世にも普通の物語

その壱．幼少期編

【燕の雛 ①】

　少し怖い感じの話が続いたので
このあたりで気分転換に別のテーマで。


これは私が小学校中学年の頃の話だ、
クラスの女子が一羽の燕の雛を教室に連れてきた。

どうも学校にある巣から落下したのか？
飛び降りようとしたのか？

１羽だけが地面にいたのだと言う。

「どうしよう、この燕…」

　ここで私が最初に世話係を買って出た、
そしてこの後は持ち回りで交代しながら
面倒を見ていこうと言う話になった。

実はこのエピソードは
拙作「僕の彼女はアイツの親友」の
回想シーンで出てくる実際の体験談です。

あの作品には幾つかこのような実体験が存在します。

さて本編に戻ります…
私が雛を連れ帰ると早速始めたのが餌の調達

燕の雛の食欲は凄まじく親鳥は寝る間も惜しんで
餌を持ち帰り雛に与える。

長時間、間隔が空いてしまうと空腹で
すぐに死んでしまう、

そんなことを本で読んだことがあった。

私が餌として探したのが
チャバネヒゲナガカワトビゲラと言う
カゲロウの仲間の羽虫。

この虫は小学校の校舎の壁でよく見かけ
釣りの餌として重宝していた、

最も魚がよく釣れる餌だった。

ならば鳥の餌としても栄養価が高いのでは？
と、小学生なりに考えての選択だった。

それこそ虫かごいっぱいにその虫を捕まえた、
そして雛鳥の食欲は凄まじく

ピンセットで一匹ずつ与えていくのだが
見る見るうちに虫かごの中身が減ってゆく。

今でこそミルワームやコオロギと言った生き餌が
ペットショップで売られているが
私の暮らす街は田舎でまずお店が近くにない

トビゲラだけでは足りない、と
私は裏庭の土を掘り返しミミズを探した

ミミズも釣りの餌としてこれまで何度も
重宝してきた

裏庭で捕り尽くすと次は祖母の家の裏
ここで祖母が土を掘り返してはミミズを
捕まえてくれたものだ。

そして捕まえたミミズを細切れにして
トビゲラと交代で与えてゆくのだが

しかしまだ時間は夕刻、

この調子で食べ続けるのであればとても深夜までもたない

雛は夜、寝るのだろうか？
それとも一晩中際限無く食べ続けるのか？

幼鳥を育てた経験の無い私にとっては
全てが未体験ゾーンであった。