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SOUZOUドロップ
被験生活 17日目
しおりを挟む夢を見た。
赤ん坊の頃から成長していく自分の記憶のような。
しかし、それは女の子が生まれて育っていく夢だった。
実に可愛らしい女の子が小学生、中学生、高校生と成長していく。
まるで人生をやり直しているかのような夢だった。。。
朝の強い日差しで目が覚めた。
先程まで見ていた夢が妙にリアルだった。
思わず自分の身体を触ってみる。
紛れもない女性の身体だ。
柔らかい胸、ツルツルの肌。
今日はなんだか自分は元々この身体であったかのような
感覚を感じはじめていることに気がついた。
そして、今日ははじめての検診だ。
歯を磨き、顔を洗った。
洗顔フォームを使って念入りに洗うことも苦でなくなった。
トイレに入って癖で立ったまま用をたそうとしてしまったので
急いで便座に座った。
急な変化で慣れていないところはまだまだある。
もう身体の痛みやだるさもないのでまずは朝食を作った。
と言っても、パンと珈琲、サラダという簡単なものだ。
テーブルにそれらを並べてテレビを見ながら食べた。
食べ終わるとまず着替えることにした。
昨日買った服から気分でチョイスをした。
白のブラウスにジーンズというシンプルなコーディネート。
下着もシンプルにブラウンのものにした。
下着をつけるのに苦労するかと思っていたが、
以前からそうしていかのようにつけることができた。
そのまま服も着て化粧をすることにした。
人生で化粧などしたことがないはずなのだが、
どうすればいいのか自然と頭に浮かんでくる。
それにただ従って手を動かしていると、
もともと作りは悪くない顔が一段と華やかになった。
すっかり長くなった髪もドライヤーでブローした。
少し邪魔に感じたのでポニーテールに縛った。
そんなことをしているとそろそろ出発の時間になった。
必要なものを新しく買ったバッグに入れた。
財布やスマホも持って家を出た。
駅までただ歩いているだけなのに妙に視線が気になる。
先日も感じたが今日は一段とそれを感じる。
本当に女性って大変だなと改めて痛感した。
駅について電車に乗っても状況は同じだった。
なにか気持ち悪さすら感じる。
以前の自分では想像もつかない状況だ。
しばらくそれに耐えて目的の駅についた。
駅前でタクシーに乗って病院に向かった。
正面玄関で下ろしてもらって指定された裏口の受付に向かった。
インターフォンを鳴らすと職員がでてきた。
先日言われたように内容を告げると中に案内された。
なにやらすごい装置が沢山ある普通の病院とは違った雰囲気だった。
待合室で待つように言われて、
しばらく座って待っていると名前を呼ばれた。
そのまま指定された診察室に入った。
検針票と持ってきたDVDをまずは医師に渡した。
その後、毎日記録したメモを元にその時々の状況を細かく聞かれた。
一つ一つ丁寧に回答していった。
一通り終わると検査票を渡された。
順路通りに様々な検査をするようだ。
見たこともない機械でいくつもの検査をされた。
もちろん血液や唾液なども採取された。
気がつくとお昼だった。
まだ全行程の半分ぐらいが終わっただけだった。
係の人から昼食が用意してあるのでと食堂に案内された。
指定された席に座っていると、
なにやらいくつかの料理が運ばれてきた。
どうやらランチコースのようだ。
前菜からデザートまでゆったりと楽しんだ。
食べ終わるとすぐに続きの検査がはじまった。
そのまま夕方になるまで検査は続いた。
すっかりヘトヘトになった頃にすべての検査が終了した。
最後に再び診察室に案内された。
そこには先程の医師の他に数人のスーツ姿の男性が立っていた。
この被験生活でいろんなことが起こりすぎていて、
そうそうの状況にはうろたえなくなった。
とりあえず指定された椅子に座った。
医師からは詳細な検査結果は後日になるが、
健康面では今のところはなにも問題ないことを最初に告げられた。
そして、ここから今回の被験生活の真相を聞かされることになった。
医師が話終わると後ろにいたスーツ姿の男性が医師の席に座った。
そして、今回使われているあのドロップについて説明がはじまった。
どうやらあのドロップは摂取すると、
目で見たものから脳が想像した情報を、
人体の遺伝子に書き込むという画期的な新薬とのことだった。
なにやら難しい話だったので、
具体的になぜ自分が女性の身体になったのかを質問した。
今回、AVの女優を見続けたことでその女優の外見や自然と思い浮かべたその女優の
特徴などが毎日遺伝子に上書きされていった結果、いまの姿になったとのことだ。
つまり、自分が想像するあの女優そのものに自分自身が作り変わっていったことになる。
なぜこんな薬が必要なのか?と突っ込んだ質問もしてみた。
少し答えづらそうではあったがこう答えてくれた。
外見に著しい欠陥を感じたり、
自分の性に疑問を感じる人を救済するべく開発が始まったそうだ。
また、犯罪者の更生プログラムにおいても、
別人になることでプログラムを進めやすくなるという側面もあるのことだった。
なお、ここは言葉を濁されたのだが、
どうやら国家レベルの相当上位からのリクエストで開発された新薬であるが、
遺伝子を急激に変化させるというかなり危険性の高いものであるため、
超極秘理にプロジェクトが進められているとのことだった。
その中で危険性という言葉にひっかかった。
そこを質問してみると、なんと言っても遺伝子情報を書き換えるという、
本来ありえないものなので拒絶反応で亡くなった人も過去にはいたようだ。
また、指示どおりに1人の対象を見続けることをしなかったために、
予想しない変化を起こしてしまった人もいるとのことだった。
実はあなたが初の成功事例なのですと言われたときに背筋がゾっとした。
更にこの薬で遺伝子が変化した人がどのぐらい生きられるかも、
まだまったくわかっていないということだった。
結局、ものすごく運がいいということだったのだなと。
なんだか安心するような、これからどうなるのか?
という不安がよぎるような複雑な心境だった。
ここまで色々と話を聞かされたところで改めて書類を渡された。
そこにはこんなことが書かれていた。
まず、今日聞いたことは絶対に口外してはならない。
場合によっては命を落とす危険があることが明記されていた。
また、すでに以前の自分は死んだことになっていること。
新しく女性として他人の戸籍が用意されているので、
それを使って今後生活してほしいという。
なお、すでに今住んでいた家から用意されたマンションに
荷物は移動されているとのことだった。
加えて今後はこのプロジェクトの管理下に入るため、
毎月決められた額の報酬は死ぬまで振り込まれるらしい。
ただし、月1回今回のような検査を必ず受けることと、
事務局から依頼された仕事は必ず受けることが義務ということだった。
そして、これらについて拒否権がないという。
まぁ、実は最初にサインした契約書にはこの記載があったのだが。
当時はそこまで深く考えずにサインしたのだがこうなってはしょうがない。
一通り説明が終わり、新しい名前や住む場所などの書類が渡された。
そして、今日から新しいドロップを使うよう指示された。
以前のものはすでに回収されていると伝えられた。
使用方法は添付の紙を見るように言われた。
こうして全ての説明が終わった。
ところどころあやふやな情報ではあったが、
大枠この被験生活について知ることができた。
そして、これからどうなっていくのかという漠然な不安はあったが、
こうなったら流れに任せるしかない。
最後にある部屋に通された。
頭にヘルメットのようなものをかぶらされると目をつぶるように言われた。
なにか暖かい風がでてきたかと思うとすぐに眠ってしまった。
次に気がついたときには知らない部屋にいた。
どうやらここが新しい家というわけだ。
とても広い部屋だった。
最新設備のマンションというかんじで、
いままで住んでいた普通のアパートとは比べ物にならなかった。
とりあえず一通り部屋を確認してみるのだが、
不思議なことに時間が経つごとに以前からここに住んでいたかのような
感覚に襲われた。
そして、テーブルの上になにやら書類と瓶に入ったドロップを見つけた。
早速書類を見てみると、さきほど眠ってしまったときにこの部屋の情報や、
自分がこれから名乗る人間の情報が脳に書き込まれているとのことだった。
本当に世の中の技術というのはどこまで進歩しているのか不安すら覚えた。
また、ここからが本題なのだが、
新しいドロップは以前と同じように寝る前に使うことが書いてあった。
ドロップが液体になって飲み込んだ後は、
以前から見ているAVを同じように10分間見るようにと。
よく見るとDVDが書類の下に置いてあった。
その他は服や食料が用意されていることなどが書いてあった。
もう言われたようにやるしかないとはいえ、
お腹がすいたので冷蔵庫の食材を見繕って夕食を作った。
冷凍のハンバーグがあったのでそれを湯煎して食べた。
一日検査で疲れたので早めにお風呂に入ることにした。
以前とは比べものにならないほど大きなお風呂でゆったりとすることができた。
身体を洗っているときに昨日よりも更に身体のメリハリがついたようにも感じた。
お風呂からあがって髪の毛を乾かした。
ようやくこれにも慣れてきた。
そうしているといい時間になったので、
早めにドロップを舐めてしまって休もうとリビングでDVDをセットして
新しいドロップを口に含んだ。
色や形は以前とまるで同じだし味も変わらなかった。
あっという間に液体になってゴクリと飲み込んだ。
その後、AVを再生した。
先日までのように女優と一体化する感覚というより、
もうその女優は自分自身でしなかいという、
なんとも不思議な感覚に襲われた。
もちろん、女優が感じると身体の奥底から快楽がどんどん湧き上がってくる。
自然と服を脱いで女優とまるで同じような体勢になっている自分がいた。
また、映像でされることすべてが気持ちいい、
という感覚となって身体中を突き抜けた。
そのまま何度も何度もイった。
イクたびに何度も頭が真っ白になった。
30分ぐらいすぎたぐらいであの急激な眠気がまた襲ってきた。
AVを止めてなんとか服を着て、フラフラになりながら寝室へと歩いていった。
そのまま倒れ込むようにベッドに横になり深い眠りについた。
こうして17日目は終わった。
この被験生活の真相の一部を知ることができたのだが、
これから自分はどうなっていくのか?
いつまで生きられるのか?
とにかく不安になったもまた事実だった。
なお、このときですらこのあと起こっていく出来事はまるで想像できていなかった。
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