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第22章. すれ違いの純情
【嵐の前】
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「それじゃ、わたし帰るね」
「あ…舞、、、」
「なぁに?」
「ごめんな、最近なかなか会えなくて、でも…もうすぐここのバイトも終わりにしようかと思ってるから…」
舞は何も言わずに微かな笑顔で小さく頷いた。
「また連絡するから」
「待ってるね」
終始笑顔の舞ではあったが
何とも言えない胸騒ぎを覚えた。
いつも快活な舞の瞳が
何故だかとても虚ろに感じたからだ。
そしてやはりここに来たことに
疑問を抱かざるを得なかった、
何か伝えたいことがあった?
僕に聞きたいことがあった?
僕自身、バイト前の落ち着かない心情もあって
舞に少し素っ気なく接したのではないだろうか?
様々な思いが胸の中を交錯していた。
生誕祭でこのモヤモヤを取り戻そう
舞が笑顔でその日を迎えられるように…
そう思いながら僕は更衣室へ入った。
その日の夜、舞とは電話で話したが
昼間のような違和感は感じなかった
気になったのはこの日、夜食の感想を
どうしても聞きたいと言われたことだった。
それから数日は何事もなく過ぎた、
受話器越しに気持ちは伝わらないのかも知れない
生誕祭は翌日に迫っていた
「舞、明日楽しみだね」
「コウイチくんが働いてるとこ、初めて見るね」
「そうだな、早めに上がらせてもらってすぐ合流するからね」
「うん!無理しないでね」
「早めに出勤していつもより早く上がるようしてるから」
「ありがとう、コウイチくん」
明日6月3日は1年前、
二人が付き合うきっかけになった大切な日
舞もきっとそのことを覚えているはずだ。
何か記念になるものをプレゼントしよう
そんなことを考えながら僕は眠りについた、
舞衣の本当の気持ちになど気づくこともなく…
そして迎えた生誕祭当日、
僕はいつもより2時間早めに出勤した
早めにバイトを切り上げさせてもらって
既に来店している舞たちと8時過ぎに合流する算段だ。
開店して30分ほど経過した18時半過ぎ
お店の自動扉が開き、舞たちがやって来た。
いつもの馴染み深い顔ぶれが僕のバイト先に
集うのは何とも感慨深い。
舞を先頭に咲良、そして
一番後ろに小さなシルエットを見つけた
「あ、かせりちゃんも来たんだ」
遠巻きに3人の姿を確認して
持ち場へ戻ろうとした時
門脇さんに声をかけられた。
「おいっ、どの娘が中村くんの彼女なんだい?」
「言いませんよ、何か言うつもりでしょ?」
「何だよ、せっかく『いつもお世話してる門脇です』って言おうと思ってんのに」
「いや、もうマジでやめてくださいって」
正直な気持ちだった
少しナーバスになっている僕と
同じ心境かも知れない舞に
門脇さんのように無神経に入り込まれたら
たまったものではない。
「オーダーは久代さんが行ってくれますから!」
「はい!門脇くん、アウトー!」
「ちぇっ残念」
しばらくして久代さんが僕のところにやって来た。
「中村くんの彼女、あの真ん中の娘でしょ?めちゃめちゃかわいいじゃない!」
「あ、そうですよね…そりゃ、まあ」
「否定しないとこがすごいわ、でもホント、かわいいね」
「ありがとうございますー」
「心配しなくていいから、門脇くんは近づかせないからね」
おかげで仕事に集中できる、と安心して
順調に洗い物を捌いていた時だった
「ナカムラくん…ちょっといい?」
洗い場のカウンター越しに声をかけてきたのは…
咲良だった。
「あ…舞、、、」
「なぁに?」
「ごめんな、最近なかなか会えなくて、でも…もうすぐここのバイトも終わりにしようかと思ってるから…」
舞は何も言わずに微かな笑顔で小さく頷いた。
「また連絡するから」
「待ってるね」
終始笑顔の舞ではあったが
何とも言えない胸騒ぎを覚えた。
いつも快活な舞の瞳が
何故だかとても虚ろに感じたからだ。
そしてやはりここに来たことに
疑問を抱かざるを得なかった、
何か伝えたいことがあった?
僕に聞きたいことがあった?
僕自身、バイト前の落ち着かない心情もあって
舞に少し素っ気なく接したのではないだろうか?
様々な思いが胸の中を交錯していた。
生誕祭でこのモヤモヤを取り戻そう
舞が笑顔でその日を迎えられるように…
そう思いながら僕は更衣室へ入った。
その日の夜、舞とは電話で話したが
昼間のような違和感は感じなかった
気になったのはこの日、夜食の感想を
どうしても聞きたいと言われたことだった。
それから数日は何事もなく過ぎた、
受話器越しに気持ちは伝わらないのかも知れない
生誕祭は翌日に迫っていた
「舞、明日楽しみだね」
「コウイチくんが働いてるとこ、初めて見るね」
「そうだな、早めに上がらせてもらってすぐ合流するからね」
「うん!無理しないでね」
「早めに出勤していつもより早く上がるようしてるから」
「ありがとう、コウイチくん」
明日6月3日は1年前、
二人が付き合うきっかけになった大切な日
舞もきっとそのことを覚えているはずだ。
何か記念になるものをプレゼントしよう
そんなことを考えながら僕は眠りについた、
舞衣の本当の気持ちになど気づくこともなく…
そして迎えた生誕祭当日、
僕はいつもより2時間早めに出勤した
早めにバイトを切り上げさせてもらって
既に来店している舞たちと8時過ぎに合流する算段だ。
開店して30分ほど経過した18時半過ぎ
お店の自動扉が開き、舞たちがやって来た。
いつもの馴染み深い顔ぶれが僕のバイト先に
集うのは何とも感慨深い。
舞を先頭に咲良、そして
一番後ろに小さなシルエットを見つけた
「あ、かせりちゃんも来たんだ」
遠巻きに3人の姿を確認して
持ち場へ戻ろうとした時
門脇さんに声をかけられた。
「おいっ、どの娘が中村くんの彼女なんだい?」
「言いませんよ、何か言うつもりでしょ?」
「何だよ、せっかく『いつもお世話してる門脇です』って言おうと思ってんのに」
「いや、もうマジでやめてくださいって」
正直な気持ちだった
少しナーバスになっている僕と
同じ心境かも知れない舞に
門脇さんのように無神経に入り込まれたら
たまったものではない。
「オーダーは久代さんが行ってくれますから!」
「はい!門脇くん、アウトー!」
「ちぇっ残念」
しばらくして久代さんが僕のところにやって来た。
「中村くんの彼女、あの真ん中の娘でしょ?めちゃめちゃかわいいじゃない!」
「あ、そうですよね…そりゃ、まあ」
「否定しないとこがすごいわ、でもホント、かわいいね」
「ありがとうございますー」
「心配しなくていいから、門脇くんは近づかせないからね」
おかげで仕事に集中できる、と安心して
順調に洗い物を捌いていた時だった
「ナカムラくん…ちょっといい?」
洗い場のカウンター越しに声をかけてきたのは…
咲良だった。
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