
成績はさほどよかったわけでもなく、
卒業もギリギリ。ウチの会社も先輩のコネ入社で、
縁故で経営企画に配属されたということも把握している。
こんなヤツに見下されていたのか!
という怒りは簡単には収まるものではない。
そんなことを考えていたときに、
ふと昨夜CAT-GPsTでヤツについて調べていたときに気になった項目があった。
それはヤツがそれなりに端正なルックスであることをいいことに、
多くの女性に手を出しては遊び歩いているということだ。
こちとら彼女はおろか、普通に会話をできる相手すらいないというのに。
ん?まてよ。
じゃあ、ヤツを女に変えてしまって、
自分がされたことを経験させてやればどうなる?
俺の中のなにか黒いものが膨れ上がっていくのを感じた。
そんなことを考えていたらまもなくお昼休みの時間が終わろうとしていた。
そそくさと部屋をでて会計を済ませた。
そして会社に戻り、自分の席についた。
しかし、なんだかソワソワしてしまう。
もう一刻も早く家に帰って、ヤツへの復讐の準備をしたい!
気持ちだけが先走りそうになるのをぐっとこらえて、
とにかく今日やるべき仕事をしっかりとこなした。
そうしていると夕方になった。
まもなく終業時間になる。
今日は本当に溢れるほどの仕事を押し付けられることなく終わろうとしている。
そして終業時間のチャイムが鳴った。
もちろん今日やるべき仕事はキッチリと終わっている。
そそくさと机を片づけて席を立った。
いつ以来かの定時退社だ。
周りの同僚にあれ?早いね?なんて言われながら、
軽く挨拶をしながら会社を出る。
明るい時間に帰れるとはいつ以来なんだ?
と不思議な感覚に陥りながらも、
すぐに電車にのり帰路についた。
家に戻ると手洗いとうがいをする。
もう日課になっていることだ。
そして、冷蔵庫にあった冷凍食品で腹を満たす。
とにかく早くCAT-GPsTを使いたい一心で。
こうしてCAT-GPsTがもたらしてくれた新しい職場の1日が終わった。
今夜からついに俺は復讐に手を染めていくことになる。
この時、もう後戻りできないことになるとは思いもせずに。
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