4 / 8
Ⅳ
恋心
しおりを挟む
どうしようもなく可愛い。理久君を表現するなら「可愛い」以外に当てはまらない。いちいち反応がくすぐったい子で、心をガッツリ掴んでくる。これはヤバいだろう。日に日にこちらを見るようになる表情。ニコリと笑う目元。昇天、という言葉がコレか! と感じる気持ち。モジモジして「ワー」っと叫びたくなる気持ち。俺は青春真っただ中か! と自己ツッコミたくなるホワホワした気持ち。春だ。脳内お花畑だ。幸せだ~~。この可愛い理久君が俺の腕の中に居まーす! と大声で言いふらしたい。
それに理久君が抱えている何か。ところどころ触れてほしくなさそうな場面がある。出会った時の「殴らないで」と言っていた寝言。周囲に高い心の壁を作っている姿。家族や友人の話など自分の事を一切話さないところ。俺に心を開いてきているのは分かる。全てから俺が守ってあげるから、俺の傍に居ればいい。話したくないなら話さなくていい。一度、夜間に過呼吸のような発作も起こしている。追いつめたくない。目の前の、今の理久君が大好きだ。それが伝わるといい。言葉じゃない。俺の全てで気持ちを伝える。
理久君を守りたい。支えたい。愛おしくて胸が苦しい。こんな気持ちは初めてだ。俺は理久君に惹かれている。だけど、男性同士だ。慎重にいかないと理久君を失ってしまう。怖がらせないように。もし俺の想いが叶わないなら、せめて友人として理久君の傍に居られるように。
俺はこれまで仕事以外でこれ程に熱中することがあるなんて知らなかった。心も身体も躍り上がるような幸福感に、恋って素晴らしい! と実感している。
あっという間の同棲期間だった。何度も引き留めてみたけれど、骨折の完治と共に自宅に理久君が戻る。手のリハビリも順調で仕事復帰も問題ないでしょう、と医師の診断。いや、もっと安静にしましょうよ! という俺を変な目で見る医師。先生、俺の気持を汲んでくれ。残念過ぎて肩ががっくり下がってしまう。理久君は俺のもとに居てくれると思っていたのに、意外にあっさり「お世話になりました」と言われてしまった。ショックの隠せない俺の心。せめて、公園の事務所に様子を見に行っていいか、お昼は一緒に食べられるか聞くと頷いてくれる。嫌われているわけじゃないことに安堵した。ケータイ電話を買って渡した。連絡が取りたかった。週末は俺と過ごそうと言うと、真っ赤になって頷いてくれる。それだけでも嬉しい。合い鍵は返されて、渋々受け取った。持っていて無くしたら責任取れません、と言う理久君。その通りだけど心が痛い。手放したくないな。心の底にある欲望を悟られないように、精一杯大人の対応をする。俺が高校生なら「行くなよ! 俺の傍に居ろ!」なんて叫ぶんだけど。大人って辛い。
それに理久君が抱えている何か。ところどころ触れてほしくなさそうな場面がある。出会った時の「殴らないで」と言っていた寝言。周囲に高い心の壁を作っている姿。家族や友人の話など自分の事を一切話さないところ。俺に心を開いてきているのは分かる。全てから俺が守ってあげるから、俺の傍に居ればいい。話したくないなら話さなくていい。一度、夜間に過呼吸のような発作も起こしている。追いつめたくない。目の前の、今の理久君が大好きだ。それが伝わるといい。言葉じゃない。俺の全てで気持ちを伝える。
理久君を守りたい。支えたい。愛おしくて胸が苦しい。こんな気持ちは初めてだ。俺は理久君に惹かれている。だけど、男性同士だ。慎重にいかないと理久君を失ってしまう。怖がらせないように。もし俺の想いが叶わないなら、せめて友人として理久君の傍に居られるように。
俺はこれまで仕事以外でこれ程に熱中することがあるなんて知らなかった。心も身体も躍り上がるような幸福感に、恋って素晴らしい! と実感している。
あっという間の同棲期間だった。何度も引き留めてみたけれど、骨折の完治と共に自宅に理久君が戻る。手のリハビリも順調で仕事復帰も問題ないでしょう、と医師の診断。いや、もっと安静にしましょうよ! という俺を変な目で見る医師。先生、俺の気持を汲んでくれ。残念過ぎて肩ががっくり下がってしまう。理久君は俺のもとに居てくれると思っていたのに、意外にあっさり「お世話になりました」と言われてしまった。ショックの隠せない俺の心。せめて、公園の事務所に様子を見に行っていいか、お昼は一緒に食べられるか聞くと頷いてくれる。嫌われているわけじゃないことに安堵した。ケータイ電話を買って渡した。連絡が取りたかった。週末は俺と過ごそうと言うと、真っ赤になって頷いてくれる。それだけでも嬉しい。合い鍵は返されて、渋々受け取った。持っていて無くしたら責任取れません、と言う理久君。その通りだけど心が痛い。手放したくないな。心の底にある欲望を悟られないように、精一杯大人の対応をする。俺が高校生なら「行くなよ! 俺の傍に居ろ!」なんて叫ぶんだけど。大人って辛い。
15
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
その溺愛は伝わりづらい
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる