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第25章. 陽の当たる坂道で
【ラストシーン…?】
しおりを挟む「え、何?どうしたの舞?」
「狙ってたでしょ?このシチュエーション」
「この曲聴くと思い出すんだよね」
「いつもここで待ち合わせしてたよね、今日みたいに」
「"今日みたいに"って…?俺は舞が来るなんて知らなかった…え…?」
「だって…ふふっ、内緒にしてたんだもーん」
「もしかして…昨日の有香からの電話の時…舞も隣に?」
「ふふふ、サプライズ成功ー!」
「電話、代わってくれてたらこんなにビックリしなかったのにな」
「サプライズなんだもん!ビックリしてもらわなきゃね、それと1年半ぶりの再会なんだから」
「ははは、でもこれで悔いなく地元に帰れるよ」
僕たちは慣れ親しんだ諏訪荘の前で
時間を忘れて話し続けていた
そう、それはまるであの日からの空白を
互いに埋め合わせるかのように。
「それじゃそろそろ帰らなきゃ…電車の時間もあるし」
「うん、またね!コウイチくん」
「再見、舞」
「え?それ何語?」
「中国の挨拶だよ」
「あれ?コウイチくんて中国語、選択してたっけ?」
「いや、ドイツ語だったね」
「じゃ何で?ふふふ」
「再見てさ『また会いましょう』て意味を込めた別れの挨拶だって聞いたことあって」
「あ、だから…ね」
「色々考えて、だね」
「そっかぁ、コウイチくん…またね!」
そう言うと舞は僕の胸に飛び込んできた
あの頃と同じ香りが僕を包んだ。
抱きしめて…いいのだろうか?
こんな儚い約束しか出来ない僕が舞のことを…
「コウイチくん…」
「え?」
「ギュッてしてよ、あの頃みたいに」
「え?いいの?」
「・・・早く」
僕は恐る恐る舞の背中に手を回して
その小さな肩をそっと抱きしめた。
あの頃のままだ…
あの頃と寸分変わらぬ舞の身体の温もり、髪の香り
それはまるで今日まで時を止めていたかのように
不変だった。
「あったかーい」
「あの時もこうやって離さなかったら…」
「ダメだよそんなこと言ったら、今日会えただけで、わたしはしあわせ…」
「舞…ごめんな」
別れの時間が少しずつ近づいていた。
「じゃ、今度こそ帰るね…」
「うん」
「それじゃ…」
舞に背中を見送られながら諏訪荘を後にした
ふと振り返るともうそこに舞の姿はなかった。
「案外、あっさりしたもんだな」
あんなに再会を喜んでくれてたけど別れの時は意外と
あっさりしたもんだったな…
いや舞のことだ、僕の心情を察して
あまり別れを惜しんだりしたら
後々まで引きずってしまうことを
危惧したのかも知れない、
だからこんな感じが一番いいんだ。
舞との思い出に浸りながら歩くこと10分
この駅で電車に乗るのもこれで最後
「さて、帰るかぁ」
と、小さな駅の入り口に
見覚えのある自転車が停まっていた。
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