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Ⅱ章「幸せを運ぶコウノトリと小さな文鳥の幸せ番」
side:宮下徹②
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番鳥は出会うと鳴き声を交わす。鳴き声を交わし合うと、人生のパートナーとなる相手。
街中や仕事先、学校など急な出会いもある。そんな偶然おこる番鳥との出会いは最優先される。
知らない者同士の場合、すぐに二人の時間を作ることが社会のルール。学業や仕事は二の次。まず自己紹介や連絡先の交換、分身鳥同士の時間を作ることが大切とされている。
だけど、俺の相手は立ち去った。興味がなさそうに。
学年も名前も知らない。絶滅危惧種保護対象のコウノトリが分身鳥と分かればすぐに調べられるけど。
だけど、失礼だろう。マナーに反する。あんな仏頂面が番?
俺の鳥に思わず聞いた。
「お前、番の相手間違えてない?」
愛らしいけれど気の強い俺の鳥は、「間違えるわけないよ!」と耳をガブリと噛んでくる。結構痛い。耳をさすりながら考える。コウノトリが俺の鳥に寄り添っていた姿。鳥同士は、上手くいきそうか、とため息がでる。
俺は、あの男と上手くやれる自信ゼロだよ。ってゆーか、男かよ。
明日、大学学生センターで氏名と学部など情報を聞いてこよう。
『加藤幸一。分身鳥は絶滅危惧種高位のコウノトリ。四月に入学。大学では唯一の絶滅危惧種高位の被保護者。法学部の一年生』
学生センターで教えてもらえた情報を見る。
法学部か。経済学部と学部棟が近い。各学部共に一年生は一般教養の講義が多い。学生センターでは履修科目や住所などの個人情報までは教えてもらえない。俺が探しに行くのもバカバカしい。何度目かのため息が出る。
俺の鳥が「ちょっと、探してよ!」と髪を引っ張る。分かっているよ。お前のために動いているんだよ。可愛い小鳥を指でよしよし、と撫でる。
「おい、宮下。お前、番鳥に会ったんだって?」
学生センターを出たところで、同じ経済学部の同級生に会う。
俺を見下すグループ。小鳥は大人しく大型に服従するべきだという古い考えと変なプライドのある男四人。
一年の時だった。この四人がレポートを、小型分身鳥を持つ人に押し付けていた。偶然見てしまった。断れずに大型分身鳥の圧力に下を向いて困っている人。つい、口を出してしまった。自分の力でやるべきだ、とハッキリ進言した。
それから「生意気だ」と会うごとに突っかかってくる。分身鳥がカラス・トビ・シラサギ・マガンの四人。分身鳥が皆、五十センチ超え。クラブやら合コンやらに忙しいグループだ。会うといつも疲れる。
「そうだけど。情報が早いね」
ニッコリといつもの上っ面笑顔で応える。
「相手、コウノトリらしいな。せっかくの絶滅危惧貴重種なのに、番が文鳥か。せめて大型ならなぁ。宮下、小型として色々と、役に立たないといけないよなぁ」
にやにやしている。性的な事を意味しているのは分かる。
「悪いけど、プライバシーの問題だ。それに差別的な発言は控えるべきだ」
「いや、心配しているんだって。どう考えたって、お前が受け入れる側だろう? 俺たち練習してやってもいいぞ? 突っ込んで慣らしてやるよ。気持ちよ~く、なるまでな」
あはは、と笑い声。
「お前ら、女子にもそんなこと言っているの? それ、ヤバいと思うよ」
途端に四人の顔が真っ赤になる。学生センターに出入りしていた女子学生が怪訝な顔をして彼らを見る。
「バカヤロウ! お前だから言ったんだよ!」
「そうか。なら、俺を貶めたいのか? 気に入らないから子供じみたイジメでもしたいってこと?」
真っすぐ正面から見据えて話すと、四人が赤い顔で怒りを滲ませて去っていく。本心を見透かされて反論も出来ないか。彼らの幼いプライドに、疲れるよね、と俺の鳥と頷き合う。
敵はあまり作りたくないけれど仕方ない。
それよりも、コウノトリの彼をどうしよう。あの仏頂面男め。出会った時のフリースペースで待ってみようかな。それが一番いいように思えた。
街中や仕事先、学校など急な出会いもある。そんな偶然おこる番鳥との出会いは最優先される。
知らない者同士の場合、すぐに二人の時間を作ることが社会のルール。学業や仕事は二の次。まず自己紹介や連絡先の交換、分身鳥同士の時間を作ることが大切とされている。
だけど、俺の相手は立ち去った。興味がなさそうに。
学年も名前も知らない。絶滅危惧種保護対象のコウノトリが分身鳥と分かればすぐに調べられるけど。
だけど、失礼だろう。マナーに反する。あんな仏頂面が番?
俺の鳥に思わず聞いた。
「お前、番の相手間違えてない?」
愛らしいけれど気の強い俺の鳥は、「間違えるわけないよ!」と耳をガブリと噛んでくる。結構痛い。耳をさすりながら考える。コウノトリが俺の鳥に寄り添っていた姿。鳥同士は、上手くいきそうか、とため息がでる。
俺は、あの男と上手くやれる自信ゼロだよ。ってゆーか、男かよ。
明日、大学学生センターで氏名と学部など情報を聞いてこよう。
『加藤幸一。分身鳥は絶滅危惧種高位のコウノトリ。四月に入学。大学では唯一の絶滅危惧種高位の被保護者。法学部の一年生』
学生センターで教えてもらえた情報を見る。
法学部か。経済学部と学部棟が近い。各学部共に一年生は一般教養の講義が多い。学生センターでは履修科目や住所などの個人情報までは教えてもらえない。俺が探しに行くのもバカバカしい。何度目かのため息が出る。
俺の鳥が「ちょっと、探してよ!」と髪を引っ張る。分かっているよ。お前のために動いているんだよ。可愛い小鳥を指でよしよし、と撫でる。
「おい、宮下。お前、番鳥に会ったんだって?」
学生センターを出たところで、同じ経済学部の同級生に会う。
俺を見下すグループ。小鳥は大人しく大型に服従するべきだという古い考えと変なプライドのある男四人。
一年の時だった。この四人がレポートを、小型分身鳥を持つ人に押し付けていた。偶然見てしまった。断れずに大型分身鳥の圧力に下を向いて困っている人。つい、口を出してしまった。自分の力でやるべきだ、とハッキリ進言した。
それから「生意気だ」と会うごとに突っかかってくる。分身鳥がカラス・トビ・シラサギ・マガンの四人。分身鳥が皆、五十センチ超え。クラブやら合コンやらに忙しいグループだ。会うといつも疲れる。
「そうだけど。情報が早いね」
ニッコリといつもの上っ面笑顔で応える。
「相手、コウノトリらしいな。せっかくの絶滅危惧貴重種なのに、番が文鳥か。せめて大型ならなぁ。宮下、小型として色々と、役に立たないといけないよなぁ」
にやにやしている。性的な事を意味しているのは分かる。
「悪いけど、プライバシーの問題だ。それに差別的な発言は控えるべきだ」
「いや、心配しているんだって。どう考えたって、お前が受け入れる側だろう? 俺たち練習してやってもいいぞ? 突っ込んで慣らしてやるよ。気持ちよ~く、なるまでな」
あはは、と笑い声。
「お前ら、女子にもそんなこと言っているの? それ、ヤバいと思うよ」
途端に四人の顔が真っ赤になる。学生センターに出入りしていた女子学生が怪訝な顔をして彼らを見る。
「バカヤロウ! お前だから言ったんだよ!」
「そうか。なら、俺を貶めたいのか? 気に入らないから子供じみたイジメでもしたいってこと?」
真っすぐ正面から見据えて話すと、四人が赤い顔で怒りを滲ませて去っていく。本心を見透かされて反論も出来ないか。彼らの幼いプライドに、疲れるよね、と俺の鳥と頷き合う。
敵はあまり作りたくないけれど仕方ない。
それよりも、コウノトリの彼をどうしよう。あの仏頂面男め。出会った時のフリースペースで待ってみようかな。それが一番いいように思えた。
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