顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!

小池 月

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Ⅵ 運命の人

②※

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そっと自分の席に戻る蓮。席に座ると何も無かったかのようにコーヒーを飲み始める。
(訳が分からないんだよ……)
ゆっくりカフェオレを飲みながら蓮の手元を見て、あれ? と疑問が浮かぶ。

「蓮は、ブラックコーヒーだよな。俺の分は、どうしてカフェラテ?」
「雑誌のコメントにあっただろう。少し甘めのカフェラテが好き、ってな」
それ、いつの雑誌だろう。直近でそんな情報は載せていない。聞きたいことがあるのに何から聞いて良いのか分からない。

「ルカが番だと分かってからルカの載っている雑誌は全て目を通した。ほら、もう話はいいにしてアフターケアするから来い」
その言葉にどうしても聞きたい一つを聞く。

「アフターケアって何?」
「なんだ。知らないのか? アルファが自分のために頑張ってくれたオメガをとことん甘やかす時間だ。発情期後やアルファの威圧に当てられて辛い思いをしたオメガにも効果的だ」

「はぁ? 甘やかすって……、わぁ!」
急に椅子から抱き上げられてソファーに運ばれる。抱き上げられたまま座るから蓮の膝の上にルカがいる。蓮のいい匂いに包み込まれる。蓮を見上げて顔面が熱くなるのを感じる。

「な、なに? 意味、わかんね……」
照れてしまい上手く言葉が出てこない。

「いいから、俺の胸に頭預けて。ほら、ルカはよく頑張っている良いオメガだ。これほど辛いことに立ち向かえるオメガは、そう居ない。お前は世界一素晴らしいオメガだ。美しくて強い。そんなルカが番で俺は幸せだ」

なに? なに、を言われている? ルカが良いオメガ? ルカが番で、幸せ?? 耳を疑う言葉。労わるように優しい抱擁。飢えていた心がジワリと潤う。ルカの中で何かが溢れこぼれる。

「ひっ、うぅ~~」
涙が止まらず嗚咽が漏れる。泣きながら甘えたくて身体を丸める。ほら、もっと包み込んで? もっともっと抱きしめて? そんな不思議な感情が抑えられない。

「よしよし。良い子だ。ルカは最高の俺のオメガだ。可愛いなぁ」
そのままユラユラとあやす様に揺すられる。これ、気持ちいい。すごく幸せ。
「これ、好き……」
自然と呟いていた。

「そうか。俺もルカが好きだ。ずっと探していた。番と離れることが苦しいのはアルファも同じだ。それが、運命の番ならば尚更だ。今、こうして腕の中に戻ってくれてありがとう。頑張ってくれて、ありがとう」
あれ? 蓮が泣いている? 蓮の顔を見上げる。ルカと目が合うと恥ずかしそうに涙を流しながら微笑む蓮。

ルカはそっと伸びあがり蓮の涙を舐めとる。驚いたように蓮がビクリとするが直ぐにルカを抱きなおす。レロレロと涙を舐めると綺麗な唇が気になる。吐息が色っぽい。美味しそうな、唇。

涙を舌で追いかけて、頬から唇へ。唇を舌で一周味わうと蓮の吐息に声が混じる。もっと、もっと欲しい。そんなルカの心を読み取るかのように蓮が薄く口を開ける。ヌルリと出てくる蓮の舌。ゾクリと背筋を欲望が駆け抜ける。迷うことなく蓮の舌にルカの舌を絡ませる。キモチイイ。

蓮の首に抱きつくようにして深くキスをする。互いを確かめるようにゆっくり舐め味わう。幸福感で頭が蕩ける。そのまま蓮の良い匂いに包まれて温かい気持ちでルカは眠りについた。
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