103 / 129
第21章. 彼女と私の事情
【幕引き】
しおりを挟む
可鈴が話している間
陽菜子は一言も言葉を発することはなく
彼女の正直な想いを知りたい、
そんな僕のエゴは叶わなかった。
あの日、陽菜子はどんな思いで
僕に体を委ねたのだろう?
度重なる逢瀬は
時に僕からの誘いもあったものの
最初あのような関係に誘ったのは
陽菜子の方からだった。
彼女もまた女性との恋愛に何らかの
疑問や違和感を感じ
僕の体を試した、のではないだろうか?
自分の正当性を主張する訳ではないが
一連の流れを汲むと
まんざら僕だけの"罪"でもないように思える。
「ヒナさんは…ヒナさんはどっちなんすか?
知らなかった俺も悪いけど好きとか嫌いって本人の気持ちじゃないすか?」
「ごめん…ねナカムラ」
ようやく口を開いた陽菜子から出た一言は
謝罪だった。
「いや、悪いのは俺です、ヒナさんの気持ちも知らずに」
堪えきれなかったのか
陽菜子の瞳から大粒の涙が溢れる。
「どっちを選ぶか決めるのはひなちゃ、で、いいよね?中村くん?」
「うん、それが一番いいと思う」
「さ、行こうか」
そう言って連れて帰ろうとした可鈴の手を振り切って
陽菜子が僕のところに駆け寄り
僕の耳元に唇を押し当てながら
涙まじりの声でこう言った。
「ごめんナカムラ、ダメなんだ…わかってんだよほんとは、ごめん、ホントにごめんね」
「うんうん、わかりました、ありがとう」
陽菜子の熱い吐息と涙を耳たぶに感じながら
僕はただそう答えるしか選択肢はなかった。
翌日、陽菜子も可鈴も
アルバイトに来ることはなかった
そしてその次の日もまた…
陽菜子は可鈴を選んだ、と言うことか。
まただ・・・
また同じことを繰り返してしまった
不用意な優しさで人を傷つける
何度繰り返せば僕は気づくのだろうか?
そして何も知らない舞はいつでも
こんな僕のことを優しく受け入れてくれる
自分勝手なようだが何だか少し嫌になってきた
男と女との面倒くさいあれこれ、
それらにまつわる全てのことが。
これからも舞に優しく接していくことが
償いになるのだろうか?
こんな僕と一緒にいて舞は幸せなのだろうか?
そんな思いを抱えたまま悪戯に日々は過ぎていく。
それでも舞は
いつものように笑顔で僕を出迎え、受け入れる
その笑顔に心が痛くなった。
"ヒナさんは女の子が好きなのでは?
それを確かめて見届けよう・・・"
僕に課せられたミッションの結末は
あまりにも重たい結末を迎えた、
結局そこには悪戯に陽菜子の体と心を弄んだ僕がいた
それだけのことだった。
"僕とあの娘と彼女のややこしい事情"は
こうして幕を閉じ
陽菜子のいない退屈なバイト先へと
重い足を運ぶ日々が再び始まった。
「中村くん、最近何だか元気ないね」
誰からもそう言われたが図星だった。
今の僕にとって陽菜子のいないジョッキーは
何だかとても空虚な空間にしか
感じられなかったのだから。
何だかんだで僕はすっかり
陽菜子に魅せられていたのだろう。
陽菜子は一言も言葉を発することはなく
彼女の正直な想いを知りたい、
そんな僕のエゴは叶わなかった。
あの日、陽菜子はどんな思いで
僕に体を委ねたのだろう?
度重なる逢瀬は
時に僕からの誘いもあったものの
最初あのような関係に誘ったのは
陽菜子の方からだった。
彼女もまた女性との恋愛に何らかの
疑問や違和感を感じ
僕の体を試した、のではないだろうか?
自分の正当性を主張する訳ではないが
一連の流れを汲むと
まんざら僕だけの"罪"でもないように思える。
「ヒナさんは…ヒナさんはどっちなんすか?
知らなかった俺も悪いけど好きとか嫌いって本人の気持ちじゃないすか?」
「ごめん…ねナカムラ」
ようやく口を開いた陽菜子から出た一言は
謝罪だった。
「いや、悪いのは俺です、ヒナさんの気持ちも知らずに」
堪えきれなかったのか
陽菜子の瞳から大粒の涙が溢れる。
「どっちを選ぶか決めるのはひなちゃ、で、いいよね?中村くん?」
「うん、それが一番いいと思う」
「さ、行こうか」
そう言って連れて帰ろうとした可鈴の手を振り切って
陽菜子が僕のところに駆け寄り
僕の耳元に唇を押し当てながら
涙まじりの声でこう言った。
「ごめんナカムラ、ダメなんだ…わかってんだよほんとは、ごめん、ホントにごめんね」
「うんうん、わかりました、ありがとう」
陽菜子の熱い吐息と涙を耳たぶに感じながら
僕はただそう答えるしか選択肢はなかった。
翌日、陽菜子も可鈴も
アルバイトに来ることはなかった
そしてその次の日もまた…
陽菜子は可鈴を選んだ、と言うことか。
まただ・・・
また同じことを繰り返してしまった
不用意な優しさで人を傷つける
何度繰り返せば僕は気づくのだろうか?
そして何も知らない舞はいつでも
こんな僕のことを優しく受け入れてくれる
自分勝手なようだが何だか少し嫌になってきた
男と女との面倒くさいあれこれ、
それらにまつわる全てのことが。
これからも舞に優しく接していくことが
償いになるのだろうか?
こんな僕と一緒にいて舞は幸せなのだろうか?
そんな思いを抱えたまま悪戯に日々は過ぎていく。
それでも舞は
いつものように笑顔で僕を出迎え、受け入れる
その笑顔に心が痛くなった。
"ヒナさんは女の子が好きなのでは?
それを確かめて見届けよう・・・"
僕に課せられたミッションの結末は
あまりにも重たい結末を迎えた、
結局そこには悪戯に陽菜子の体と心を弄んだ僕がいた
それだけのことだった。
"僕とあの娘と彼女のややこしい事情"は
こうして幕を閉じ
陽菜子のいない退屈なバイト先へと
重い足を運ぶ日々が再び始まった。
「中村くん、最近何だか元気ないね」
誰からもそう言われたが図星だった。
今の僕にとって陽菜子のいないジョッキーは
何だかとても空虚な空間にしか
感じられなかったのだから。
何だかんだで僕はすっかり
陽菜子に魅せられていたのだろう。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ゼンタイリスト! 全身タイツなひとびと
ジャン・幸田
ライト文芸
ある日、繁華街に影人間に遭遇した!
それに興味を持った好奇心旺盛な大学生・誠弥が出会ったのはゼンタイ好きの連中だった。
それを興味本位と学術的な興味で追っかけた彼は驚異の世界に遭遇する!
なんとかして彼ら彼女らの心情を理解しようとして、振り回される事になった誠弥は文章を纏められることができるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる