僕の彼女はアイツの親友

みつ光男

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Act 05. 融和揺籃

【呼び捨てファンタジー】

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 今、二人で話したように
僕と煌子はいつも大体似たような順位だった。

学年で20番前後、よくも悪くもない
そんな当たり障りのないポジション。

「アタシなんてさ勉強やってもやらなくてもそんなもんだから」

「じゃあさ…」

「何?」

「対決する?」

「対決? テストで?」

「そう、今度の中間で順位が上だった方が…」

「…あ、アタシ、バイキング食べに行きたい!奢ってよ、もしアタシが勝ったら」

 バイキング?・・・バイキング行きたいって
一緒に外食するってこと?

意外な返答に僕は返す言葉を失ってしまった。

ようやく親しく話せるようになったとは言え
それはついさっきのことだ、

まさかそこまで話が進展するとは
思いもよらなかった。

「その代わり、田中さんが負けたら…」

「じゃ負けないよ…あ、あと"田中さん"は
やめてくれない?」

「でも…何か」

「よそよそしいのキライなんだ」

ー 今まで散々よそよそしかったじゃないか?

その言葉を僕は飲み込みながら

「じゃ、何て呼べばいい?」

「別に呼び捨てでいいよ、『コウコ』でいいから」

 煌子は女子仲間からは「コウコ」
または「こっちゃん」と呼ばれていた。

「コウコ…ね、あ、煌子こうこって読むんだ?」

「何?もしかして今知ったの?アタシの名前!」

「うそうそ、知ってたよ」

「もう!」

「じゃ俺は…?」

「タカムラ、でいいでしょ?」

「俺は名字かよ」

「タカムラだもん」

こんな会話がひとしきり続き
気がつけば次の時間の始業のチャイムが鳴っていた。

休憩時間、席を立たずに煌子と話したのは
おそらくこの日が初めてだった。

次の授業がどんな内容だったか全く覚えていない、
僕の心の中は既に煌子とバイキングに行っていた。

そして僕は思った、
もういいのか?呼び捨てして…

田中さんじゃなくて・・・煌子って。
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