神様、僕は恋をしました

みつ光男

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Vol. Ⅰ ブラッディ・ファントム

【子供だよな】

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…おーい!
これから体育館に行かないかー!

遠くから声が聞こえる
俺に向かって呼び掛けてるのかな?

めんどくさいなぁ…

俺は聞こえないふりをして立ち去ろうとした。

「ちょっと!聞いてんのか?翔成」

「あ、やっぱり…俺のこと呼んでた?」

「“やっぱり”…じゃねえよ、この辺お前以外誰もいないだろ、全く…翔成はいつも音楽のことばっかだよな」

声の主は本田ほんだ快斗かいと、小学校からの幼馴染みで
いわゆる腐れ縁てやつ

何だかんだで高校まで同じところに通っている。

裏表がない性格は悪くないのだが
個人的にはちょっと鬱陶しい

寝ても覚めても女子の話題ばかりなのには
少々辟易している。

彼にもそろそろそのことに気付いてほしいくらいだ。


「で…何なの?俺、急いでんだけど」


「来月、クラスマッチあるの知ってんだろ?」


あぁ…そう言えば盛り上がってるなぁ

俺、キライなんだよな
クラスで一致団結してがんばろう、的な

あの独特の空気感。

「え…どうでもいいよ」

「どうでもいいわけないだろ!女子の競技知ってっか?バレーボールだぞ!」

「だから何なんだよ」

ー あのさ…バレーってジャンプするだろ?

「そりゃするよね、スポーツなんだから」

「その時のさ…」

「何だよ?」

「だから…そん時、ほら…」

自分の胸の辺りに手を置き大きく揺さぶる快斗
それを見た翔成は呆れ顔で

「だから何だよ?」 

「お、オレにそれ以上言わせんのかよ…!だ、だからさ、女子の…胸が…さ」

快人はそう言いながら自分の胸に手を当てがって
何度も飛び跳ねてみせた

「揺れるんだよ!」

「はいはい、それが見たいってことね」

「お前ってヤツは…」

「いや…俺はいいや」

「興味ないのかよ、女子に!」

あぁ面倒くさい…そんなことより今日は俺
早く行きたいとこ、あるんだよな…

「単刀直入に聞くぞ、行くか?行かないのか?」

「じゃあな…」

「全く…相変わらずだな翔成は」

「相変わらずで結構、じゃ、急いでるんで」

「後で報告してやるからなー!後悔すんぞ」

「はいはい」

快斗の遠吠えを背中で受け止めながら
俺は校門の方へと向かった。


胸が…胸が…!って
本当に子供だよな、快人の奴

女子の胸が揺れるの見てどうだってんだよ…

だが思春期の男子の心情としてはおそらく
快人の方が健全かつ正解なのだろう

でも俺はそこに何かしら魅かれるものを感じない。

 10月の終わり、少しずつ日の傾きが早くなる
夕方の4時半をまわった頃

街路樹が少しずつ色づき始めた並木道
冬の始まりを予感させる少し冷たい風に背中を丸め

通行人とすれ違う度に落ち葉が
パリパリと踏みしだかれる音をBGMに

俺は少し早足で家路へと急いだ。
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