神様、僕は恋をしました

みつ光男

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Vol. Ⅳ 恋愛途上中

【レベル5】

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 ひとしきり笑い続けた“ながの”さんだったが
ようやく我に返ったように俺にこう聞いてきた。

「“さん付け”の方がいい?」

「しばらくの間はそれがいいです」

「じゃミヤさんてどう?」

「ミヤさん、よろしくお願いします!」

「うん、こちらこそよろしくね」

 ふとスマホで時間を確認して驚いた
早くベリーの散歩を終わらせて帰らないと
学校に遅刻してしまう。

「あ、じゃあこれで…後でCDのリスト送りますね」

「はーい!遅刻しないようにね」

「あの…ひとついいですか?」

「なぁに?」

「買い物する目的なら…青洋行ってもいいですよね?」

「もちろん!日常会話くらいなら全然大丈夫だからいつでも来て来て」

「よかった…しっかり線引きしますので」

「ショーちゃんは真面目だね」

「何かそう言うので気まずくなるのイヤなんで…」 

「いいと思うよ、そう言うのわかんない無神経なお客様、意外に多いから」

「あ、あとひとつ…」

俺にはどうしても聞きたいことがひとつあった。

「何でも聞いていいよ」

「“ながの”さん…じゃなくてミヤさんの名前、漢字で書くとどんなんです?」

「あはははは、そんなこと聞くんだ?」

「ほら、俺しか知らない、的な…名札は平仮名じゃないすか」

「ながのは長野県の長野、みやこは京都の京だよ」

「そうなんですね、何かいいですねこう言うの」

「ふふ、今いちわかんないけどショーちゃんがスッキリしたんならよかったね」

「ははは、スッキリしました、じゃまた後でLAIN送りますね」

「うん待ってる、それじゃ」

 ベリーと二人並んでミヤさんの背中を見送る
職員用の通用口に向かいながら
彼女は何度も振り返って俺に手を振ってくれた


こんな気持ち初めてだ・・・

まだ知り合い、友達レベルではあるが
SNSのやり取りが出来たり好きな音楽語り合ったり

これがそうなのか?
こんな感じで恋愛って始まるのだろうか?

“ながの”さんが長野さんになりミヤさんへ…
進化の過程のスピード、半端ないだろ?

ミヤさんのことはまだ何も知らない
彼女にとって俺の存在なんて日常の1コマかも知れない

でも俺にとってはもう一事が万事
過ごす時間全てがミヤさんと何かしらの関わりを
持っているくらいの大きな存在、

昨日までレベル1にも達していなかった
俺とミヤさんの関係性はここで一気に

レベル5あたりまで到達した気になっていた。

ショーくんとミヤさんの物語はようやく
黎明期に突入することになったようだ。

「さ、ベリー、帰ろうか…って!」

 結局用を足してくれなかったベリーの功罪は
ミヤさんとの仲を取り持ってくれたことと
俺の朝食の時間を奪ったこと…

そりゃもちろん前者に感謝すべきだよな

昼休みの教室でミヤさんに例のCDリストを送信しながら
そんなことを考えていた。

"てっちり以外は全然持ってないの、大変だと思うけどお願いね♡"

ーうぉぉぉ!ミヤさんから返信キター!

心の中でガッツポーズをしながら何度も読み返す
返信の末尾にハートマークを見つけ

表情が緩んだ瞬間を待っていたかのように
背中越しに声をかけられた。

「翔成、どした?ご機嫌だな」

声の主は快斗だった。
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