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神崎未緒里

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SOUZOUドロップ

被験生活 18日目

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真っ白な部屋にいた。
気がつくと自分自身も真っ白な光に包まれている。
ただ気持ちがいい。
ふんわりとしたなにかに包まれているようだ。
そして光が収まるとゆっくりと肌色が見えてくる。
とても美しい女性だ。



そこで目が覚めた。
朝日がカーテンから漏れてきている。
新しい家での初めての朝だった。
特に身体に異変はない。
ベッドの上で上半身を起こしてうーんと手を伸ばしてみた。
口から漏れた声が完全に女性の声だった。



そういえば前の声はどういう声だったか思い出せない。
もっと言えば以前の顔はどんな顔だったのかも思い出せない。
だんだんといまの自分に最適化されていっているのかもしれない。
自分が自分でなくなるようで少し怖さを感じた。

朝からそんな不安まじりではあったが、
ベッドから起き上がりまずは洗面所に向かった。



歯を磨き、洗顔フォームで顔を洗った。
自分では用意した覚えがないものまで完備されている。
一体どういう組織がバックにいるのだろうかと少し疑問を抱いたが、
それを考えても仕方がないというものだ。

顔を洗い終わって、キッチンで朝食を作った。
昨日最後にこの部屋のことを脳に記録しておくと言われたのが、
なんとなくではあるが体感できる。
どこになにがあるか直感でわかる。
また、いまの自分の特徴や癖なども徐々に自覚が生まれてきてた。

珈琲とパンとサラダを用意してゆったりと朝食を食べた。



なんだかクラシックが聞きたくなってインターネットラジオを再生した。
とても心地がよかった。

そう言えば昨日渡された書類があったことを思い出した。
これから生きていくにあたっての名前や特徴などについてだ。

早速見てみると名前はすでに自覚できるものだった。
逆に以前の名前がなんともでてこない。
これは昨日上書きされたと考えるべきだろう。
もしかするとこうやってだんだん以前のことを忘れていくのだろうか?
と寂しさ半分と諦め半分の感情が湧き上がった。

その他には家族のことは特に情報がなかった。
学歴などは記録されており、医学部を卒業した女性のようだ。
随分と高学歴なんだなぁと自分のことになるのに妙に関心した。



一通り読んでみると全てすでに知っていることのように感じた。
本当にどんな技術でこれが実現しているのか不思議でしょうがない。

そんな細かいことを気にしてもどうしようもないことは、
この被験生活で嫌というほど思い知らされているので、
とにかく着替えて化粧をすることにした。

部屋着から着替えるためにウォークインクローゼットに向かった。
扉を開けてみると様々な服があった。
少し考えたのだが、白のブラウスに黒のスカートをチョイスした。



そのまま化粧をはじめた。
ほぼ無意識に化粧が完成した。
髪の毛のセットも苦もなく終わった。



こうして朝の時間は過ぎていったのだが、
特にこれと言って予定があるわけでもない。
とりあえずパソコンを開いて興味の向くままにWebを眺めてみることにした。

しばらくそうしているとスマホの通知ランプが光っていた。
メールが届いていた。



開けてみると昨日の病院からだった。
そこにはいまの自分の身体のサイズや体重、
血液型やアレルギーなどの注意点が書いてあった。
なお現時点で身長は168cm、胸は90のHカップだそうだ。
どうりでここにあるブラジャーがどれもキツいはずだ。
ウエストやお尻のサイズも記載されていたので、
早速通販で身体のサイズにあった下着を複数注文した。

そんなことをしているとお昼になった。
なにか食べようかと冷蔵庫を探してみてると、
冷凍パスタを見つけたのでそれをレンジで温めて食べた。



食べ終わるとなんだか眠気が襲ってきた。
予定も特になかったのでそのまま少し寝ることにした。

ベッドで横になるとすぐに寝てしまった。



少し夢を見た。
先に見た夢の続きのようで、
大学を卒業して就職活動をして楽しく過ごしている夢だった。

そして次に気がついたときには夕方になっていた。
随分と眠ってしまったようだ。

起き上がったときに少し目眩がした。
目の内側に先程見た夢のような景色が流れていくように見えた。
そこにいたのは今の自分そのものだった。

目眩が収まると妙に頭がスッキリした。

痛い思いはもう懲り懲りだ。
今日は夕食をたまには外で食べようと部屋を出た。



昨日よりも歩いているだけで感じる視線が多い。
それを延々と感じるだけでなんだか気分が悪くなってきたので、
急遽コンビニでお弁当を買って家に帰ることにした。

家に帰る途中、気持ち悪さがだんだんと火照りに変わってきた。
身体中がムズムズとする。
早足で家に向かってエレベーターに乗った。
いまの家が高層マンションの高層階なので、
いちいちエレベーターに乗る必要があるのだ。



やっとの思いで家にたどり着いた。
お弁当をキッチンに置いたところで火照りに我慢しきれずに、
そのままへたり込んでしまった。



どうしてしまったのかと考えていると、
まるで夜、ドロップを舐めた後にAVを見ているときのような、
身体の奥底から湧き上がる快楽が襲ってきた。

突然の気持ちよさの感覚に頭が真っ白になっていく。
無意識に胸と股間を自分で触っていた。
女性はこんなに気持ちいいんだと改めて感じていたのだが、
そもそも男性はどんな気持ちよさを感じていたのか?
が思い出せなくなっていた。

そんな思考をする余裕も打ち消すかのように
快楽が大波のように襲ってくる。
そのまま快楽に身を任せて身体を触っていると目の前が光に包まされた。

なんともとても気持ちがいい。
なにもしたくない。
そんな感情に包まれた。

しばらくそのままの状態であったのだが、
ふと我にかえった。
自分の身体を見てみると服ははだけて、
股間は大洪水でビショビショになっていた。

これはある意味の発作かもしれないなと感じたが、
気持ち悪さもあるので先にシャワーを浴びることにした。



服を脱いでシャワーを浴びると身体のあちこちがまだ敏感だ。
お湯があたるだけでじんわりと気持ちよくなる。
しかし、埒が明かないのでなんとか我慢してシャワーを終わらせた。

髪の毛を乾かしてゆったりとした部屋着に着替えた。
そして、買ってきたお弁当をやっと食べることができた。

なんとか気持ちも落ち着きを取り戻せたので、
食べ終わったお弁当の容器をゴミ箱に捨てて、
リビングで少しゆったりすることにした。

よく見ると部屋の片隅にタブレットが用意してあったので、
それでWebをのんびりと見ることにした。
目につくのが女性向けのサイトばかりだった。
そしてそれにいちいち気が付かなくなってきた。
もうそれが当たり前だと感じるようになったぐらいだ。

しばらくそうしているといい時間になった。
今日もそろそろドロップを舐める時間だなと、
ドロップとAVを用意した。



ドロップを口に含んでいつものように液体を飲み込んだ。
そしてAVを再生した。



再生するとやはりもう女優が映っているというより、
自分が映っている感覚で恥ずかしさを覚えるようになった。
同時にムラムラと快楽が湧き上がってくるのも感じた。

お昼のこともあるので抗うことなく、服を全て脱いで全裸になった。
そして、感情の赴くままにAVと同じようなポーズになっていた。



映像の刺激がダイレクトに脳に快楽を生む。
自分の思考というよりただ流れ込む快楽に身を任せせるというのが正確かもしれない。

映像の中で女優がイクと自分もイク。
そのたびに真っ白な世界に導かれる。

ただただそれを繰り返していた。

気がつくと1時間経っていた。
なんとか我に返ったので、AVを停止した。

AVを止めて少し気持ちが落ち着いてきたところで、
あの強烈な眠気が襲ってきた。

急いで下着と部屋着を着てベッドに向かった。
そのまま倒れ込むようにベッドに横になると、
すぐに深い眠りに入っていった。



こうして被験生活18日が終了した。

快楽に襲われるごとになにかを忘れていくような一日だった。
なお、これを記録している間も過去の自分のことがあまり思い出せなくなってきている。
もう、以前の自分はそこにはいないような感覚だった。

なお、どういう結末になるのか?はもう少しだけお付き合いいただきたい。
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