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第21章. 彼女と私の事情
【幕引き】
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可鈴が話している間
陽菜子は一言も言葉を発することはなく
彼女の正直な想いを知りたい、
そんな僕のエゴは叶わなかった。
あの日、陽菜子はどんな思いで
僕に体を委ねたのだろう?
度重なる逢瀬は
時に僕からの誘いもあったものの
最初あのような関係に誘ったのは
陽菜子の方からだった。
彼女もまた女性との恋愛に何らかの
疑問や違和感を感じ
僕の体を試した、のではないだろうか?
自分の正当性を主張する訳ではないが
一連の流れを汲むと
まんざら僕だけの"罪"でもないように思える。
「ヒナさんは…ヒナさんはどっちなんすか?
知らなかった俺も悪いけど好きとか嫌いって本人の気持ちじゃないすか?」
「ごめん…ねナカムラ」
ようやく口を開いた陽菜子から出た一言は
謝罪だった。
「いや、悪いのは俺です、ヒナさんの気持ちも知らずに」
堪えきれなかったのか
陽菜子の瞳から大粒の涙が溢れる。
「どっちを選ぶか決めるのはひなちゃ、で、いいよね?中村くん?」
「うん、それが一番いいと思う」
「さ、行こうか」
そう言って連れて帰ろうとした可鈴の手を振り切って
陽菜子が僕のところに駆け寄り
僕の耳元に唇を押し当てながら
涙まじりの声でこう言った。
「ごめんナカムラ、ダメなんだ…わかってんだよほんとは、ごめん、ホントにごめんね」
「うんうん、わかりました、ありがとう」
陽菜子の熱い吐息と涙を耳たぶに感じながら
僕はただそう答えるしか選択肢はなかった。
翌日、陽菜子も可鈴も
アルバイトに来ることはなかった
そしてその次の日もまた…
陽菜子は可鈴を選んだ、と言うことか。
まただ・・・
また同じことを繰り返してしまった
不用意な優しさで人を傷つける
何度繰り返せば僕は気づくのだろうか?
そして何も知らない舞はいつでも
こんな僕のことを優しく受け入れてくれる
自分勝手なようだが何だか少し嫌になってきた
男と女との面倒くさいあれこれ、
それらにまつわる全てのことが。
これからも舞に優しく接していくことが
償いになるのだろうか?
こんな僕と一緒にいて舞は幸せなのだろうか?
そんな思いを抱えたまま悪戯に日々は過ぎていく。
それでも舞は
いつものように笑顔で僕を出迎え、受け入れる
その笑顔に心が痛くなった。
"ヒナさんは女の子が好きなのでは?
それを確かめて見届けよう・・・"
僕に課せられたミッションの結末は
あまりにも重たい結末を迎えた、
結局そこには悪戯に陽菜子の体と心を弄んだ僕がいた
それだけのことだった。
"僕とあの娘と彼女のややこしい事情"は
こうして幕を閉じ
陽菜子のいない退屈なバイト先へと
重い足を運ぶ日々が再び始まった。
「中村くん、最近何だか元気ないね」
誰からもそう言われたが図星だった。
今の僕にとって陽菜子のいないジョッキーは
何だかとても空虚な空間にしか
感じられなかったのだから。
何だかんだで僕はすっかり
陽菜子に魅せられていたのだろう。
陽菜子は一言も言葉を発することはなく
彼女の正直な想いを知りたい、
そんな僕のエゴは叶わなかった。
あの日、陽菜子はどんな思いで
僕に体を委ねたのだろう?
度重なる逢瀬は
時に僕からの誘いもあったものの
最初あのような関係に誘ったのは
陽菜子の方からだった。
彼女もまた女性との恋愛に何らかの
疑問や違和感を感じ
僕の体を試した、のではないだろうか?
自分の正当性を主張する訳ではないが
一連の流れを汲むと
まんざら僕だけの"罪"でもないように思える。
「ヒナさんは…ヒナさんはどっちなんすか?
知らなかった俺も悪いけど好きとか嫌いって本人の気持ちじゃないすか?」
「ごめん…ねナカムラ」
ようやく口を開いた陽菜子から出た一言は
謝罪だった。
「いや、悪いのは俺です、ヒナさんの気持ちも知らずに」
堪えきれなかったのか
陽菜子の瞳から大粒の涙が溢れる。
「どっちを選ぶか決めるのはひなちゃ、で、いいよね?中村くん?」
「うん、それが一番いいと思う」
「さ、行こうか」
そう言って連れて帰ろうとした可鈴の手を振り切って
陽菜子が僕のところに駆け寄り
僕の耳元に唇を押し当てながら
涙まじりの声でこう言った。
「ごめんナカムラ、ダメなんだ…わかってんだよほんとは、ごめん、ホントにごめんね」
「うんうん、わかりました、ありがとう」
陽菜子の熱い吐息と涙を耳たぶに感じながら
僕はただそう答えるしか選択肢はなかった。
翌日、陽菜子も可鈴も
アルバイトに来ることはなかった
そしてその次の日もまた…
陽菜子は可鈴を選んだ、と言うことか。
まただ・・・
また同じことを繰り返してしまった
不用意な優しさで人を傷つける
何度繰り返せば僕は気づくのだろうか?
そして何も知らない舞はいつでも
こんな僕のことを優しく受け入れてくれる
自分勝手なようだが何だか少し嫌になってきた
男と女との面倒くさいあれこれ、
それらにまつわる全てのことが。
これからも舞に優しく接していくことが
償いになるのだろうか?
こんな僕と一緒にいて舞は幸せなのだろうか?
そんな思いを抱えたまま悪戯に日々は過ぎていく。
それでも舞は
いつものように笑顔で僕を出迎え、受け入れる
その笑顔に心が痛くなった。
"ヒナさんは女の子が好きなのでは?
それを確かめて見届けよう・・・"
僕に課せられたミッションの結末は
あまりにも重たい結末を迎えた、
結局そこには悪戯に陽菜子の体と心を弄んだ僕がいた
それだけのことだった。
"僕とあの娘と彼女のややこしい事情"は
こうして幕を閉じ
陽菜子のいない退屈なバイト先へと
重い足を運ぶ日々が再び始まった。
「中村くん、最近何だか元気ないね」
誰からもそう言われたが図星だった。
今の僕にとって陽菜子のいないジョッキーは
何だかとても空虚な空間にしか
感じられなかったのだから。
何だかんだで僕はすっかり
陽菜子に魅せられていたのだろう。
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