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Ⅰ章「分身鳥の恋番」
side:小坂涼⑫
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「ね、あそこまで言って良かったの?」
「大丈夫。バレないよ。婚姻届けは嘘だけど、両性保護団体の知恵を借りたんだ。他人の戸籍を見ることは出来ないしね」
「策士だなぁ」
「涼のためならね。はぁ、緊張した」
「え? 緊張していたんだ」
「当然だよ。上手くいかなきゃ涼が危険な状況になるだろ。今日だって、レオはお前の男子宮が成熟したか、触って確かめるところだったんだぞ」
男子宮を、触る? 考えてしまい一気に恥ずかしくなった。と同時に青ざめる。
「あの、僕、大丈夫なの? やられちゃって、ない? に、妊娠は?」
「ばっちり未遂で助け出しました、お姫様」
「ありがとう~~、ルイ!」
笑いながら抱き着く。ルイに抱き着くことも甘えることも、すっかり馴染んでしまった。今ならルイが番鳥と胸を張って言える。
「ね、ルイ。卒業したら本当に結婚しようよ」
がばっと顔を上げて、ルイが僕を見つめる。
「いいの? 俺と結婚してくれるの?」
「いいよ。性的な事も、いいよ。多分ルイなら、大丈夫。僕、ルイのこと、好きだ」
とたんに両頬を大きな手で包まれて、上からキス。あまりに急で驚くけれど、顔を固定されていて動けない。何度も触れるだけのキスを繰り返す。キスと共に、涙が落ちてきて僕の顔を濡らす。待って、と言おうとして開いた口に急に舌がねじ込まれる。
「うぐ~~」
喉の奥で声がこもる。僕の全てを舐めつくす勢いのキス。頭がぼ~っとして、身体の力が抜けたころ、ようやく解放された。荒い呼吸と目線で無言の抗議をする。慌てて僕の顔をタオルで拭うルイ。
「ごめん。ちょっと、我慢がきかないくらい嬉しくて…‥‥」
「うん。すごく、分かった。けど、卒業するまでは、キスまでにして。体調良くなったから男子宮が成熟していると思う。その、性交して妊娠とか、怖い。まだ高校生活楽しみたいし。卒業して大学かな、働くのかな、それも決めてからにしてほしい」
「そうだね。卒業後の生活とお金については心配いらないよ。俺、爺ちゃんの不動産いくつかもらっている。賃貸マンションと立体駐車場もあるんだ。不労収入があるから、困ることないよ」
不労収入? 知らない言葉。
「よく分からない。知らないけど、お金持ちってこと?」
「平たく言うと、そういうこと。ちなみに、この国立学校に来ているほとんどの家庭がお金持ち」
「本当に? 宮下君も?」
「そうだよ。宮下君ちは大きい会社だよ。海外事業も多く手掛けている総合商社の一人息子だよ」
「げっ。お坊ちゃま君か」
「この学校はいい人選しているよ。クラスの人を見ても、皆、家庭環境も人格も良い。ここに来られて良かったよ」
「それは、僕も思う。意見を押し付けてこないし、僕の非常識さも受け入れてくれたし」
顔を見合わせて笑う。
「一番の良かったことは、涼に出会えたこと」
「衝動行為さえなければ完璧だったね」
「それに関しては、ほんと一生頭が上がりません。ごめんなさい」
あはは、と笑いあう。苦しかったことを笑い飛ばせる今の状況が、心から嬉しかった。
藤原ルイはかけがえのない僕の番鳥だ。
一学期終了と共にレオがフランスに帰国した。驚いたのは、いつも護衛についていた三人がレオの恋人になったこと。三人まとめて、だ。さすが愛の国。
保護局の三人は常にレオを守るようにしていた。それは、特別な感情からだったようだ。レオの悲しみも孤独も全てわかっていたようだ。あの寂しそうな後姿が愛に満ちた穏やかな後姿に変わっていた。
レオは僕に「ごめん」とつぶやいた。
僕は「レオはお兄ちゃんだよ」と伝えた。レオは少しだけ、泣いた。また日本に来ると言っていた。一緒にご飯でも食べよう、とルイが提案してくれた。
「大丈夫。バレないよ。婚姻届けは嘘だけど、両性保護団体の知恵を借りたんだ。他人の戸籍を見ることは出来ないしね」
「策士だなぁ」
「涼のためならね。はぁ、緊張した」
「え? 緊張していたんだ」
「当然だよ。上手くいかなきゃ涼が危険な状況になるだろ。今日だって、レオはお前の男子宮が成熟したか、触って確かめるところだったんだぞ」
男子宮を、触る? 考えてしまい一気に恥ずかしくなった。と同時に青ざめる。
「あの、僕、大丈夫なの? やられちゃって、ない? に、妊娠は?」
「ばっちり未遂で助け出しました、お姫様」
「ありがとう~~、ルイ!」
笑いながら抱き着く。ルイに抱き着くことも甘えることも、すっかり馴染んでしまった。今ならルイが番鳥と胸を張って言える。
「ね、ルイ。卒業したら本当に結婚しようよ」
がばっと顔を上げて、ルイが僕を見つめる。
「いいの? 俺と結婚してくれるの?」
「いいよ。性的な事も、いいよ。多分ルイなら、大丈夫。僕、ルイのこと、好きだ」
とたんに両頬を大きな手で包まれて、上からキス。あまりに急で驚くけれど、顔を固定されていて動けない。何度も触れるだけのキスを繰り返す。キスと共に、涙が落ちてきて僕の顔を濡らす。待って、と言おうとして開いた口に急に舌がねじ込まれる。
「うぐ~~」
喉の奥で声がこもる。僕の全てを舐めつくす勢いのキス。頭がぼ~っとして、身体の力が抜けたころ、ようやく解放された。荒い呼吸と目線で無言の抗議をする。慌てて僕の顔をタオルで拭うルイ。
「ごめん。ちょっと、我慢がきかないくらい嬉しくて…‥‥」
「うん。すごく、分かった。けど、卒業するまでは、キスまでにして。体調良くなったから男子宮が成熟していると思う。その、性交して妊娠とか、怖い。まだ高校生活楽しみたいし。卒業して大学かな、働くのかな、それも決めてからにしてほしい」
「そうだね。卒業後の生活とお金については心配いらないよ。俺、爺ちゃんの不動産いくつかもらっている。賃貸マンションと立体駐車場もあるんだ。不労収入があるから、困ることないよ」
不労収入? 知らない言葉。
「よく分からない。知らないけど、お金持ちってこと?」
「平たく言うと、そういうこと。ちなみに、この国立学校に来ているほとんどの家庭がお金持ち」
「本当に? 宮下君も?」
「そうだよ。宮下君ちは大きい会社だよ。海外事業も多く手掛けている総合商社の一人息子だよ」
「げっ。お坊ちゃま君か」
「この学校はいい人選しているよ。クラスの人を見ても、皆、家庭環境も人格も良い。ここに来られて良かったよ」
「それは、僕も思う。意見を押し付けてこないし、僕の非常識さも受け入れてくれたし」
顔を見合わせて笑う。
「一番の良かったことは、涼に出会えたこと」
「衝動行為さえなければ完璧だったね」
「それに関しては、ほんと一生頭が上がりません。ごめんなさい」
あはは、と笑いあう。苦しかったことを笑い飛ばせる今の状況が、心から嬉しかった。
藤原ルイはかけがえのない僕の番鳥だ。
一学期終了と共にレオがフランスに帰国した。驚いたのは、いつも護衛についていた三人がレオの恋人になったこと。三人まとめて、だ。さすが愛の国。
保護局の三人は常にレオを守るようにしていた。それは、特別な感情からだったようだ。レオの悲しみも孤独も全てわかっていたようだ。あの寂しそうな後姿が愛に満ちた穏やかな後姿に変わっていた。
レオは僕に「ごめん」とつぶやいた。
僕は「レオはお兄ちゃんだよ」と伝えた。レオは少しだけ、泣いた。また日本に来ると言っていた。一緒にご飯でも食べよう、とルイが提案してくれた。
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