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第21章. 彼女と私の事情
【愛の形】
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可鈴は僕の股間に指を立てそっと這わせながら
「ほら、私の方が上手でしょ?」
席が暖簾で仕切られ喧騒にまみれているとは言え
隣の席の声が丸聞こえの賑やかな店内で
僕の体は正直に反応していた。
「ど、どうしたの津島さん?」
「"つしりん"…でいいよ、ほら…こっちも、もっと触って…」
「あ、そんなとこを」
僕の右手は未だに可鈴の右手に導かれたまま
黒いニットのセーター越しに
その胸の膨らみへとあてがわれている。
体の反応はどこまでも本能に忠実だ…
それを見透かしたかのように可鈴は耳元でこう囁いた。
「ひなちゃじゃなくて私じゃ…ダメ?」
「いきなりどうしたの?こんなこと…?」
ふと我に返ったように可鈴は突然僕から離れた。
「あれ、ごめんね、ついつい…飲み過ぎちゃったのかな?」
「びっくりしたなぁ」
「あ、今の忘れて、あはは」
忘れようにも僕の体には
この感触がしっかり刻み込まれてしまった。
そしてそんな行為によって
うやむやになった空気のせいで
結局、可鈴は僕に何を伝えたかったのか
わからずじまいのままだった。
意味ありげに僕に迫ってきた理由とは?
多少の自惚れこそあったものの
自分への好意だけとも思えなかった。
あの時の「私の方が」と言う言葉は
一体何を意味するのだろう?
陽菜子への対抗心なのだろうか?
可鈴のアプローチに関して
この後、陽菜子からは何の言及もなかった
仲の良い二人がお互いに内緒で僕に…?
それとも陽菜子は容認しているのだろうか?
確かに彼氏彼女の関係ではない僕と陽菜子だが
ならばなぜ・・・?
悶々と悩む日々が続いたそんなある日
来店するお客さんもまばらで閑散とした店内、
「2番行ってきます」
煙草をふかすわけではないが
今や当然のように入室している喫煙室の扉を
ノックもせずに開けた時のことだった・・・
「可鈴…あ、こんなとこで…だめだって、あ!」
そこには長椅子に横たわる陽菜子の首筋を
愛撫する可鈴の後ろ姿があった。
「・・・」
一瞬、陽菜子と視線が合ったような気がして
僕は後退りしながら無言でそっとドアを閉めた。
喫煙室の前で頭を回転させながら一人立ち尽くす
ー え?え?どう言うことだ?
津島さんがヒナさんを…を犯している?
つまり二人はそんな関係…なの、か?
確かに陽菜子は女の子が好きなのでは?
そう思っていたのは事実だが
そのお相手がよりによって可鈴だとは
いや…だからこそ彼女は陽菜子の"変化"に気づき
"調査"のためにここでアルバイトを始めたのか?
まとまらない思考を整理しながら
トイレと更衣室をうろうろしている間に
休憩時間は終わり気づけば帰り支度をしていた。
少し離れたところに二人の姿を見つけた、
あまりにも気まずくて二人と目を合わせられない
こそこそと逃げ出すようにタイムカードを押し
そそくさと帰ろうとした時
「中村くん…!」
事務所の前で後ろから呼び止められた。
恐る恐る振り返るとそこに立っていたのは
可鈴だった
その隣には所在なさげな陽菜子の姿もあった。
「見られちゃった・・・ね」
「あ、え?…えっと、何の…?」
「私たち、そう言う関係なの」
「あ、その、さっきの…」
「そ、中村くん…だよね?ひなちゃのこと…」
「え?」
「あげないよ」
「いや、俺は、その…」
「わかってたんだ、だからあの日…」
可鈴は僕に探りを入れようと誘いをかけてきた、
と言うことか。
「つまり…津島さんとヒナさんはこれからも」
「そう、だから…さよなら」
隣で涙ぐむ陽菜子の姿を見ると
何ともいたたまれない思いになった
何が"需要と供給"だ、
僕はただ自分の理性を保てないまま
陽菜子の恋愛観の変化にすら気づかない
鈍感な生き物じゃないか。
「ほら、私の方が上手でしょ?」
席が暖簾で仕切られ喧騒にまみれているとは言え
隣の席の声が丸聞こえの賑やかな店内で
僕の体は正直に反応していた。
「ど、どうしたの津島さん?」
「"つしりん"…でいいよ、ほら…こっちも、もっと触って…」
「あ、そんなとこを」
僕の右手は未だに可鈴の右手に導かれたまま
黒いニットのセーター越しに
その胸の膨らみへとあてがわれている。
体の反応はどこまでも本能に忠実だ…
それを見透かしたかのように可鈴は耳元でこう囁いた。
「ひなちゃじゃなくて私じゃ…ダメ?」
「いきなりどうしたの?こんなこと…?」
ふと我に返ったように可鈴は突然僕から離れた。
「あれ、ごめんね、ついつい…飲み過ぎちゃったのかな?」
「びっくりしたなぁ」
「あ、今の忘れて、あはは」
忘れようにも僕の体には
この感触がしっかり刻み込まれてしまった。
そしてそんな行為によって
うやむやになった空気のせいで
結局、可鈴は僕に何を伝えたかったのか
わからずじまいのままだった。
意味ありげに僕に迫ってきた理由とは?
多少の自惚れこそあったものの
自分への好意だけとも思えなかった。
あの時の「私の方が」と言う言葉は
一体何を意味するのだろう?
陽菜子への対抗心なのだろうか?
可鈴のアプローチに関して
この後、陽菜子からは何の言及もなかった
仲の良い二人がお互いに内緒で僕に…?
それとも陽菜子は容認しているのだろうか?
確かに彼氏彼女の関係ではない僕と陽菜子だが
ならばなぜ・・・?
悶々と悩む日々が続いたそんなある日
来店するお客さんもまばらで閑散とした店内、
「2番行ってきます」
煙草をふかすわけではないが
今や当然のように入室している喫煙室の扉を
ノックもせずに開けた時のことだった・・・
「可鈴…あ、こんなとこで…だめだって、あ!」
そこには長椅子に横たわる陽菜子の首筋を
愛撫する可鈴の後ろ姿があった。
「・・・」
一瞬、陽菜子と視線が合ったような気がして
僕は後退りしながら無言でそっとドアを閉めた。
喫煙室の前で頭を回転させながら一人立ち尽くす
ー え?え?どう言うことだ?
津島さんがヒナさんを…を犯している?
つまり二人はそんな関係…なの、か?
確かに陽菜子は女の子が好きなのでは?
そう思っていたのは事実だが
そのお相手がよりによって可鈴だとは
いや…だからこそ彼女は陽菜子の"変化"に気づき
"調査"のためにここでアルバイトを始めたのか?
まとまらない思考を整理しながら
トイレと更衣室をうろうろしている間に
休憩時間は終わり気づけば帰り支度をしていた。
少し離れたところに二人の姿を見つけた、
あまりにも気まずくて二人と目を合わせられない
こそこそと逃げ出すようにタイムカードを押し
そそくさと帰ろうとした時
「中村くん…!」
事務所の前で後ろから呼び止められた。
恐る恐る振り返るとそこに立っていたのは
可鈴だった
その隣には所在なさげな陽菜子の姿もあった。
「見られちゃった・・・ね」
「あ、え?…えっと、何の…?」
「私たち、そう言う関係なの」
「あ、その、さっきの…」
「そ、中村くん…だよね?ひなちゃのこと…」
「え?」
「あげないよ」
「いや、俺は、その…」
「わかってたんだ、だからあの日…」
可鈴は僕に探りを入れようと誘いをかけてきた、
と言うことか。
「つまり…津島さんとヒナさんはこれからも」
「そう、だから…さよなら」
隣で涙ぐむ陽菜子の姿を見ると
何ともいたたまれない思いになった
何が"需要と供給"だ、
僕はただ自分の理性を保てないまま
陽菜子の恋愛観の変化にすら気づかない
鈍感な生き物じゃないか。
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