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Ⅵ 玲央の心<SIDE:玲央(猫)>
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おかしい。最近、やたらに牛、虎、鼠が玲央に引っ付いてくる。ジュース買うだけなのに、それだけでも必ず傍に誰かいる。
バイトの仕事をすぐに覚えた三人は、働くことで理解しあったようだ。結構楽しくバイトに励んでいる。忌み嫌う関係から距離は縮んでいるのが分かる。
それだけで玲央は猫としての役割を果たしたように思う。こいつらは長く生きているからこそ単純な事が分からないんだろう、と考える。ただ、彼らを見ていると苦しくもなる。
玲央はもう神獣じゃない。猫じゃない。そう言い聞かせても時々感情が抑えられず家で一人泣くことがある。こんな姿は牛や虎や鼠には見せられない。ひょうひょうとしていなくては。抱えきれない思いをどうしていいか分からない。
猫の最期は心が狂ってしまっていたように、このまま玲央も壊れていくのかもしれない。途方もない記憶の量に飲み込まれそうで怖い。
ふと何度か死んだことを思い出し、玲央としての人生を放棄したら全てリセットして生き直すことが出来るのに、と考えることがある。
これまで死は全ての終りだと感じていたのが、魂が次の生に繋がると理解した今は死も悪くないと感じている。猫の苦しみや長い記憶から解放されたいと玲央の心が悲鳴を上げている。
大学校舎八階大教室の窓から下を見れば(ここから落ちれば死ぬかな)とか、道路の車の流れを見て(この流れに飛び込んだらどうだろう)と考える。そんなことを思いぼんやりすることが増えている。
(自分はいつまで耐えられるのだろう?)
そんな不安が過ると胸に手を当てて深呼吸する。そうすると優しい鈴の音が聞こえる気がする。神様にもらった金の鈴を思い出すと不安な気持ちが少し和らぐ。その繰り返しの毎日。
疲れたなぁ、そんな思いが玲央を侵食してきていた。
ちょっと一人になりたかった。ここのところ牛、虎、鼠が常に一緒だから。講義を休んで三人に内緒で大学を抜け出る。いつの間にか風が冷たい時期になっている。
「さむっ」
小さく声にして歩いていると、天界から下界に一人降りて来た時のことを思い出す。
いや、違う。あれは神獣の頃の記憶であって玲央の人生には関係ない。振り回されるな、そう自分に言い聞かせる。ため息をついて歩道橋を下るときだった。
「危ない! レオ!」
足元がガクッとしたのと遠くから聞こえる鼠の声。しまった。階段、踏み外した! 手すりを掴もうとしても届かない。落ちていく視界に、こちらに手を伸ばして走ってくる鼠が映る。
「ねこぉ! 嫌だ! ダメだぁぁ!!」
悲鳴のような声。
(おい、鼠屋。だから、俺はレオだって言っているだろ? いつまでも猫を追いかけるなよ)
呑気にそんなことを考える。
(あぁ、楽になれる)
ゆっくりと視界に入る空の青。空が高いなぁ。天界はもっと高いか。
少し笑って、玲央は身体に走る痛みと衝撃を受け入れた。悲鳴が漏れたのは仕方ない。だって人間だからな。意識を失う前に、駆け付けた鼠屋に抱き上げられたように感じた。懐かしい感じだ。なぜかそう思った。
バイトの仕事をすぐに覚えた三人は、働くことで理解しあったようだ。結構楽しくバイトに励んでいる。忌み嫌う関係から距離は縮んでいるのが分かる。
それだけで玲央は猫としての役割を果たしたように思う。こいつらは長く生きているからこそ単純な事が分からないんだろう、と考える。ただ、彼らを見ていると苦しくもなる。
玲央はもう神獣じゃない。猫じゃない。そう言い聞かせても時々感情が抑えられず家で一人泣くことがある。こんな姿は牛や虎や鼠には見せられない。ひょうひょうとしていなくては。抱えきれない思いをどうしていいか分からない。
猫の最期は心が狂ってしまっていたように、このまま玲央も壊れていくのかもしれない。途方もない記憶の量に飲み込まれそうで怖い。
ふと何度か死んだことを思い出し、玲央としての人生を放棄したら全てリセットして生き直すことが出来るのに、と考えることがある。
これまで死は全ての終りだと感じていたのが、魂が次の生に繋がると理解した今は死も悪くないと感じている。猫の苦しみや長い記憶から解放されたいと玲央の心が悲鳴を上げている。
大学校舎八階大教室の窓から下を見れば(ここから落ちれば死ぬかな)とか、道路の車の流れを見て(この流れに飛び込んだらどうだろう)と考える。そんなことを思いぼんやりすることが増えている。
(自分はいつまで耐えられるのだろう?)
そんな不安が過ると胸に手を当てて深呼吸する。そうすると優しい鈴の音が聞こえる気がする。神様にもらった金の鈴を思い出すと不安な気持ちが少し和らぐ。その繰り返しの毎日。
疲れたなぁ、そんな思いが玲央を侵食してきていた。
ちょっと一人になりたかった。ここのところ牛、虎、鼠が常に一緒だから。講義を休んで三人に内緒で大学を抜け出る。いつの間にか風が冷たい時期になっている。
「さむっ」
小さく声にして歩いていると、天界から下界に一人降りて来た時のことを思い出す。
いや、違う。あれは神獣の頃の記憶であって玲央の人生には関係ない。振り回されるな、そう自分に言い聞かせる。ため息をついて歩道橋を下るときだった。
「危ない! レオ!」
足元がガクッとしたのと遠くから聞こえる鼠の声。しまった。階段、踏み外した! 手すりを掴もうとしても届かない。落ちていく視界に、こちらに手を伸ばして走ってくる鼠が映る。
「ねこぉ! 嫌だ! ダメだぁぁ!!」
悲鳴のような声。
(おい、鼠屋。だから、俺はレオだって言っているだろ? いつまでも猫を追いかけるなよ)
呑気にそんなことを考える。
(あぁ、楽になれる)
ゆっくりと視界に入る空の青。空が高いなぁ。天界はもっと高いか。
少し笑って、玲央は身体に走る痛みと衝撃を受け入れた。悲鳴が漏れたのは仕方ない。だって人間だからな。意識を失う前に、駆け付けた鼠屋に抱き上げられたように感じた。懐かしい感じだ。なぜかそう思った。
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