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第25章. 陽の当たる坂道で
【Love you so long】
しおりを挟む束の間の再会ではあったが
それは学生生活の掉尾を飾るにふさわしい
夢のような時間だった。
舞と離れ、途中から真っ暗になったキャンパスライフ
まさか最後の最後にこんなことがあるなんて
恋愛の神様が作ったシナリオは
エンディングに粋な計らいをしてくれた。
「そう言えば…3人が一緒なの、初めて?」
「だよね?」
「最後の最後に夢の組み合わせが実現したね」
咲良と有香が賑やかに話す様子を
僕の隣で穏やかな笑みを浮かべながら見ている舞
こんな時間、いつ以来だろうか?
思えば僕は何故、あの日すぐに
舞のことを追いかけなかったのだろうか?
あの頃は"諦めの良さ"を"潔い"と思っていた?
例えどんなに無様でも僕は舞のことを探して見つけ出し
訳を聞くなり話すなりして
解決することも出来たのではないだろうか?
今の舞を見ていると尚更そう思う。
だがそれも今となってはどうすることも出来ない
ただひとつ言えるのは舞のために僕は
もっと考え、行動すべきだった。
この先、もう二度と舞と出会う未来は
ないのだろうか?
大学の最後の日に会えたことは
確かに嬉しくはあったものの
僕たちがいつかどこかで再会できるなんて
不確かな約束を誰が信じられるだろうか?
やはり今日、会うべきではなかったのか?
かと言ってここで連絡先を聞くなんて
今の僕にはそんな勇気はないし
何かしらの運命めいたものに期待するほど
僕の脳はそこまで単純で楽観的ではない
そんな後悔を残しつつしばしの再会は終わった。
別れ際、舞が僕の耳元で囁く
「コウイチくん…またね」
「…うん」
それ以上の言葉が出てこなかった
それでいい
叶うかどうかわからない再会の約束は
今、すべきではない。
「舞…忘れないから」
「うん…コウイチくん」
正確すぎる時刻表はあまりにも無情だ、
冗談抜きでこの日だけダイヤが大幅に
乱れてくれればいいと思った。
どんなに別れを惜しもうとも
その時間には別れを選ぶしか術はないのだから。
定刻通り、駅に到着した電車に乗って
僕はこの街を後にする
去る者の悲しみ、残された者の寂しさ
どちらも天秤にかけたなら
今日なら同じバランスで釣り合ってしまうだろう。
そんな二人が何故、別れを選択したのだろう?
それが二人に与えられた運命だった、のかも知れない。
電車の窓から見える花畑はあの日のままだった
走り出した電車が大きな橋を渡ると
もう手を振る舞の姿が豆粒ほどにしか見えなくなる。
涙が溢れた・・・
舞もそうであってほしい
そんなことを考えている間に
僕はすっかり眠りについてしまったらしい
気づけば外は真っ暗で
降車するはずの駅はすぐそこだった。
前日、一睡もしていないからとは言え
人はどんなに切なくとも悲しくとも
自分の欲求には逆らえないものだ
だからこそ今、僕はこうして一人なのだろう。
さようなら、舞
素敵な思い出と悲しい記憶が混在する
僕の大学時代はこうして幕を閉じた。
これからは社会人の一員となって
忙しい毎日に追われることで
少しずつ舞のことすら忘れていくのだろうか?
もしこの先、別の誰かを好きになるのであれば…
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