僕の彼女はアイツの親友

みつ光男

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Act 35. 檄

【針の筵からの修羅場】

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 いつもの穏やかな表情で美月は尋ねた。

「隣、座ってもいい?」

「え、あ、いいよ…」

気づけば美優も席を外していた

どちらか二人との2ショット、
これこそ僕が最も恐れていた展開だったが

こうなることは想定内だった。

こんな時に積極的に動くとしたら美月だろう

煌子の性格的に絶対人目の多いところで
目立つ行動はしないだろう、と。

が、その先の対処法を思い浮かぶ前に
この時を迎えてしまったのは致命的だった。

「高村くん…」

「や、やぁ、美月」

「こんな席だから今日は勉強の話とかは無し、ね」

「そ、そうだね」

 美月はしっかり周りの空気を見据えている
それでいてこの状況を作り出す

これは以前から感じていたのだが
美月は天然とか空気が読めない、のではなく

無意識のうちに用意周到な予防線を張り巡らせて
身動きできないようにさせる
これは彼女独自のテクニックなのだろう。

 既に僕はそこから逃げることも抗うことも
出来なくなっていた。

ここの席だけが妙な色のオーラで溢れている。

僕はただそこにいるだけ
もうどうすることもできない…

これまで美月と二人で過ごした
何とも言えないふわふわとした時間は

後ろめたさと心地よさの同居した
背徳感に支配されていた。


逃げられない・・・

その刹那、
沈黙を破るかのような大きな音がした。

隣か近くの席で酔っぱらいが騒ぎでも始めたのだろうか?

「ちょっとー!誰か止めて!」

何の騒ぎだろうと声のする方に目をやろうとした
その時だった。


バシッ!

背中に痛みと衝撃を感じた。


振り返るとそこには


「バカッ!タカムラのバカ野郎!!」

何と僕の後ろには煌子が鬼の形相で仁王立ちしていた
しかも、いつもと様子が違う。

「アタシがどんだけ悩んだと思ってんの!
この裏切り者がっ!」

そう言いながら煌子は手に持っていたおしぼりを
僕に向けて何度も何度も叩きつけた。
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