僕とあの娘

みつ光男

文字の大きさ
上 下
128 / 129
Epilogue.  Longer than Forever

【ふたつがひとつに】

しおりを挟む
「ムラコウ…起きて、ねぇムラコウ」

遠くから誰かに呼ばれたような気がしてふと我に返ると

隣には一糸纏わぬ姿で岸田美波が
悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

ー ヤベっ!またやらかしたのか?俺、

舞と言う彼女がいながら懲りずにまた美波と…
何と言う不謹慎な男なのだろう

こんなことばかりしてたら夢の中だけじゃなく
リアルな舞もさすがに僕の所から去ってしまう

全く何やってんだよ…
自己嫌悪に陥りかけたその刹那

「コウイチくん!コウイチくんたら、起きて!」

舞の声がする
こんなとこ見られたら終わりじゃないか…

「舞、ごめんな!もうこんなこと…!」

ー ん?どうしたのコウイチくん?

視界に飛び込んできたのは
きょとんとした顔で僕を起こす舞だった。

「夢かぁ、何だよホントに」

「ふふっ、どんな夢見てたの?舞ちゃんに言ってごらん」

「あ、いや、変な夢じゃないから、さ」

「どうだか?」

「ホントだって」

「じゃあ、んっ…」

おどけた表情で目を閉じて唇を寄せてくる舞、
これが僕たちの日常だ。

しかし最近ヤラしい夢ばかり見るな…

舞とは実習続きでなかなか会えなかったし
きっと欲求不満がピークなんだ、こんな日は…

僕は布団の中から舞の背中に手を回して
抱き寄せようとした。

「もう!コウイチくんったら!わたし、昨日からでしょ!」

「だからいいんだよ、こんな日は二人で過ごそう血まみれの休日を、はははっ」

「もう!バカなんだから!最近に似てきてるよ、ほんっと!」

その時、玄関の扉が開くや否や
せっかちな足音がしたかと思うと
僕の部屋の前で止まった。

「ほら、来たよ、コウイチくんを見初めたが」

コンコン!

足音の割に穏やかなノックが僕の部屋の扉に響く。

「コウイチくーん、起きてるかーい?」

「あ、今起きたとこでぇす」

「あ、その声は舞ちゃんだね?来てるの?」

「だってこの人、一人だと起きれないんですもん」

「じゃ入るよ」

「あっ!コウさん、おはよーございます」

彼の名は


高村コウ


退院後、僕が突然バンド系サークルを退部して
音楽から疎遠になりかけていた頃

突然現れた大学の先輩だ。

「おっ?舞ちゃん、今日もかわいいじゃないすか、これからデートかな?」

「はい、そうなんです」

「俺にもかわいい看護学生紹介してくれない?」

「もう!いいんですか?そんなこと言って、煌子さんに全部話しますよ!」

「あ、いや、それは、それだけは…煌子がどんだけ怖いか知らないだろ?」

「しかしコウさんがそんだけビビる彼女さん、見てみたいですね」

「しかし不思議だよなぁ、まさか舞ちゃんが俺や煌子と同じ高校に通ってたなんて」

「ほんと、ビックリですよ」

「しかもだよコウイチくん、舞ちゃんは俺の後輩と同じクラスだったんだから」

「そうなんですか?」

「あ、バスケ部の岩田…ですね?めちゃめちゃかわいい年上の彼女さんがいますよね?」

「そ!由里ちゃんね、それが煌子の友達なんだよな。ま、それもこれも縁ってわけだ、あ、これ、今度演る曲の楽譜、よろしくなコウイチ」

「了解っす」

舞や鴻一と親しげに話す彼は一体何者なのか?

その件についてはまたいつか機会を設けて
話すことになるだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。 そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。 そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

闇鍋【一話完結短編集】

だんぞう
ライト文芸
奇譚、SF、ファンタジー、軽めの怪談などの風味を集めた短編集です。 ジャンルを横断しているように見えるのは、「日常にある悲喜こもごもに非日常が少し混ざる」という意味では自分の中では同じカテゴリであるからです。アルファポリスさんに「ライト文芸」というジャンルがあり、本当に嬉しいです。 念のためタイトルの前に風味ジャンルを添えますので、どうぞご自由につまみ食いしてください。 読んでくださった方の良い気分転換になれれば幸いです。

処理中です...