神様、僕は恋をしました

みつ光男

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Vol. Ⅶ 神の戯れ その1

【それってもしかして】

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 ようやく少しずつ落ち着きを取り戻し始めたミヤさんに
俺は順序立ててことの次第を説明することにした。

が…その前に

「ミヤさん!早く決めよう!お腹すいたー!」

「え~っと悩んじゃうなぁ、ショーちゃんは決まった?」

「俺は味噌バター大盛りと餃子、あとここは炒飯が有名らしくて…」

「え?どれどれ?」

「この“黒い焼き飯”ってやつ」

「えー!どうしよ、あたしも食べたい…でも食べ切れるかなぁ?」

 普段は割りとサバサバしている印象の京だが
以外と優柔不断なことを知った翔成は何だか嬉しかった

これまで見たことのない彼女の一面を垣間見た、
そんな気持ちにさせられたからだ。

京は悩みに悩んでようやく注文までこぎつけた。

 さあ、これからこのお店とゆみちゃんを知った
きっかけを話していくことにしよう。

てっちりがきっかけで始めたブログには
幾つかのコミュニティがあったのだが

その中にTerrifying Chilies推しのサークルがあり
早速そこに加入の申し込みをした。

そして近隣のファン仲間を探していたところ
ゆみちゃんを発見した、と言うわけだ。

「で、色々調べてみたんだ?」

「そう、最初はブログの記事にコメントしたりって感じで」

「“少しずつ仲良くなる作戦”だね、ふふっ」

そして過去に同郷メンバーでもある
Jellyさんが学生時代に来店した話を知り

ツアーの時はお店にも来てくれる…そんな話を聞き
ブログで店内の画像を見ていると
いても立ってもいられなくなり…

「あたしを誘ったってわけね」

「遠いからなかなか言い出せなくて…」

「で…どっちなの?」

「え…?何が」

「本来の目的、はどっち?」

え?ミヤさん、何を言ってるんだろ?
困惑するそんな俺への助け船のように

「はい、お待たせしました、味噌バター大盛り!」

ゆみちゃんの登場のおかげで俺はほんの少しだけ
“考える時間”を手に入れた。

そうか!そう言うことか

ミヤさんはそれは“俺が行きたくて”なのか
“あたしに見せたくて”なのか

その二択を俺に問うことで
俺の気持ちを推し量ろうとしているのでは?

ならば…俺は本当の思いを率直に伝えるべきだ。

「そりゃもちろんミヤさんに…いや、ミヤさんと…」

「あ!おいしい!おいしいよショーちゃん!早く食べてー!」

俺の一世一代の名台詞は
ミヤさんの鶴の一声に書き消された。

ま、いいか、こんなノリがいいんだよな
空腹と戦っていた俺も一心不乱に炒飯をかき込んだ。

 うやむやに終わってしまった“きっかけ”トーク
まだ時間はたくさん残されている、
この話題が出てくる機会はきっとあるはずだ

その時にさっきゲットしたキーホルダーを渡して
それとなく気持ちを伝えよう。

とりあえず今は食べることに集中…


出来ない

とてもじゃないが集中出来ない

目の前で大好きな女性が美味しそうに
ラーメンをすする姿を見て平静を保てるだろうか?

それは無理と言うものだ。

「どしたのショーちゃん?もうお腹いっぱい?」

「いやいや、食べますよ食べますよ」

「ねぇ…」

「な、何?」

「あたし焼き飯全部食べれないんだけど…ショーちゃん食べる?」

「あ、は、はい!食べますとも」

「何でそこで敬語なの?また抜けない?癖が」


いいのか?

ミヤさんが食べ切れない炒飯、俺がもらっても
それって…それっていわゆる…

間接的な…アレじゃないか?

脳内で色んな妄想が駆け巡るのをバレないよう
あくまで平常心を保つ体でひたすら食べ続けていた

その時…


「どう?美味しいかなぁ?」

少し来客が落ち着いて時間が出来たゆみちゃんが
声をかけてくれたことでようやく落ち着きを取り戻した。

このままだと俺の心拍数は
ミヤさんに鼓動が聞こえるくらい高まっていただろう。
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