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その壱.幼少期編
【祖母の家の謎】
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私が幼少期を過ごしたH県の山あいにある田舎町、
自宅から歩いて数分のところに
祖母の家、つまり私の父親の生家があり
後年は病気で入退院を繰り返したが
元気だった頃、祖母はそこで暮らしていた。
年に数回、特にお盆や正月には
家族で祖母の家を訪ねて焼き肉をしたり
豪華な料理を振る舞ったりしていたのだが
その家の外観も内装もとても古風で
子供には少し不気味ですらあった。
まず家に行くには道路から古びた橋を渡って
川を越えなければならない。
そしえ家庭菜園と呼ぶにはおこがましい
密林のような玄関をくぐると
入り口には剥き出しの蛇口があり
そこには花や野菜が水に浸されていたりする。
玄関は冬以外は基本開けっ放し
蛇でもトカゲでも何でもござれ、と
言わんばかりの解放感。
実際、野ねずみを狙って蛇が侵入、
なんてことが何度かあったらしい。
中に入ると広々とした空間、
いわゆる土間のようなスペースがあり
そこに台所、ドアで仕切られた物置部屋
その奥に古びたお風呂がある。
物置部屋では各種漬け物が作られていて
ぬかの独特の風味が部屋全体に漂う
そして土間を昇ると8畳ほどの部屋がひとつ
テレビ、ラジオなどが備え付けてあり
ここが祖母の居住空間。
家の真裏は小高い丘のような形状の
いわゆる崖のような急斜面、
川のある方角には縁側があり
そこから竿を投げて釣りをすることも可能。
縁側に吊るしていた鳥籠の中のインコが
蛇の襲撃に遇い捕食シーンを目撃したこともあった。
そしてその奥にはトイレ、これが祖母の家なのだが
ある時私は気づいてしまった…
土間の奥に2階へと続く階段があることを。
その2階の部屋はあまりにも狭く
部屋の入り口が布団で塞がれた
いわゆる"開かずの間"だった。
汚いから、埃がひどいから
などの理由でその奥に行くことを止められた。
それだけではない
「2階は出るんやで…」と脅された。
何かが出る…?それは言うまでもなく
心霊的な何かだろうと思ったが
大人になってふと考えた時
2階は祖父母の寝室だったのでは?と
祖父は20代で戦死したため
私は白黒写真でしか見たことはないが
父親と父親の兄の二人を授かっていた。
もしかしたら2階は夫婦の夜の営みの場所で
そこに入られるのが聖域に踏み込まれるようで
行かせなかったのでは?
などと考えたりもした。
実際のところはそれが事実であったか
確かめることは出来なかったが
もしかしたら祖母は人知れず
この部屋に現れるこの世を去った愛しい人の幻と
夜毎、逢瀬を交わしていたのかも知れない。
ちなみに拙作「夢の現実の境界線のようなモノ」で
主人公の母親が暮らしていたあばら家は
この祖母の家がモデルとなっています⬇️
https://www.alphapolis.co.jp/novel/808072706/335575134
「夢と現実の境界線のようなモノ」
第3章 夕焼けのブランコ「既視感」
自宅から歩いて数分のところに
祖母の家、つまり私の父親の生家があり
後年は病気で入退院を繰り返したが
元気だった頃、祖母はそこで暮らしていた。
年に数回、特にお盆や正月には
家族で祖母の家を訪ねて焼き肉をしたり
豪華な料理を振る舞ったりしていたのだが
その家の外観も内装もとても古風で
子供には少し不気味ですらあった。
まず家に行くには道路から古びた橋を渡って
川を越えなければならない。
そしえ家庭菜園と呼ぶにはおこがましい
密林のような玄関をくぐると
入り口には剥き出しの蛇口があり
そこには花や野菜が水に浸されていたりする。
玄関は冬以外は基本開けっ放し
蛇でもトカゲでも何でもござれ、と
言わんばかりの解放感。
実際、野ねずみを狙って蛇が侵入、
なんてことが何度かあったらしい。
中に入ると広々とした空間、
いわゆる土間のようなスペースがあり
そこに台所、ドアで仕切られた物置部屋
その奥に古びたお風呂がある。
物置部屋では各種漬け物が作られていて
ぬかの独特の風味が部屋全体に漂う
そして土間を昇ると8畳ほどの部屋がひとつ
テレビ、ラジオなどが備え付けてあり
ここが祖母の居住空間。
家の真裏は小高い丘のような形状の
いわゆる崖のような急斜面、
川のある方角には縁側があり
そこから竿を投げて釣りをすることも可能。
縁側に吊るしていた鳥籠の中のインコが
蛇の襲撃に遇い捕食シーンを目撃したこともあった。
そしてその奥にはトイレ、これが祖母の家なのだが
ある時私は気づいてしまった…
土間の奥に2階へと続く階段があることを。
その2階の部屋はあまりにも狭く
部屋の入り口が布団で塞がれた
いわゆる"開かずの間"だった。
汚いから、埃がひどいから
などの理由でその奥に行くことを止められた。
それだけではない
「2階は出るんやで…」と脅された。
何かが出る…?それは言うまでもなく
心霊的な何かだろうと思ったが
大人になってふと考えた時
2階は祖父母の寝室だったのでは?と
祖父は20代で戦死したため
私は白黒写真でしか見たことはないが
父親と父親の兄の二人を授かっていた。
もしかしたら2階は夫婦の夜の営みの場所で
そこに入られるのが聖域に踏み込まれるようで
行かせなかったのでは?
などと考えたりもした。
実際のところはそれが事実であったか
確かめることは出来なかったが
もしかしたら祖母は人知れず
この部屋に現れるこの世を去った愛しい人の幻と
夜毎、逢瀬を交わしていたのかも知れない。
ちなみに拙作「夢の現実の境界線のようなモノ」で
主人公の母親が暮らしていたあばら家は
この祖母の家がモデルとなっています⬇️
https://www.alphapolis.co.jp/novel/808072706/335575134
「夢と現実の境界線のようなモノ」
第3章 夕焼けのブランコ「既視感」
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