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Ⅴ 芸能スクープ

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はっと目を覚ます。泥のように眠っていた。

「おはようございます。俺、どのくらい寝ていました?」
う~っと伸びをして室内で携帯電話をいじっている川口さんに声をかける。ふわりと優しい笑顔でルカに向く川口さん。

「おはよう、ルカ。十二時間以上だよ。良く寝たからかな? 寝起きも綺麗だ」
担当モデルのモチベーションアップのために褒めるマネージャーは多いらしいが川口さんはルカを愛でる様な言葉を多く使う。どう答えていいのか毎回反応に困る。携帯電話をテーブルに置く動きを、ぼんやり目線で追う。

「ルカ、今日は追加撮影したいけど良い? 会社からの指示なんだ」
「はい。調子はいいと思います。来月の雑誌ですか?」

「そう。これだけ報道されているから、うちが専属モデルの特権を生かしてルカの特集組んだらいいってさ」
「そうですか」
報道を利用するようで気が進まないけれど仕事ならば仕方がない。

「いつものスタジオですか?」
「そうだよ。特集と言っても目を引くだけで良いからお金はかけず、いつものスタジオで数枚分追加するくらいかな」
わかりました、と返事をして支度にとりかかる。寝すぎたせいか頭が重いけれど久しぶりの外出に嬉しくなる。


「わぁ! ルカぁ。久しぶり~」
スタジオに行くとモデル仲間の涼とノボルがいた。友達に会えたような小さな喜びが心に生まれる。
「うん、久しぶり」

「ルカ、大丈夫か? ちゃんと食っているか? 体重落ちたよな?」
ノボルが心配そうに顔を覗いてくる。ふふっと笑い返して応える。

「まぁ、食欲落ちたけれどマネージャーの川口さんに食事用意してもらって食べていたよ」
感謝を込めて口にしたのに、涼とノボルはちょっと怪訝そうな顔。

「へぇ、あいつが、ね。ルカは素直だからな。あまり信用するなよ?」
意味深な涼の言葉にルカは首をかしげる。

「どーいう意味?」
涼とノボルが顔を見合わせて、肩をすくめる。

「俺らの取り越し苦労なら良いなって話だよ。いいんだ。こっちの話。さ、今日は久しぶりにルカが来たから皆からの差し入れが凄いぞ!」
ほら、とテーブルを指さすノボル。洋菓子から和菓子、プリンもオニギリまである。

「うわ、おいしそう! 撮影前に食べてもいいのかな。見たら食欲湧いた!」
「もちろん食べていいさ。ほら、準備が整うまでお茶にしよーぜ」

久しぶりのモデル仲間との会話に心がウキウキした。涼とノボルは報道について触れてこない。流行りのショップに行った話やスタッフと飲み会をした話で笑いを誘う。楽しかった。笑っていると元気が出た。

「涼、ノボル、ありがとう」
ルカが声をかけると頬を染めてニカっと笑う涼。ノボルも照れ笑いしている。

「ルカの笑顔のためなら、何でもするよ」
優しい言葉が嬉しくてもう一度「ありがとう」と二人に伝える。

「ほら、ルカ。食べ過ぎると撮影で苦しくなるぞ」
ポンポンとルカの頭を撫でながら声をかけてくる川口さん。いつもは撮影中に声をかけてこないのに。途端に涼とノボルがご機嫌ナナメ顔。

「マネージャーさんは撮影終わるまで口出ししないで欲しいなぁ」
剣のあるノボルの言葉にドキリとする。

「すみません。ルカの体調管理に関わる事なので」
さらりと流している川口さん。見えない火花が散っているようで慌てて川口さんを止める。

「あ、心配ありがとうございます。川口さん、大丈夫ですから」
ルカにニコリと微笑んで離れていく川口さん。この二人と川口さんは気が合わない。同じ事務所の人なのになぁと考える。
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