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第24章. こいのうた
【小さな恋の物語】
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同じ頃、有香はいつになく不機嫌だった。
「ねぇ、ちょっと舞ったら!いきなり荷物まとめて私の部屋に転がり込んでくるって一体どう言うこと?」
「有香お願い、しばらく泊めてよ、新しい部屋が決まるまで」
「何?咲良と喧嘩でもしたっての?」
舞は俯いたまま首を横に振った。
「ま、まさか!舞、あんた!ムラコウと?」
大粒の涙を流しながら顔を上げた舞の表情を見て
さすがに有香も全てを察した。
「ま、あんたが決めたことだからさ、深くは聞かないけど、何がどうしたっての?」
「話したくない」
「じゃ、いいよ話さなくて」
「ちょっと!話、聞いてよ有香!」
「どっちなのよ…?」
咲良には話せない…
だってコウイチくんといる時は
咲良がいつも傍にいてくれた
悩みもお願いもたくさん聞いてくれて
あまりにも思い出が多すぎる
「もう勝手なこと言ってるよ、ムラコウと付き合い出してから私なんてほったらかしだったのにさ、こんな時だけ泣きついてくるんだから」
「わかってる、有香にはホントに申し訳なくって」
「ま、誰しもそんなもんよ、"恋は盲目"ってやつ」
「わたし、どうすればいいんだろ?」
「さあね、もっかいムラコウに会ってみれば?」
「出来ない…よ」
「なら諦めるんだね」
「ひどーい!」
「恋愛って…何か難しいでしょ?だから私はもうそう言うのしんどくってさ」
「だから…?なんだ、モテないんじゃないのね」
「なかなか言ってくれるよね」
「あ…ごめんね、今のは自分でも言い過ぎたかな、って」
「そこ…ね!それが舞のいいとこでもあって悪いとこでもあんのよ」
冷静さを取り戻し始めた舞を見て有香は少し安心した。
ー もっと思いの丈をぶつけてさ、
言いたいこと言って聞きたいこと聞いてれば
「もしかしたら…ね?」
「こんなことには…?」
「ま、そればっかりは…ねぇ」
ふと舞は有香と2人で鴻一の部屋を訪ねた
1年前のことを思い出していた。
「あの時みたいに?…」
「あの時?」
「ほら、コウイチくんの部屋に連れて行ってもらった日」
思えばあの日あの部屋から全てが始まり
最後にあの部屋を訪れて全てが終わった
「寝てないんでしょ?」
「う…うん」
「今日は少し寝た方がいいよ」
「有香、ありがとう」
「あ、あんま静かでも何だから…ラジオでも」
そしてある曲が流れ始めたその瞬間、
舞の表情が一変した
♪教えてください 神様 あの人は何を見てる?
何を考え誰を愛し 誰のために傷つくの?
生きてゆく力が その手にあるうちは
笑わせてて いつもいつも 傍にいてほしいよ…♪
「う…う…うぅうううう」
「舞・・・」
「わたし…わたし、大変なことしちゃった…」
「・・・」
「もう…戻れない…よね…戻れないんだね」
「きっとムラコウも同じこと…考えてるよ」
「ううぅ…」
「あんたたち、何だかんだでお似合いだったもんね」
「コウイチ…くん…!」
この悲しみはいつか時間の流れが
解決してくれるのだろうか?
そうじゃないとわたしもこの先、
きっと誰も好きになれない
いや、コウイチくん以外の人
好きになれる気がしない
でも忘れるなんて出来ない
これが失恋・・・なのかな?
こうしてひとつの小さな恋の話が
人知れず終わりを告げた。
「ねぇ、ちょっと舞ったら!いきなり荷物まとめて私の部屋に転がり込んでくるって一体どう言うこと?」
「有香お願い、しばらく泊めてよ、新しい部屋が決まるまで」
「何?咲良と喧嘩でもしたっての?」
舞は俯いたまま首を横に振った。
「ま、まさか!舞、あんた!ムラコウと?」
大粒の涙を流しながら顔を上げた舞の表情を見て
さすがに有香も全てを察した。
「ま、あんたが決めたことだからさ、深くは聞かないけど、何がどうしたっての?」
「話したくない」
「じゃ、いいよ話さなくて」
「ちょっと!話、聞いてよ有香!」
「どっちなのよ…?」
咲良には話せない…
だってコウイチくんといる時は
咲良がいつも傍にいてくれた
悩みもお願いもたくさん聞いてくれて
あまりにも思い出が多すぎる
「もう勝手なこと言ってるよ、ムラコウと付き合い出してから私なんてほったらかしだったのにさ、こんな時だけ泣きついてくるんだから」
「わかってる、有香にはホントに申し訳なくって」
「ま、誰しもそんなもんよ、"恋は盲目"ってやつ」
「わたし、どうすればいいんだろ?」
「さあね、もっかいムラコウに会ってみれば?」
「出来ない…よ」
「なら諦めるんだね」
「ひどーい!」
「恋愛って…何か難しいでしょ?だから私はもうそう言うのしんどくってさ」
「だから…?なんだ、モテないんじゃないのね」
「なかなか言ってくれるよね」
「あ…ごめんね、今のは自分でも言い過ぎたかな、って」
「そこ…ね!それが舞のいいとこでもあって悪いとこでもあんのよ」
冷静さを取り戻し始めた舞を見て有香は少し安心した。
ー もっと思いの丈をぶつけてさ、
言いたいこと言って聞きたいこと聞いてれば
「もしかしたら…ね?」
「こんなことには…?」
「ま、そればっかりは…ねぇ」
ふと舞は有香と2人で鴻一の部屋を訪ねた
1年前のことを思い出していた。
「あの時みたいに?…」
「あの時?」
「ほら、コウイチくんの部屋に連れて行ってもらった日」
思えばあの日あの部屋から全てが始まり
最後にあの部屋を訪れて全てが終わった
「寝てないんでしょ?」
「う…うん」
「今日は少し寝た方がいいよ」
「有香、ありがとう」
「あ、あんま静かでも何だから…ラジオでも」
そしてある曲が流れ始めたその瞬間、
舞の表情が一変した
♪教えてください 神様 あの人は何を見てる?
何を考え誰を愛し 誰のために傷つくの?
生きてゆく力が その手にあるうちは
笑わせてて いつもいつも 傍にいてほしいよ…♪
「う…う…うぅうううう」
「舞・・・」
「わたし…わたし、大変なことしちゃった…」
「・・・」
「もう…戻れない…よね…戻れないんだね」
「きっとムラコウも同じこと…考えてるよ」
「ううぅ…」
「あんたたち、何だかんだでお似合いだったもんね」
「コウイチ…くん…!」
この悲しみはいつか時間の流れが
解決してくれるのだろうか?
そうじゃないとわたしもこの先、
きっと誰も好きになれない
いや、コウイチくん以外の人
好きになれる気がしない
でも忘れるなんて出来ない
これが失恋・・・なのかな?
こうしてひとつの小さな恋の話が
人知れず終わりを告げた。
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