122 / 129
第25章. 陽の当たる坂道で
【Love you so long】
しおりを挟む束の間の再会ではあったが
それは学生生活の掉尾を飾るにふさわしい
夢のような時間だった。
舞と離れ、途中から真っ暗になったキャンパスライフ
まさか最後の最後にこんなことがあるなんて
恋愛の神様が作ったシナリオは
エンディングに粋な計らいをしてくれた。
「そう言えば…3人が一緒なの、初めて?」
「だよね?」
「最後の最後に夢の組み合わせが実現したね」
咲良と有香が賑やかに話す様子を
僕の隣で穏やかな笑みを浮かべながら見ている舞
こんな時間、いつ以来だろうか?
思えば僕は何故、あの日すぐに
舞のことを追いかけなかったのだろうか?
あの頃は"諦めの良さ"を"潔い"と思っていた?
例えどんなに無様でも僕は舞のことを探して見つけ出し
訳を聞くなり話すなりして
解決することも出来たのではないだろうか?
今の舞を見ていると尚更そう思う。
だがそれも今となってはどうすることも出来ない
ただひとつ言えるのは舞のために僕は
もっと考え、行動すべきだった。
この先、もう二度と舞と出会う未来は
ないのだろうか?
大学の最後の日に会えたことは
確かに嬉しくはあったものの
僕たちがいつかどこかで再会できるなんて
不確かな約束を誰が信じられるだろうか?
やはり今日、会うべきではなかったのか?
かと言ってここで連絡先を聞くなんて
今の僕にはそんな勇気はないし
何かしらの運命めいたものに期待するほど
僕の脳はそこまで単純で楽観的ではない
そんな後悔を残しつつしばしの再会は終わった。
別れ際、舞が僕の耳元で囁く
「コウイチくん…またね」
「…うん」
それ以上の言葉が出てこなかった
それでいい
叶うかどうかわからない再会の約束は
今、すべきではない。
「舞…忘れないから」
「うん…コウイチくん」
正確すぎる時刻表はあまりにも無情だ、
冗談抜きでこの日だけダイヤが大幅に
乱れてくれればいいと思った。
どんなに別れを惜しもうとも
その時間には別れを選ぶしか術はないのだから。
定刻通り、駅に到着した電車に乗って
僕はこの街を後にする
去る者の悲しみ、残された者の寂しさ
どちらも天秤にかけたなら
今日なら同じバランスで釣り合ってしまうだろう。
そんな二人が何故、別れを選択したのだろう?
それが二人に与えられた運命だった、のかも知れない。
電車の窓から見える花畑はあの日のままだった
走り出した電車が大きな橋を渡ると
もう手を振る舞の姿が豆粒ほどにしか見えなくなる。
涙が溢れた・・・
舞もそうであってほしい
そんなことを考えている間に
僕はすっかり眠りについてしまったらしい
気づけば外は真っ暗で
降車するはずの駅はすぐそこだった。
前日、一睡もしていないからとは言え
人はどんなに切なくとも悲しくとも
自分の欲求には逆らえないものだ
だからこそ今、僕はこうして一人なのだろう。
さようなら、舞
素敵な思い出と悲しい記憶が混在する
僕の大学時代はこうして幕を閉じた。
これからは社会人の一員となって
忙しい毎日に追われることで
少しずつ舞のことすら忘れていくのだろうか?
もしこの先、別の誰かを好きになるのであれば…
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
もしもしお時間いいですか?
ベアりんぐ
ライト文芸
日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。
2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。
※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる