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死んだ人
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バイトをクビになった。
正確にはクビになったというより、辞めるか、肩まで伸びた髪を切るか、というくだらない天秤にいつまでも掛けられる状況が嫌だった。
それで辞める、と言った。
その塾のバイトでは髪を伸ばしていてもそれまで何も言われなかったのに突然言い出したものだから、これは目障りだから辞めろということなのだろうと変に腑に落ちていた。
長い髪はくくって纏めて、侍みたいにしていて、歴史好きな自分としてはお気に入りだったがそれも切った。
そうすると私は5年間構築してきた人間の集まりを自ら進んで失った。
無論未だに交流がある友人もいるが、親しくしてくれた人たちと別れたのはちょっと寂しかった。
しかし、伸び伸びとしている自分もいる。
もう、あの仮面を被って、無理に人に合わせる作業をしなくて良くなったからだ。
私は根が暗い人間だが、人前では上手に戯けて、警戒心を解くことができる。
これは初対面の人間と、今後も仲良くしていくには必要なスキルだ。
男三兄弟の末っ子とはここまで器用になれるのだ。
逆に、あの仮面を使わない、私の中の違う私が一生現れることがない。
そう思うと、今度は切なくなってくる。
だから私は喫茶店でコーヒーとタバコを楽しみながら、死者の冥福を祈った。
正確にはクビになったというより、辞めるか、肩まで伸びた髪を切るか、というくだらない天秤にいつまでも掛けられる状況が嫌だった。
それで辞める、と言った。
その塾のバイトでは髪を伸ばしていてもそれまで何も言われなかったのに突然言い出したものだから、これは目障りだから辞めろということなのだろうと変に腑に落ちていた。
長い髪はくくって纏めて、侍みたいにしていて、歴史好きな自分としてはお気に入りだったがそれも切った。
そうすると私は5年間構築してきた人間の集まりを自ら進んで失った。
無論未だに交流がある友人もいるが、親しくしてくれた人たちと別れたのはちょっと寂しかった。
しかし、伸び伸びとしている自分もいる。
もう、あの仮面を被って、無理に人に合わせる作業をしなくて良くなったからだ。
私は根が暗い人間だが、人前では上手に戯けて、警戒心を解くことができる。
これは初対面の人間と、今後も仲良くしていくには必要なスキルだ。
男三兄弟の末っ子とはここまで器用になれるのだ。
逆に、あの仮面を使わない、私の中の違う私が一生現れることがない。
そう思うと、今度は切なくなってくる。
だから私は喫茶店でコーヒーとタバコを楽しみながら、死者の冥福を祈った。
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