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第26章. 夢の続き
【醒】
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「えっ?その麦わら帽子?」
僕の声を聞いた隣に立つその人の肩が小刻みに震えた。
「うそ…」
そしてその聞き慣れた声を耳にした時
僕は咄嗟に釣り竿を手にしたまま振り返った。
「もしかして・・・」
「…えっ・・・コ、コウイチくん?」
こんなことって…
時に神様は運命のいたずらを仕掛けるのが好きなようだ。
「ま、舞…舞が何でこんなとこに?」
「だ、だってわたしの家、すぐそこだもん」
海はいい
思い出だけじゃなくて
こんな奇跡もごく稀に引き起こしてくれる。
舞は突然海を指差した。
「あっ!コウイチくん、ほら!浮きが消えてる!」
「おぉ~、これは絶対に大物だぁ!」
…これで僕はテレビや雑誌で
"まい"と言う名前を耳にすると胸が少し痛くなる
そんなトラウマから
開放されることになるのだろうか?
その答えは気まぐれな神様のさじ加減ひとつ、
と言うことになるのだろう。
♪あたたかいぬくもりも優しい口づけも
いらないから俺を許してほしい
二人のあの部屋は今まで忘れてた
幸せな時だったのかも知れない
きっといつかどこかで会えるさ
きっといつかどこかで会えるさ♪
あの頃二人で聴いていた曲がふと頭をよぎった。
ラブソングみたいな恋をしてみたい?
いやもうそんなのはうんざりだ
当たり前のように過ぎて行く毎日の中に
大切な人がひとりいてくれればそれでいい。
― 舞、やっと僕は気付いたよ
何をするにも君が隣にいてくれなければ
楽しくないしやり甲斐もないんだって
だから、だから、これが最後のチャンスだとしたら
僕はもう君を悲しませたりはしないから・・・
「…コウイチくん!コウイチくん!!」
ふと気が付くとそこには心配そうな表情で
涙ぐみながら僕を覗き込む舞の姿があった。
涙交じりの舞の声が
うっすら意識が戻り始めた僕の鼓膜を刺激した。
「先生っ!コウイチくんが!コウイチくんが目を覚ましました!!」
「舞!よかったね!」
「さ、咲良…よ、よかったぁ、あぁ…」
「舞!しっかりして」
一体…何が起きてるんだ?
病室の枕元に置かれたCDプレイヤーからは
ジッタリン・ジンの曲が流れ
その隣には東京少年のCDが置かれていた・・・
そして数時間後、僕は完全に意識を取り戻し
リクライニング型のベッドに座った状態で
話が出来るくらいにまで回復していた。
咲良が僕を見てこう言う
「ビックリしたんだから、ホントに!」
「え?あの日のこと?」
そう、僕が女装させられて女子寮に潜入した
夜のことを思い出した。
…ってことは、まだ今は大学2年の秋なのか?
すると目の前に座った咲良がゆっくりと
ことの次第を話し始めてくれた。
ー あの日、ナカムラくんから連絡がなかったから
2人とも心配になってさ
次の日、舞から預かったお弁当を持って
うちが部屋を訪ねたら
普通に話してくれたから
あ、大丈夫なんだと思って帰ろうとしたら
うちを見送ろうと立ち上がったナカムラくんが
そのまま倒れて意識を失っちゃって…
「そこまでは何か覚えてるな、その後
さくちゃん、オレの熱計らなかった?」
「そんな余裕ないよっ!もうこれは危ないと思って救急車呼んだら搬送された病院がたまたま舞の実習してるとこで…」
ーで、俺は何日くらい意識が?
「まるまる2日間、昏睡状態で」
舞が枕もとで音楽流してあげて、って言うから
勝手にナカムラくんの部屋から
CD何枚か持ってきてかけてたんだけど…
全然反応なくてね
「で、さっきたまたま舞が持ってたこのCDを流したら…」
「あ、これ、俺とレンタル行った時に…舞が借りてた・・・」
「体が少し動いて…ぅぅ、2曲めくらいから
数値が戻ってきて、ね…」
「2曲目…?『シンキー・ヨーク』か!あ、さくちゃんが歌ってたやつだ」
「え?うちは知らないんだけど」
「え、『玉の湯』に行った時…?」
「玉ぁ~?何それ?何かヤラしい名前~!」
「下ネタやめなさい」
そう言えば咲良はあの時も同じこと言っていた
ってことはあれは夢…だったのか?
僕の声を聞いた隣に立つその人の肩が小刻みに震えた。
「うそ…」
そしてその聞き慣れた声を耳にした時
僕は咄嗟に釣り竿を手にしたまま振り返った。
「もしかして・・・」
「…えっ・・・コ、コウイチくん?」
こんなことって…
時に神様は運命のいたずらを仕掛けるのが好きなようだ。
「ま、舞…舞が何でこんなとこに?」
「だ、だってわたしの家、すぐそこだもん」
海はいい
思い出だけじゃなくて
こんな奇跡もごく稀に引き起こしてくれる。
舞は突然海を指差した。
「あっ!コウイチくん、ほら!浮きが消えてる!」
「おぉ~、これは絶対に大物だぁ!」
…これで僕はテレビや雑誌で
"まい"と言う名前を耳にすると胸が少し痛くなる
そんなトラウマから
開放されることになるのだろうか?
その答えは気まぐれな神様のさじ加減ひとつ、
と言うことになるのだろう。
♪あたたかいぬくもりも優しい口づけも
いらないから俺を許してほしい
二人のあの部屋は今まで忘れてた
幸せな時だったのかも知れない
きっといつかどこかで会えるさ
きっといつかどこかで会えるさ♪
あの頃二人で聴いていた曲がふと頭をよぎった。
ラブソングみたいな恋をしてみたい?
いやもうそんなのはうんざりだ
当たり前のように過ぎて行く毎日の中に
大切な人がひとりいてくれればそれでいい。
― 舞、やっと僕は気付いたよ
何をするにも君が隣にいてくれなければ
楽しくないしやり甲斐もないんだって
だから、だから、これが最後のチャンスだとしたら
僕はもう君を悲しませたりはしないから・・・
「…コウイチくん!コウイチくん!!」
ふと気が付くとそこには心配そうな表情で
涙ぐみながら僕を覗き込む舞の姿があった。
涙交じりの舞の声が
うっすら意識が戻り始めた僕の鼓膜を刺激した。
「先生っ!コウイチくんが!コウイチくんが目を覚ましました!!」
「舞!よかったね!」
「さ、咲良…よ、よかったぁ、あぁ…」
「舞!しっかりして」
一体…何が起きてるんだ?
病室の枕元に置かれたCDプレイヤーからは
ジッタリン・ジンの曲が流れ
その隣には東京少年のCDが置かれていた・・・
そして数時間後、僕は完全に意識を取り戻し
リクライニング型のベッドに座った状態で
話が出来るくらいにまで回復していた。
咲良が僕を見てこう言う
「ビックリしたんだから、ホントに!」
「え?あの日のこと?」
そう、僕が女装させられて女子寮に潜入した
夜のことを思い出した。
…ってことは、まだ今は大学2年の秋なのか?
すると目の前に座った咲良がゆっくりと
ことの次第を話し始めてくれた。
ー あの日、ナカムラくんから連絡がなかったから
2人とも心配になってさ
次の日、舞から預かったお弁当を持って
うちが部屋を訪ねたら
普通に話してくれたから
あ、大丈夫なんだと思って帰ろうとしたら
うちを見送ろうと立ち上がったナカムラくんが
そのまま倒れて意識を失っちゃって…
「そこまでは何か覚えてるな、その後
さくちゃん、オレの熱計らなかった?」
「そんな余裕ないよっ!もうこれは危ないと思って救急車呼んだら搬送された病院がたまたま舞の実習してるとこで…」
ーで、俺は何日くらい意識が?
「まるまる2日間、昏睡状態で」
舞が枕もとで音楽流してあげて、って言うから
勝手にナカムラくんの部屋から
CD何枚か持ってきてかけてたんだけど…
全然反応なくてね
「で、さっきたまたま舞が持ってたこのCDを流したら…」
「あ、これ、俺とレンタル行った時に…舞が借りてた・・・」
「体が少し動いて…ぅぅ、2曲めくらいから
数値が戻ってきて、ね…」
「2曲目…?『シンキー・ヨーク』か!あ、さくちゃんが歌ってたやつだ」
「え?うちは知らないんだけど」
「え、『玉の湯』に行った時…?」
「玉ぁ~?何それ?何かヤラしい名前~!」
「下ネタやめなさい」
そう言えば咲良はあの時も同じこと言っていた
ってことはあれは夢…だったのか?
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