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大賢者、イケメンに出会う1
しおりを挟むすやすやと気持ちよく寝ていると、体が揺さぶられる感触がした。
「お…………起き…………!」
……???
何か、声が聞こえる……?
「おい、起き……って……!」
うん……?なんだ?
「おい!早く起きろって言ってんだろーがァァァァ!」
「うぉぉぉぉぉ!?」
「おわっ!急に起き上がるなよ!」
耳元で鳴り響いた大音量にびっくりして跳ね起きると、目の前には俺の知らない青年が。しかもめちゃめちゃイケメン。
え、俺にこんな知り合いいたっけ……?って、記憶喪失だからいても知らないか……じゃなかった、俺100年間棺の中でおねんねしてたから友達なんて居ないか………………
あれ?今よーく考えてみたら、俺ってば友達ゼロ人のぼっちじゃね?嘘だろー!?
「おい!何1人で顔赤くしたり青くしたりしてんだ。俺が話しかけてるんだよ、聞け!」
「あ、そうでしたすみませんすみません。」
友達ゼロ人という事実がショックすぎて、うっかり目の前のイケメン青年の存在を忘れちまってたよ。
「なんだその適当な返事は……。」
あああやばい、イケメン青年の顔がどんどん鬼みたいに歪んでいく……めちゃめちゃ怒らせちゃってるわ……。
「すみません…………あ、あの、それで、俺になにか用ですかね……?」
何故だかイケメンをすごい怒らせてしまっているが、安眠妨害された俺も少しイライラしている。これでしょーもないこと言ってきたら怒っちまうんだからな!と、心の中でぶつくさ言いながらも耳を貸す。
「ああ、そうだった。お前に言うことがあって俺はここへ来たんだ。
率直に聞くがお前──────大賢者アルバートの居場所を知ってるな?」
え?
「し、しし、知りません!」
ピシ、と固まりそうになるのを必死に抑え、平静を装って答える。
いやいやいやいや、俺じゃん!それ、俺だよ!?普通本人に聞く!?焦って知らないって答えちゃったよ…………って、
いやいや、落ち着け、俺!俺は今姿変える魔道具をつけてるんだった!そりゃあ本人ってわかんないだろうな!
いや~でも、焦って俺です!とか言っちゃわなくてよかったよ!もし、俺が本当に大賢者アルバートだってバレたらゾンビだーとか言われて殺されちゃうかもしれないからね!
いや、でもそれにしても俺の居場所を探してるって、この人一体誰なんだ?何が目的で?
てか普通、死んだはずの俺を探すやつなんて居ないよな……?
俺が生き返ってるって、バレてたりしないよな……?
そこまで考えて、ピンとくる。
(あ、そういえば昨日そのまんまの姿で街中あるいてたわ!ちょっとの間だったけど、その中に俺の事を知ってる人がいたとか!?それで、生き返ってるってバレちゃったのか!?)
や、やばい……!何とかしてこの人の追求をかわさなきゃ……!
と、焦るも待てよ、と冷静になる。
(いや、普通に考えていくら大賢者アルバートである俺を町で見たからって、本人だなんて思うやついる?常識的に考えて誰も俺が生き返ったなんて思考には至らないだろうし…………ってことはあれか!)
俺はついに、ひとつの結論にたどり着いた。
(大賢者アルバートっていう俺と同じ名前の大賢者さんがきっといるんだ!それでその人を探してると。うん、そういうことだろきっと!)
冷静に考えて、活躍(?)したの100年前だしとっくに死んだはずの俺を探してるやつなんているわけないよな~!
あ~焦った!
「そうか……知らない、とシラを切るか………。ふん、まあいい。とぼけても無駄だからな?嘘をついたこと、一生後悔するんだな。」
ニヤリ、と不敵な笑みを向けるイケメン。
え?な、なんで俺が嘘ついてるみたいな状況になってるんすか!?まあ、俺も大賢者アルバートだから嘘ついちゃったけど!いや、でも俺と同じ名前の大賢者アルバートさんなんて知らないし!いるなら出てこいよ俺と同じ名前の大賢者アルバートぉぉぉ!!!
このイケメン怖いよぉぉぉ!!!!!誰か変わってくれぇ~~!
★★★
??side
目の前で焦った顔をしながら嘘をついている男を睨む。
──────ああ、やはりこいつが黒で間違いないな。
心の中で、そう確信する。
俺は今日の朝、この町で会話をしている者から〝大賢者アルバート〟の言葉が聞こえてきて、棺からいなくなってしまったアルバートの居場所を知っているのかもしれないと、その者達に会話内容を聞いた。
すると、驚いたことに昨日、この町の中を歩く大賢者アルバートにそっくりな人間を見たというのだ。
そこで、確信した。ああ、それは棺からいなくなってしまった本物のアルバートで間違いない、と。きっと、ネクロマンサーに操られて動いているのだろうと。
しかし、馬鹿なもんだ。死体を盗んでおいて、町を大っぴらに歩かせるなんて。アルバートを奪ったネクロマンサーはさほどバカに違いない。
さらにその者に詳しく話を聞くと、アルバート似の男は夜遅くに森の中に消えていったらしい。
ならば、森の中にアルバートを隠し持っているネクロマンサーがいるはずだ。
そう頭の中で結論付け、森をしばらく歩いているとすやすやと眠っている、いかにも怪しそうな男がいた。しかもこの男、首に変身魔法が使える魔道具を身につけている。
やはり、怪しい。顔を変えながら眠るなんて、怪しすぎる。何かを隠しているはずだ。
今すぐにでもこの男の首の魔道具を剥ぎ取ってやりたいところだが、魔道具は装着している本人ではないと取り外しができないようになっているのだ。ああ、腹が立つ。
しかも、こいつが黒だと確信した理由はそれだけじゃない─────こいつからは、アルバートの魔力の匂いがするのだ。
常人よりも鼻のきく俺が、魔力の匂いをかぎ間違えることはないと言ってもいいくらいだろう。
何時間も一緒にくっついていなければそうそう、魔力の匂いが他人にうつることは無い。
そういうわけでこの男はもはや、アルバートと直前まで一緒にいた、と公言しているようなものだ。
それなのに焦ったような顔をして嘘をつくこの男。
これらのことを繋ぎ合わせると、確実にコイツは黒。それなのに、それなのに……。全く、腹が立って仕方がない。
ただ、ひとつ不審な点はアルバートの姿が近くに見当たらないことだ。
どこかに隠し持っているのだろうか……?
まあいい。この男をくまなく調べれば、そんなものすぐに分かる。
1日中張り付いてやれば、いつかボロが出るはずだ。
卑劣なネクロマンサーめ。今すぐにその正体を見破ってやるからな!
(大賢者アルバートはもちろん2人もいないです。アルバートくんの勘違いです。ちょっとバカなアルバートくんです。)
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