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Act 33. 誰が為に
【過去との戦い】
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これまで僕が美月と話していても
気に留める様子もなく
今や席も離れてしまっている煌子が
"甲斐"と言う名が聞こえた途端
恐ろしいほどの勢いで振り返った。
あまりにも鬼気迫る表情で僕を凝視する煌子と
目を合わせることが出来ず僕は視線を落とした。
煌子に背を向けた状態だった美月は
気にせず話し続けた。
「もうほとんどわからないけど、ここをね…」
美月が見せてくれた右腕には
微かに傷が縫合された痕が残っていた。
詳しくは聞かなかった、
おそらくよほど辛い思いをしたのだろう。
「もしかしたらそいつがまた…」
「だとしたら、私は何もしてあげられない…あの時も…そうだったから」
「なるほど、そう言うことか…なるほどねぇ」
「まさか、高村くん…?」
「俺もさ、昔は色々あってね」
「何となく…聞いてる、だから煌子は私に
高村くんのことちょっと待って、って言ったんだと思うんだ」
「その話はまた、そのうち」
「うん、わかった」
この日はこれまでだった、
そして僕は珍しく一人で下校していた。
ようやく何となくではあるが
少しずつ事情が飲み込めてきた。
要は一人、面倒くさいヤツが間にいると言うことだ。
もしかしたらそこにトモキも
一枚噛んでるのかも知れない。
それなら煌子がトモキの名前を出すと
表情が曇るのも合点がいく、
遂に点と点がひとつの線で繋がり始めた。
その時、背後に誰かが近づく気配を感じて
振り返ると
そこにいたのは
煌子だった。
息を切らしながら煌子はこう言った
「タカムラ!ダメ、ダメだよ!あいつと関わっちゃ!」
気に留める様子もなく
今や席も離れてしまっている煌子が
"甲斐"と言う名が聞こえた途端
恐ろしいほどの勢いで振り返った。
あまりにも鬼気迫る表情で僕を凝視する煌子と
目を合わせることが出来ず僕は視線を落とした。
煌子に背を向けた状態だった美月は
気にせず話し続けた。
「もうほとんどわからないけど、ここをね…」
美月が見せてくれた右腕には
微かに傷が縫合された痕が残っていた。
詳しくは聞かなかった、
おそらくよほど辛い思いをしたのだろう。
「もしかしたらそいつがまた…」
「だとしたら、私は何もしてあげられない…あの時も…そうだったから」
「なるほど、そう言うことか…なるほどねぇ」
「まさか、高村くん…?」
「俺もさ、昔は色々あってね」
「何となく…聞いてる、だから煌子は私に
高村くんのことちょっと待って、って言ったんだと思うんだ」
「その話はまた、そのうち」
「うん、わかった」
この日はこれまでだった、
そして僕は珍しく一人で下校していた。
ようやく何となくではあるが
少しずつ事情が飲み込めてきた。
要は一人、面倒くさいヤツが間にいると言うことだ。
もしかしたらそこにトモキも
一枚噛んでるのかも知れない。
それなら煌子がトモキの名前を出すと
表情が曇るのも合点がいく、
遂に点と点がひとつの線で繋がり始めた。
その時、背後に誰かが近づく気配を感じて
振り返ると
そこにいたのは
煌子だった。
息を切らしながら煌子はこう言った
「タカムラ!ダメ、ダメだよ!あいつと関わっちゃ!」
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