17 / 38
Ⅴ 芸能スクープ
③
しおりを挟む
はっと目を覚ます。泥のように眠っていた。
「おはようございます。俺、どのくらい寝ていました?」
う~っと伸びをして室内で携帯電話をいじっている川口さんに声をかける。ふわりと優しい笑顔でルカに向く川口さん。
「おはよう、ルカ。十二時間以上だよ。良く寝たからかな? 寝起きも綺麗だ」
担当モデルのモチベーションアップのために褒めるマネージャーは多いらしいが川口さんはルカを愛でる様な言葉を多く使う。どう答えていいのか毎回反応に困る。携帯電話をテーブルに置く動きを、ぼんやり目線で追う。
「ルカ、今日は追加撮影したいけど良い? 会社からの指示なんだ」
「はい。調子はいいと思います。来月の雑誌ですか?」
「そう。これだけ報道されているから、うちが専属モデルの特権を生かしてルカの特集組んだらいいってさ」
「そうですか」
報道を利用するようで気が進まないけれど仕事ならば仕方がない。
「いつものスタジオですか?」
「そうだよ。特集と言っても目を引くだけで良いからお金はかけず、いつものスタジオで数枚分追加するくらいかな」
わかりました、と返事をして支度にとりかかる。寝すぎたせいか頭が重いけれど久しぶりの外出に嬉しくなる。
「わぁ! ルカぁ。久しぶり~」
スタジオに行くとモデル仲間の涼とノボルがいた。友達に会えたような小さな喜びが心に生まれる。
「うん、久しぶり」
「ルカ、大丈夫か? ちゃんと食っているか? 体重落ちたよな?」
ノボルが心配そうに顔を覗いてくる。ふふっと笑い返して応える。
「まぁ、食欲落ちたけれどマネージャーの川口さんに食事用意してもらって食べていたよ」
感謝を込めて口にしたのに、涼とノボルはちょっと怪訝そうな顔。
「へぇ、あいつが、ね。ルカは素直だからな。あまり信用するなよ?」
意味深な涼の言葉にルカは首をかしげる。
「どーいう意味?」
涼とノボルが顔を見合わせて、肩をすくめる。
「俺らの取り越し苦労なら良いなって話だよ。いいんだ。こっちの話。さ、今日は久しぶりにルカが来たから皆からの差し入れが凄いぞ!」
ほら、とテーブルを指さすノボル。洋菓子から和菓子、プリンもオニギリまである。
「うわ、おいしそう! 撮影前に食べてもいいのかな。見たら食欲湧いた!」
「もちろん食べていいさ。ほら、準備が整うまでお茶にしよーぜ」
久しぶりのモデル仲間との会話に心がウキウキした。涼とノボルは報道について触れてこない。流行りのショップに行った話やスタッフと飲み会をした話で笑いを誘う。楽しかった。笑っていると元気が出た。
「涼、ノボル、ありがとう」
ルカが声をかけると頬を染めてニカっと笑う涼。ノボルも照れ笑いしている。
「ルカの笑顔のためなら、何でもするよ」
優しい言葉が嬉しくてもう一度「ありがとう」と二人に伝える。
「ほら、ルカ。食べ過ぎると撮影で苦しくなるぞ」
ポンポンとルカの頭を撫でながら声をかけてくる川口さん。いつもは撮影中に声をかけてこないのに。途端に涼とノボルがご機嫌ナナメ顔。
「マネージャーさんは撮影終わるまで口出ししないで欲しいなぁ」
剣のあるノボルの言葉にドキリとする。
「すみません。ルカの体調管理に関わる事なので」
さらりと流している川口さん。見えない火花が散っているようで慌てて川口さんを止める。
「あ、心配ありがとうございます。川口さん、大丈夫ですから」
ルカにニコリと微笑んで離れていく川口さん。この二人と川口さんは気が合わない。同じ事務所の人なのになぁと考える。
「おはようございます。俺、どのくらい寝ていました?」
う~っと伸びをして室内で携帯電話をいじっている川口さんに声をかける。ふわりと優しい笑顔でルカに向く川口さん。
「おはよう、ルカ。十二時間以上だよ。良く寝たからかな? 寝起きも綺麗だ」
担当モデルのモチベーションアップのために褒めるマネージャーは多いらしいが川口さんはルカを愛でる様な言葉を多く使う。どう答えていいのか毎回反応に困る。携帯電話をテーブルに置く動きを、ぼんやり目線で追う。
「ルカ、今日は追加撮影したいけど良い? 会社からの指示なんだ」
「はい。調子はいいと思います。来月の雑誌ですか?」
「そう。これだけ報道されているから、うちが専属モデルの特権を生かしてルカの特集組んだらいいってさ」
「そうですか」
報道を利用するようで気が進まないけれど仕事ならば仕方がない。
「いつものスタジオですか?」
「そうだよ。特集と言っても目を引くだけで良いからお金はかけず、いつものスタジオで数枚分追加するくらいかな」
わかりました、と返事をして支度にとりかかる。寝すぎたせいか頭が重いけれど久しぶりの外出に嬉しくなる。
「わぁ! ルカぁ。久しぶり~」
スタジオに行くとモデル仲間の涼とノボルがいた。友達に会えたような小さな喜びが心に生まれる。
「うん、久しぶり」
「ルカ、大丈夫か? ちゃんと食っているか? 体重落ちたよな?」
ノボルが心配そうに顔を覗いてくる。ふふっと笑い返して応える。
「まぁ、食欲落ちたけれどマネージャーの川口さんに食事用意してもらって食べていたよ」
感謝を込めて口にしたのに、涼とノボルはちょっと怪訝そうな顔。
「へぇ、あいつが、ね。ルカは素直だからな。あまり信用するなよ?」
意味深な涼の言葉にルカは首をかしげる。
「どーいう意味?」
涼とノボルが顔を見合わせて、肩をすくめる。
「俺らの取り越し苦労なら良いなって話だよ。いいんだ。こっちの話。さ、今日は久しぶりにルカが来たから皆からの差し入れが凄いぞ!」
ほら、とテーブルを指さすノボル。洋菓子から和菓子、プリンもオニギリまである。
「うわ、おいしそう! 撮影前に食べてもいいのかな。見たら食欲湧いた!」
「もちろん食べていいさ。ほら、準備が整うまでお茶にしよーぜ」
久しぶりのモデル仲間との会話に心がウキウキした。涼とノボルは報道について触れてこない。流行りのショップに行った話やスタッフと飲み会をした話で笑いを誘う。楽しかった。笑っていると元気が出た。
「涼、ノボル、ありがとう」
ルカが声をかけると頬を染めてニカっと笑う涼。ノボルも照れ笑いしている。
「ルカの笑顔のためなら、何でもするよ」
優しい言葉が嬉しくてもう一度「ありがとう」と二人に伝える。
「ほら、ルカ。食べ過ぎると撮影で苦しくなるぞ」
ポンポンとルカの頭を撫でながら声をかけてくる川口さん。いつもは撮影中に声をかけてこないのに。途端に涼とノボルがご機嫌ナナメ顔。
「マネージャーさんは撮影終わるまで口出ししないで欲しいなぁ」
剣のあるノボルの言葉にドキリとする。
「すみません。ルカの体調管理に関わる事なので」
さらりと流している川口さん。見えない火花が散っているようで慌てて川口さんを止める。
「あ、心配ありがとうございます。川口さん、大丈夫ですから」
ルカにニコリと微笑んで離れていく川口さん。この二人と川口さんは気が合わない。同じ事務所の人なのになぁと考える。
109
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい
雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。
延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
こじらせΩのふつうの婚活
深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。
彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。
しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。
裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。
離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話
鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。
この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。
俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。
我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。
そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる