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Ⅶ それぞれの道
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『プルルル』
急に鳴る携帯電話。驚いてすぐに携帯を確認する。携帯画面には蓮の名前が表示されている。出ていいものか携帯電話を眺めて悩む。
「電話でしょ? 出ていいよ」
運転中の田村さんが促してくれるけれど、迷ううちに電話が切れる。
「大丈夫です。切れちゃいました」
そう言っているうちに再度電話が鳴る。何だろう?
「出たほうが良いんじゃない?」
もう一度田村さんから促されて覚悟を決める。スマホ画面の通話をタッチする。
「も、もしもし、ルカです」
少し声が緊張してしまった。
『ルカ、俺だ。変わりはないか? 体調は悪くなっていないか?』
開口一番にルカの様子を心配して聞くあたりが蓮だよな。フフっと笑える。
「変わりないよ。蓮は、どう?」
『ルカが元気なら良かった。俺の心配までありがとう』
穏やかな蓮だ。声音だけで心が高揚する。久しぶりに聞く声に蓮の良い匂いを思い出して目を閉じる。
「それで? どうしたの?」
『あぁ、忙しいところすまない。今日、会見をする。お前とのことを正直に言いたいところだが、親の会社のこともあり全て正直に話すわけにはいかない。ルカに悪いようにはしないから、大丈夫だ。それを伝えておきたくて』
言われている内容に驚くばかりで閉じていた目をはっと見開く。
「は? 会見? なんで?」
『ルカに言われて自分をもう一度見つめ直した。今の俺はルカの前に立てるような男じゃないと分かった。ここ数日ゆっくり考えた。俺は困難から逃げてばかりの男だ。ルカの凛とした強さに気づきをもらった。このままの俺では恥ずかしくてルカの番だなどと言えない。俺は、もう一度這い上がるから。俳優として成功する。だから、ルカ。待っていて欲しい。アカデミー賞でもオスカー賞でも納得のいく結果を手にしてルカを迎えに行きたい』
携帯電話から聞こえる蓮の言葉。その強い声音に涙が止まらない。溢れる心が止められない。
「……うん、うん」
泣き声が聞こえてしまう。胸がいっぱいで抑えることが出来ない。
『ルカ、愛している。ルカは俺の運命だ』
蓮の言葉にただ頷いて泣いた。
「待って、いる、から」
必死でそれだけを伝えた。それ以外の言葉が浮かばなかった。
携帯電話から鳴る通話終了音を聞きながら車内で声を出して泣いた。
急に鳴る携帯電話。驚いてすぐに携帯を確認する。携帯画面には蓮の名前が表示されている。出ていいものか携帯電話を眺めて悩む。
「電話でしょ? 出ていいよ」
運転中の田村さんが促してくれるけれど、迷ううちに電話が切れる。
「大丈夫です。切れちゃいました」
そう言っているうちに再度電話が鳴る。何だろう?
「出たほうが良いんじゃない?」
もう一度田村さんから促されて覚悟を決める。スマホ画面の通話をタッチする。
「も、もしもし、ルカです」
少し声が緊張してしまった。
『ルカ、俺だ。変わりはないか? 体調は悪くなっていないか?』
開口一番にルカの様子を心配して聞くあたりが蓮だよな。フフっと笑える。
「変わりないよ。蓮は、どう?」
『ルカが元気なら良かった。俺の心配までありがとう』
穏やかな蓮だ。声音だけで心が高揚する。久しぶりに聞く声に蓮の良い匂いを思い出して目を閉じる。
「それで? どうしたの?」
『あぁ、忙しいところすまない。今日、会見をする。お前とのことを正直に言いたいところだが、親の会社のこともあり全て正直に話すわけにはいかない。ルカに悪いようにはしないから、大丈夫だ。それを伝えておきたくて』
言われている内容に驚くばかりで閉じていた目をはっと見開く。
「は? 会見? なんで?」
『ルカに言われて自分をもう一度見つめ直した。今の俺はルカの前に立てるような男じゃないと分かった。ここ数日ゆっくり考えた。俺は困難から逃げてばかりの男だ。ルカの凛とした強さに気づきをもらった。このままの俺では恥ずかしくてルカの番だなどと言えない。俺は、もう一度這い上がるから。俳優として成功する。だから、ルカ。待っていて欲しい。アカデミー賞でもオスカー賞でも納得のいく結果を手にしてルカを迎えに行きたい』
携帯電話から聞こえる蓮の言葉。その強い声音に涙が止まらない。溢れる心が止められない。
「……うん、うん」
泣き声が聞こえてしまう。胸がいっぱいで抑えることが出来ない。
『ルカ、愛している。ルカは俺の運命だ』
蓮の言葉にただ頷いて泣いた。
「待って、いる、から」
必死でそれだけを伝えた。それ以外の言葉が浮かばなかった。
携帯電話から鳴る通話終了音を聞きながら車内で声を出して泣いた。
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