114 / 129
第24章. こいのうた
【手紙】
しおりを挟む
生誕祭前日、僕は舞への贈り物を探していた。
やはり舞がせっかく手書きで書いてくれた
連絡先を処分してしまったことが気にかかっていて
その埋め合わせを自分の中ですることで
罪悪感を消そうとしていた。
「そうだ!それならいっそのこと…」
こんな時期にはあるかどうかわからないが
新しいスケジュール帳をプレゼントしよう、
そして僕も新しいのを買ってお揃いにして
そこにまた舞から連絡先を本人に書いてもらおう
その時に以前のアドレスを処分したことを伝えて
舞に謝ることで
あのアドレス帳を見るたびに感じる
重たい気持ちが払拭できるだろう。
「うん、我ながらグッドアイデアだな」
下半期から半年分、と言うスケジュール帳を見つけて
僕は舞の分と自分用に色違いの物を購入した。
これを生誕祭の時にジョッキーで渡そう、
こうして僕は自分の中に芽生え始めていた
あの日の舞への不安を自己解決させた。
それがまさか、当日プレゼントを
舞に渡すことが出来ないなどと
誰が予測しただろうか?
舞衣が泥酔してしまったことで
僕の中で描いていた青写真は全て水泡と化した。
結局舞と話せないまま
プレゼントも渡せないまま迎えた
そして不意に訪れた舞衣との終焉の時…
講義が終わり帰った部屋に
ぽつんと寂しげに置かれた所在なさげな手紙は
最後まで読まなくとも
何が書かれているのかはある程度予測はついた。
僕は放心状態のままその一行目から最後まで読み終えた…
その瞬間、全身から力が抜け
目の前が滲んで何も見えなくなった。
その手紙はこのような文面で始まっていた。
ー コウイチくんへ
コウイチくん、
もうわたしのことは忘れてください
誕生日をお祝いしてもらう日に
あんなひどい姿を見せてしまって
わたしはホントにバカな女です。
実は仲良くなってからも
ずっと感じてたことがあったの
わたしと一緒にいること、重荷じゃないかな?って
だってコウイチくんはバンドマンだし
彼女とかいない方が人気も出るだろうし
わたしといることで先に進めないんじゃ?って
心のどこかで思ってたのかも知れない
無理してるのかな、って。
でも一緒にいる時間は楽しくて
この時間がずっと続けばいいなって思ってた
だけどコウイチくんのこれからのこと考えたら
わたしが隣にいていいのかな?
もっともっと前みたいに自由に歩いていく方が
きっとコウイチくんらしくいられるんじゃないかな?
そう考えるようになってしまって
色々悩んだ結果、
コウイチくんから去る決心をしました
でもね、いざそれを伝えようとしたら
色んなこと思い出して涙が止まらなくて
きっとコウイチくんに直接伝えに行ったら
絶対に決心が鈍っちゃうと思って
手紙を書くことにしました。
これまでありがとう、そしてごめんね
わたしは…
コウイチくんの人生の一部になれたかな?
少しでも意味のある存在でいられたかな?
ほんの少しでもそう思ってもらえたら
わたしはそれだけで幸せです。
これまで楽しい時間をありがとう
きっときっと幸せになってね
音楽もがんばって続けてね
わたしもいつかどこかで
コウイチくんの曲を聴ける日が来るのを
楽しみにしてるね
その時は自慢してやるんだ
「わたしの大好きな人なんだよ、すごいでしょ」ってね
それでは風邪なんかひかないようにね
もし体調崩したらわたしが注射してあげるからね
どこにいてもわたしは
コウイチくんのことを思い出せる
わたしの大好きな人です。
さようなら、そしてありがとう。
北浜 舞
やはり舞がせっかく手書きで書いてくれた
連絡先を処分してしまったことが気にかかっていて
その埋め合わせを自分の中ですることで
罪悪感を消そうとしていた。
「そうだ!それならいっそのこと…」
こんな時期にはあるかどうかわからないが
新しいスケジュール帳をプレゼントしよう、
そして僕も新しいのを買ってお揃いにして
そこにまた舞から連絡先を本人に書いてもらおう
その時に以前のアドレスを処分したことを伝えて
舞に謝ることで
あのアドレス帳を見るたびに感じる
重たい気持ちが払拭できるだろう。
「うん、我ながらグッドアイデアだな」
下半期から半年分、と言うスケジュール帳を見つけて
僕は舞の分と自分用に色違いの物を購入した。
これを生誕祭の時にジョッキーで渡そう、
こうして僕は自分の中に芽生え始めていた
あの日の舞への不安を自己解決させた。
それがまさか、当日プレゼントを
舞に渡すことが出来ないなどと
誰が予測しただろうか?
舞衣が泥酔してしまったことで
僕の中で描いていた青写真は全て水泡と化した。
結局舞と話せないまま
プレゼントも渡せないまま迎えた
そして不意に訪れた舞衣との終焉の時…
講義が終わり帰った部屋に
ぽつんと寂しげに置かれた所在なさげな手紙は
最後まで読まなくとも
何が書かれているのかはある程度予測はついた。
僕は放心状態のままその一行目から最後まで読み終えた…
その瞬間、全身から力が抜け
目の前が滲んで何も見えなくなった。
その手紙はこのような文面で始まっていた。
ー コウイチくんへ
コウイチくん、
もうわたしのことは忘れてください
誕生日をお祝いしてもらう日に
あんなひどい姿を見せてしまって
わたしはホントにバカな女です。
実は仲良くなってからも
ずっと感じてたことがあったの
わたしと一緒にいること、重荷じゃないかな?って
だってコウイチくんはバンドマンだし
彼女とかいない方が人気も出るだろうし
わたしといることで先に進めないんじゃ?って
心のどこかで思ってたのかも知れない
無理してるのかな、って。
でも一緒にいる時間は楽しくて
この時間がずっと続けばいいなって思ってた
だけどコウイチくんのこれからのこと考えたら
わたしが隣にいていいのかな?
もっともっと前みたいに自由に歩いていく方が
きっとコウイチくんらしくいられるんじゃないかな?
そう考えるようになってしまって
色々悩んだ結果、
コウイチくんから去る決心をしました
でもね、いざそれを伝えようとしたら
色んなこと思い出して涙が止まらなくて
きっとコウイチくんに直接伝えに行ったら
絶対に決心が鈍っちゃうと思って
手紙を書くことにしました。
これまでありがとう、そしてごめんね
わたしは…
コウイチくんの人生の一部になれたかな?
少しでも意味のある存在でいられたかな?
ほんの少しでもそう思ってもらえたら
わたしはそれだけで幸せです。
これまで楽しい時間をありがとう
きっときっと幸せになってね
音楽もがんばって続けてね
わたしもいつかどこかで
コウイチくんの曲を聴ける日が来るのを
楽しみにしてるね
その時は自慢してやるんだ
「わたしの大好きな人なんだよ、すごいでしょ」ってね
それでは風邪なんかひかないようにね
もし体調崩したらわたしが注射してあげるからね
どこにいてもわたしは
コウイチくんのことを思い出せる
わたしの大好きな人です。
さようなら、そしてありがとう。
北浜 舞
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ゼンタイリスト! 全身タイツなひとびと
ジャン・幸田
ライト文芸
ある日、繁華街に影人間に遭遇した!
それに興味を持った好奇心旺盛な大学生・誠弥が出会ったのはゼンタイ好きの連中だった。
それを興味本位と学術的な興味で追っかけた彼は驚異の世界に遭遇する!
なんとかして彼ら彼女らの心情を理解しようとして、振り回される事になった誠弥は文章を纏められることができるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる