15 / 38
Ⅴ 芸能スクープ
①
しおりを挟む
『あの人気アルファ男優 神宮司蓮がバース性犯罪者だった!!』
『人気モデルLUCaをキズモノオメガにしたのは、まさかの蓮!!』
新聞や雑誌、テレビのワイドショーがこの話題で持ちきりになった。
三日前に蓮の特大スクープ記事が出た。あまりに急な出来事にルカはポカンとしている。世間の騒ぎに事務所からは自宅待機を命じられている。マスコミが怖いからルカは部屋から一歩も出ていない。翌々月分の雑誌撮影まで終了しているから休暇をとっても仕事上大丈夫だ。引きこもりに慣れているし、最近の体調不良を思えば有難いくらいだった。
『ピンポーン』
玄関インターホンが鳴り画面確認する。
事務所から与えられているこのマンションはワンルームで狭いけれどセキュリティが強固なオートロックマンション。一階のマンション出入り玄関とエレベーターや階段使用部分、自宅玄関にそれぞれ鍵が必要。つまり建物内には鍵を持つ住人でないと出入りできない。ルカの部屋の鍵はルカと川口さんが保有している。インターホン画像を確認して知っている顔に安堵する。
「川口さん、こちらから開けますか? 鍵で入りますか?」
インターホン越しに声をかける。
『起きていた? 鍵で行くよ』
返ってくる優しい声に頬が緩む。
発情期以外は必ずインターホンを鳴らしてから訪問してくれる川口さん。鍵で入る事が出来るのに。この小さな気遣いが嬉しい。蓮にもこの優しさがあればいいのに。蓮を思い出すと唇を噛みしめたくなる。苦しさに囚われそうになる。
「おはよう、ルカ。顔色が少し良いね」
食材を買い込んできてくれた川口さん。
「はい。抑制剤は昨日から止めました。外に出ないなら必要ないですから。治験の新薬だけなら身体が楽です」
「そう、良かった。蓮と会う事さえなければ苦境に陥ることも無かった。過去に戻れるなら蓮との仕事を受ける前に戻りたいよ」
肩を落とす川口さんに何と声をかけていいのか分からず互いに下を向く。
「あの、蓮は、大丈夫でしょうか?」
マスコミに騒がれて蓮のドラマが早期打ち切りになるかも、と報道されている。アルファの蓮ならどうって事ないのかもしれないがルカは気になって仕方ない。
「ルカ、あんな犯罪者の事など気にすること無いんだ。本来なら逮捕されるべきじゃないか。そうだ、今からでも被害届出さないか?」
何度も川口さんから言われている被害届。中学生の頃は親が被害届を出していた。社会人になり自分の生きる道が開けてから被害届は引き下げた。ルカの中のプライドだった。首を噛まれたのは事故だ、そう思っていないと被害者という枷から抜け出せなかったから。
「いいです。もう、関わり合いになりたくない。蓮には社会的制裁がかかっていると思うし。これ以上騒ぎたくないです」
これはルカの本心だった。
「アルファを叩き潰すチャンスじゃないか」
強く言葉にする川口さんに驚く。何も答えず川口さんを見つめると困った顔になる。
「ごめん。僕がルカを苦しめる存在を許せないだけだよ。ルカに強要すべき事じゃないよね」
そう言いながら優しく頭を撫でてくれる。
「ルカ、せっかくの休みだ。体調を整えよう! ほら、ベッドまで運ぶよ」
「わぁ! お、降ろして」
急に川口さんに抱き上げられて驚く。
川口さんは筋トレが趣味でルカを軽々持ち上げてしまうほど筋力がある。玄関からすぐの室内ベッドに運ばれる。
「腰、悪くしますよ」
「この距離で? そんなにヤワじゃないさ」
少し笑いあう。空気が和んで安堵した。
『人気モデルLUCaをキズモノオメガにしたのは、まさかの蓮!!』
新聞や雑誌、テレビのワイドショーがこの話題で持ちきりになった。
三日前に蓮の特大スクープ記事が出た。あまりに急な出来事にルカはポカンとしている。世間の騒ぎに事務所からは自宅待機を命じられている。マスコミが怖いからルカは部屋から一歩も出ていない。翌々月分の雑誌撮影まで終了しているから休暇をとっても仕事上大丈夫だ。引きこもりに慣れているし、最近の体調不良を思えば有難いくらいだった。
『ピンポーン』
玄関インターホンが鳴り画面確認する。
事務所から与えられているこのマンションはワンルームで狭いけれどセキュリティが強固なオートロックマンション。一階のマンション出入り玄関とエレベーターや階段使用部分、自宅玄関にそれぞれ鍵が必要。つまり建物内には鍵を持つ住人でないと出入りできない。ルカの部屋の鍵はルカと川口さんが保有している。インターホン画像を確認して知っている顔に安堵する。
「川口さん、こちらから開けますか? 鍵で入りますか?」
インターホン越しに声をかける。
『起きていた? 鍵で行くよ』
返ってくる優しい声に頬が緩む。
発情期以外は必ずインターホンを鳴らしてから訪問してくれる川口さん。鍵で入る事が出来るのに。この小さな気遣いが嬉しい。蓮にもこの優しさがあればいいのに。蓮を思い出すと唇を噛みしめたくなる。苦しさに囚われそうになる。
「おはよう、ルカ。顔色が少し良いね」
食材を買い込んできてくれた川口さん。
「はい。抑制剤は昨日から止めました。外に出ないなら必要ないですから。治験の新薬だけなら身体が楽です」
「そう、良かった。蓮と会う事さえなければ苦境に陥ることも無かった。過去に戻れるなら蓮との仕事を受ける前に戻りたいよ」
肩を落とす川口さんに何と声をかけていいのか分からず互いに下を向く。
「あの、蓮は、大丈夫でしょうか?」
マスコミに騒がれて蓮のドラマが早期打ち切りになるかも、と報道されている。アルファの蓮ならどうって事ないのかもしれないがルカは気になって仕方ない。
「ルカ、あんな犯罪者の事など気にすること無いんだ。本来なら逮捕されるべきじゃないか。そうだ、今からでも被害届出さないか?」
何度も川口さんから言われている被害届。中学生の頃は親が被害届を出していた。社会人になり自分の生きる道が開けてから被害届は引き下げた。ルカの中のプライドだった。首を噛まれたのは事故だ、そう思っていないと被害者という枷から抜け出せなかったから。
「いいです。もう、関わり合いになりたくない。蓮には社会的制裁がかかっていると思うし。これ以上騒ぎたくないです」
これはルカの本心だった。
「アルファを叩き潰すチャンスじゃないか」
強く言葉にする川口さんに驚く。何も答えず川口さんを見つめると困った顔になる。
「ごめん。僕がルカを苦しめる存在を許せないだけだよ。ルカに強要すべき事じゃないよね」
そう言いながら優しく頭を撫でてくれる。
「ルカ、せっかくの休みだ。体調を整えよう! ほら、ベッドまで運ぶよ」
「わぁ! お、降ろして」
急に川口さんに抱き上げられて驚く。
川口さんは筋トレが趣味でルカを軽々持ち上げてしまうほど筋力がある。玄関からすぐの室内ベッドに運ばれる。
「腰、悪くしますよ」
「この距離で? そんなにヤワじゃないさ」
少し笑いあう。空気が和んで安堵した。
107
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。
ハーバルお兄さん~転生したら、イケおじ辺境伯と魔王の子息を魅了ヒーリングしちゃいました~
沼田桃弥
BL
三国誠は退職後、ハーバリストとして独立し、充実した日々を過ごしていた。そんなある日、誠は庭の草むしりをしていた時、勢い余って後頭部を強打し、帰らぬ人となる。
それを哀れに思った大地の女神が彼を異世界転生させたが、誤って人間界と魔界の間にある廃村へ転生させてしまい……。
※濡れ場は★つけています
落第騎士の拾い物
深山恐竜
BL
「オメガでございます」
ひと月前、セレガは医者から第三の性別を告知された。将来は勇猛な騎士になることを夢見ていたセレガは、この診断に絶望した。
セレガは絶望の末に”ドラゴンの巣”へ向かう。そこで彼は騎士見習いとして最期の戦いをするつもりであった。しかし、巣にはドラゴンに育てられたという男がいた。男は純粋で、無垢で、彼と交流するうちに、セレガは未来への希望を取り戻す。
ところがある日、発情したセレガは男と関係を持ってしまって……?
オメガバースの設定をお借りしています。
ムーンライトノベルズにも掲載中
侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます
muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。
仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。
成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。
何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。
汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。
婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々
月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。
俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。
愛人は嫌だったので別れることにしました。
伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。
しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる