神様、僕は恋をしました

みつ光男

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Vol. Ⅴ 年の差Fantasy

【たまにはこんな自分を】

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 これは初めてお店で会計をしてもらった
その時からずっと思っていたこと…

だがそんなことをなかなかお願い出来るはずもなく
2度目に見かけた時、そして今日も同様に
ずっと考えていたことだった。

「あのミヤさん…」

「なぁに?」

「マスク…外したとこ見たいんですけど」

俺は勇気を振り絞ってこうお願いした。

 例のウイルスが世に蔓延してからと言うもの
業界はどれだけマスク販売でひと山当てた?ってくらい

仕事中も移動中も、それこそ外出時は食事の時以外
誰も彼もマスクを外した姿を見たことがない

それはある種、あまりにも異様な光景に見えた

なので俺が初めてミヤさんと会った時も
それは例外ではなかった。

そしてミヤさんからの返事は
まるで想像していなかった言葉だった

「ダーメ!」

「え…何でです?」

「全然かわいくないよ、それに…」

「・・・」

「見たらショーちゃん、ガッカリするかも」

ミヤさんは自嘲気味に笑いながら俺を見た

ようやく少しだけ話せるようになったのに
未だ素顔はベールに包まれたまま。

 これもまたこのご時世ならではの功罪なのだろうか?
“マスク美人”なんて言葉も生まれた
イメージはどんどん膨らむが実際に見た時のギャップ

ミヤさんがそんなことを気にしているなんて
少し意外に感じた。

「え?そんなわけないじゃない…じゃないですか」

「あははショーちゃん“じゃない”多すぎ」

「え…?あっ!肝心なところで噛んでしまった」

「あはははは」

まだ笑い続けていた京だったが
ふと我に返ったようにこう言った。

「ねぇ、ちょっと歩かない?」

「あ…はい」

「屋上の駐車場に車、停めてんだ、そこまで」

そして京はおもむろに自販機の前に立つと

「ショーちゃんコーヒーでいい?」

「え…あ、俺、出しますよ」

「いいからいいから」

「あ…炭酸がいいっす」

「やっぱ、若いよね」

そう言ってミルクティーのボタン押した京は
小銭を俺に手渡した

指と指がそっと触れる、

それだけで俺は体の芯が熱くなるような
そんな不思議な感覚に陥った。

「こっちだよー!」

少し先を歩いていた京が俺に手招きをした

駐車場まで一緒で帰りを見送るなんて
まるで…カップルじゃないか
帰り際に手を振って“またね”なんて言ったりして…

そんな俺の妄想がどんどん膨らむ時間すら与えないくらい
この後の京の一言は衝撃だった。

「助手席、乗って」

ーえ!えぇぇぇぇぇ~!

車内でミヤさんと二人きり…いいのか、俺?

「の、乗っていいんですかぁ?」

「うん、ちょっと走りながらお話しよ」

目の前に停車している濃い紫色の軽自動車のドアを開ける

ーうわ…いい匂いがする、うちの車とは大違いだ
これが“女子”ってやつなのか…

たじろぐ俺を気にすることもなく
京は車のエンジンをかけて軽くアクセルをふかした

と、同時にカーステからは当然のように
てっちりの曲が流れ始めた。

「時間大丈夫なんです?」

「うん、5時までに行かなきゃいけないとこあるけど全然大丈夫だよ」

 車は走り出した、ここは俺とミヤさんだけの世界
まさかこんな展開になるなんて

誰が予想しただろうか?

「ど、どこか行くんですか?」

「あ、駐車場で話してたらほら、人目も気になるでしょ、若い男の子誘惑してる、と疑われたら…あははは」

本当に見た目と違って豪快な笑い声だな、ミヤさんは

「た、確かに…でも俺は全然」

「風紀とか割りと厳しくてね、この会社…ほらあたしも一応レジチーフだから」

「チ、チーフ?ミヤさん、エラい人なんですね!」

「全然!ただ昇進試験受かっただけ、だもん」

「それがスゴいんすよ」

走っている間も信号待ちの時も
会話が途切れることはなかった

人見知りな俺にしてはがんばってるぞ!
この時ばかりは自分で自分を褒めてあげたかった。
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