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CAT-GPsT
Story 1: main-side chapter-1【Gathering Information and Taking Action】
しおりを挟む目の前で缶ビールが出現するという
にわかに信じがたい出来事を目の当たりにして、
俺はこのCAT-GPsTが本物であると確信していた。
これを使って一体なにをしようか?
少しそんなことを考えはじめていると、
画面にこう表示された。
「なにか悩み事があるのですか?なんでもお調べします。」
そうか、CAT-GPsTがどれぐらいの情報を検索できるのか?
ちょっと試してみよう。ふとそう考えた。
俺にはちょうど色々と知りたい人物がいたからだ。
そう、あの男だ。
俺の地味ながらも平和だった毎日を破壊したあの男のことだ。
早速俺は画面にこう入力した。
「上司である早川幸雄の年齢を教えてくれ」
するとすぐにこう表示された。
「早川幸雄ですね。それはあなたの会社の人間でよろしいですか?」
なんだと?!
まだ名前しか入力していないのに、
この名前の人物が俺の会社の人間であるかと質問してきたのだ。
もちろん「そうだ」と答えた。
「わかりました。早川幸雄の年齢は33歳です」
ピッタリだ。やはりCAT-GPsTはただの生成AIではない。
そうとわかればここからが本番だ。
「早川幸雄が異動になった理由が知りたい」
そう、他部門でリーダーシップをというのは
上位上司の説明であったのだがどうにも腑に落ちない。
他部門の同期に確認してもそんな話は聞いたことがない言うからだ。
するとすぐにこう画面に表示された。
「早川幸雄は●●社経営企画部にてセクハラとパワハラを繰り返し行ったことで、
役員命令で他部門へ異動となりました。
この際に本人は心を入れ替えて頑張ると役員に反省を述べており、
他部門でしっかりと成果を残せば経営企画部に戻れると話をされています。」
なんだって!?
全然話が違うじゃないか?
でも上位上司はそんなことを知らないとでもいう顔で対応していたのだが。
よしこれも聞いてみよう。
「ありがとう。では、早川幸雄のいまの上司はこのことを知っているのか?」
すぐさま答えが表示された。
「はい。早川幸雄の上司はすべてを知っています。
ですが、半年間は知らないふりをするように役員から言われているため、
様子を見ている状況です。」
なるほど。そういうことか。
そう聞いてみれば色々な出来事に納得がいくというものだ。
先日上位上司から呼び出しをされたとき、
俺に何度もなにか無理難題を言われてないか?と聞かれたからだ。
もちろん本人がいる前で本当のことを答えるはずはないのだが。
それも様子をみながら状況を確認していたのだろう。
しかし、こんなことをサラサラと回答してくる
CAT-GPsTの凄さを感じつつも恐ろさも同時に感じていた。
CAT-GPsTはどんなことも調べることができる。
もしこのプラットフォームを多くの人間が使っていたとしたら?
そんな不安に駆られた俺は次にこう入力した。
「ありがとう。よくわかった。ちなみにCAT-GPsTは何人ぐらいが利用しているんだ?」
いつもはすぐに回答が表示されるのに、今回は少し間があいてこう表示された。
「CAT-GPsTのベータテスターの人数は非公開ですが、
あなたを含めて世界中で50人以下であることはお伝えいたします。」
たったの50人。下手をしたら日本で使っているのは俺だけという可能性すらある。
そう聞くと何とも言えない高揚感を感じた。
ようやく俺に運が回ってきたとでも言わんばかりに。
その後、CAT-GPsTに早川の家族構成や彼女の有無、
趣味や苦手なことからかなりディープな内容まで質問して、
かなりの量の情報を得ることができた。
さて、これを使ってどうしてやろうか?
と考えはじめたところで画面にこう表示された。
「本日の使用回数は残り2回となりました。ベータテスト中は1日の使用回数に制限があります。」
まぁ、無料なのだからしょうがないよなと
納得するしかなかったが、あと2つの質問か。
さて、どうしようかと考えていたところで
ふと一つ疑問が湧いたのでそれを入力した。
「CAT-GPsTは検索以外にできることをもう一回教えてほしい」
するとこう表示された。
「CAT-GPsTは世界中の情報を検索したり、物体を生成したり、
また物体を変化させることができます。例えば他人の趣味を変更するということも可能です。」
おい、最後にすごい一言が表示されたぞ。
他人の趣味を変更することができるだと!?
つまり、形を変えることも他人の考えを変えることもできるということになる。
もう俺の口元が緩みっぱなしなのは鏡を見るまでもなかった。
「本日最後の1回となります。」
画面にそう表示された。
どうやらヘルプ的な質問でも1回消費してしまうようだ。
そこで本日最後にこう入力した。
「明日、早川幸雄がいつも俺に押し付ける仕事の半分をやると言い出し、
実際に仕事をさせることはできるか?」
画面にはすぐにこう表示された。
「はい。可能です。では、明日の何時から仕事をさせればよろしいでしょうか?」
俺はすぐに始業時間を入力した。
「わかりました。では、タイマーをセットしました。
本日の利用回数が上限に達しました。また明日のご利用をお待ちしております。」
画面にそう表示されると続いて「See you」と表示されて入力ボックス消えた。
気が付けばもう3時になっていたが、人生初ともいえる高揚感を感じていた。
明日の朝が楽しみでしょうがないからだ。
そして、そのまま俺はいつになく気持ちよく眠りに落ちた。
こうしてCAT-GPsTとの最初の日は終わった。
ここから自分の人生そのものがまるで違うものになるとは、
この時はもちろん知る由もなかった。
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