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Ⅱ 次期王となる竜人皇子と罪人の子の許愛

愛と決意

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<愛と決意>
 オリバー様の部屋に帰る。一緒に手をつないで歩いた。
「すごいぞ! レイ!」
部屋に入ると、両脇を抱えられ子供の「高い高い」のように高く上げられる。くるくると嬉しそうに回され、ぎゅっと抱き留められる。
びっくりした。オリバー様にしがみつく。
「俺は、認めてもらえると思っていなかった。レイは誰にも奪われないように隠したいと思っていた。二人だけの世界が幸せだと思っていた。でも、その上があった! レイを皆に認めてもらえることが、将来の王妃殿下にするという夢をもらえたことが、嬉しい! 俺たちの道には、希望がある! レイ、愛している」
床におろされる。椅子に座らされ、足元にオリバー様がひざまずく。びっくりして立とうとするが制される。
「レイ。俺と結婚してほしい。まずは、正式な婚約を目指す。時間はかかると思う。長い道のりだが、一緒に歩んでくれるか?」
「……はい。僕は、オリバー様と一緒にいたいです」
手にキスをされる。あ、手にキス。あの時、カイト様とコレをしたと勘違いされたのかな。
「あの、カイト様には、手にキスをされていません」
一応、伝えてみる。
「うん。俺の勘違いだった。本当にすまなかった。あの時は、嫉妬したんだ。レイがカイトにとられてしまうと不安になっていた。その勘違いで、怖い思いをさせてしまった。いつか、あの行為を、優しい愛情の行為で上書きさせてほしいと思っている。レイの気が向いたらでいいから」
手に言葉を注ぎ込むように話される。カーっと全身が熱くなる。
「はい。いつでも、もう大丈夫だと思います。オリバー様の心が分かったから。ただ、痛いのは、ちょっと怖い、と思います」
「ありがとう。レイ」
そっと、椅子から抱き上げる。「お風呂に入ろうか」とささやかれる。あ、お風呂。そうだ、石鹸。
「あの、これ」
ポケットからハンカチに包まれた石鹸を出す。
「もう、オリバー様と会えないかと思って」
「はは。可愛いな。なぜ石鹸?」
「匂いが、僕とオリバー様のお揃いの匂い。これを嗅いでいたら、離れていてもいつも傍にいるように思えるかなって」
「本当に可愛らしい」
ぎゅっと抱きしめられて風呂に向かう。

キスをしてレイの服を脱がす。レイに俺の服を脱がしてもらう。慣れないことに、四苦八苦しているレイが可愛い。
浴槽の中。膝の上にレイ。額を合わせて聞く。
「嫌じゃない? 大丈夫?」
「はい」
「ベッドに行こう」

ベッドに宝物をそっと降ろす。白い身体にピンクのスジがたくさんある。風呂後はくっきり見える。それを優しく撫でてキスをする。
「ぅ……ん……」
時々上がる声が耳に触れる。同じように興奮していることが嬉しい。
「レイ、愛している。可愛いレイ。大好きだ」
優しく入り込みながら耳元にささやく。泣きながら答えてくれる。
「ぼく、ぼくもぉ、あぅ! だい、すきぃ」
愛を確かめ合う優しい繋がりに、慈しむ想いに心も身体も包み込まれる。レイがビクビクと感じてくれる。気持ち良さに声を漏らし、ピシャピシャと液をこぼしている姿。レイが必死で受け入れてくれている、この絶対の幸福感。全てが満たされる感動に打ち震える時間だった。

 寝入ってしまったレイを起こさないよう侍従にシーツの交換、もろもろの片づけを指示する。レイを抱えて寝室に備え付けの浴室に向かう。いつもレイと入る浴室ほどは広くないが、こんな時はこちらが役立つ。身体を清めて、風呂で温める。「うぅ……ん」レイがうっすら目を開ける。「まだ寝ていていい」声をかけると、すやすや寝入る。頭をなでて、身体を拭き上げ、きれいになったベッドに寝かせる。その顔を眺め、幸せだと思う。身体を密着させて眠る。喜びに温かい涙が流れた。

 胸元でもぞもぞ動いている。もう少し寝ているといい。抱きしめて、背中をトントンする。
「あぁ、ちょっと」
と声がする。起きるのが早いなぁ。
「レイ、まだ朝じゃないよ」
声をかけると、
「オリバー様、と、トイレ!」
と胸元から声がする。それは大変だ。
「あぁ、ごめん」
と腕を外す。するりと抜けたレイがベッドから降りたが、ドスンと音がする。はっと目が覚める。
「レイ!?」
見ると床に倒れこんでいる。足腰が立たなかったようだ。
「うぅ、トイレ」
と、うなっている。すぐに抱え上げてトイレに連れていく。しばらくして
「間に合ったぁ」
と出てくる。少年の顔を見た気がして、ははは、と笑ってしまった。真っ赤になって怒るレイ。
「ごめん、ごめん」
と言いながら顔が笑ってしまう。
「もう! ケツ叩き棒、しますよ!」
ここで陛下のケツ叩き棒を持ち出すのか。もうだめだ。声を上げて笑い出してしまい、レイは可愛く翌日まで拗ねてしまった。
 レイが傍にいて心を満たしてくれる。この子の笑顔を守りたい。世界が、未来が輝いて見える。これが愛する人とつながるということなのだろう。喜び、そのものだ。

この幸せのために、もっと強く、力をつけよう。俺はレイを、兄弟を、この国を守ろう。迷う時や心が折れそうになった時には、レイの手紙を読み自分を戒めよう。

 「オリバー様は輝く僕の光です。愛しています」と書かれた手紙を。
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