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Ⅱ 次期王となる竜人皇子と罪人の子の許愛

不幸の連鎖

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<不幸の連鎖>
 「人というものは、同じ種族に親愛の情が持てないものか」
父王陛下がため息をつかれる。俺はすぐに陛下、カイト、ランドールに俺の見たことを伝えた。三年前の事件の詳細を知るメンバーだ。陛下の執務室に集合している。カイトもランドールも真剣な顔。あの事件にはそれぞれに思いがある。
「それで、オリバーはどう感じた?」
カイトに聞かれる。
「俺は、あの事件はすべて終わったと思っていた。アレクも回復して、なかったことにはできないが、断罪もして、平穏になったと思っていた。知らないうちに、人の世界でこのような差別的行為が起こり、罪のない少年が虐げられていることを無下にできない。まずは、事件関係者家族がどうしているか調べてみたい。必要があれば保護していくべきだと考える」
みんなの表情を見る。陛下がひとつ頷き、続きを促す。
「あの少年、レイ・バートのことを調べてみた。両親が処刑されている。しかし、調書を確認し記録を追ってみたところ、あれはただの運送会社だ。事件数年前から工場との契約で廃棄物処理運搬を請け負っていた。その廃棄物に故意的に作られた汚水が混じっていた。だが、それだけだ。組織のメンバーとしての活動実績はなかった」
「人とは、自分の利益のために人を蹴落とすもの。当時、組織の人間を見つけた、と申告すれば犯罪者を見つけた英雄扱いだった。無実の罪で逮捕され、処刑された者もいただろう。レイたち一家は、まさにその被害者だった」
「オリバー様、この件、アレク様のお耳には入れないようお願いします。アレク様はうすうす事件の結末について気づいておられます。これ以上、お心を傷つけたくありません」
「わかっている。これについては俺が請け負いたい。父上、それでいいでしょうか?」
「うむ。こちらに報告が上がらなく、隠されてしまっている部分によく気が付いた。オリバーのサボりも役に立った」
皆が苦笑する。
「人間との小さな亀裂は、この国の不幸の種となる。不幸の連鎖は避けたいものだ」
陛下が一息つかれる。
「では、オリバー、引き続き調査を継続するように。そしてカイト、一緒に調査を行うように。ランドールは今回補助的に二人を助けてくれ。ランドールにはアレクの浄化をメインとしてもらいたい」
竜成人の十八歳を超えてから、弟のアレクは汚染水で破壊された自然と水の浄化を公務としている。ランドールと二人で。これは、竜人の中でアレクにしかできない貴重な仕事だ。
「はい。承知しました」
それぞれが返事をする。

 執務室を出て、カイトにつかまる。
「オリバー、ちょっと飲もうよ。今後のこと考えよう。やみくもに動くわけにいかないでしょ。もうちょっと詳しく聞きたいし」
「そうだな。俺の部屋でいいか?」
「いいよ。一時間後に行くね。うん。以前のオリバーだ」
カイトに笑われる。
「オリバー、ここのところ目が死んだようになっていたよ。少しやる気が起きたなら嬉しいよ」
「……悪かったな」
バチンと背中をたたかれる。
「また、あとで!」
軽快な後姿を目で追う。バカ力め。
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