僕とあの娘

みつ光男

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第21章.  彼女と私の事情

【大胆不敵】

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 ジョッキーでアルバイトを始めて
半年が経過した新年度、大学3年の春

「はじめまして!津島つしま可鈴《かりん》です」

先月家庭の事情で退職して欠員の出来た
福本さんのポストとして新たな仲間となったのは

津島可鈴…彼女は陽菜子の友人だった。

小柄でショートカット、耳には銀のピアスが3つ
陽菜子同様に派手な見た目ではある。

 明るい雰囲気で職場にもすぐ馴染んで
仕事もテキパキこなしてくれるのだが

歯に衣着せぬ言動と奔放な性格ゆえ
納得いかないことがあると上司であろうと
容赦なく食ってかかる

そんな場面を何度か目撃した。

僕も"触らぬ神に祟りなし"と言った体で
職場では当たり障りのない会話をしていた。

陽菜子との知られざる関係に
気づかれるのも何かと面倒だったし。

 可鈴がアルバイトに来るようになって
数ヶ月が経った初夏のことだった、

タイムカードを押そうと事務所に行くと
ちょうど出勤してきたばかりの可鈴が僕に気づいた。

「あ!中村くんだ」

「おはよう津島さん、今日、南波さんは?」

「ひなちゃは休みだよ」

「あれ?珍しいね、いつも休み同じ日にしてなかった?」

「うん、たまにはね…あ、そうだ!」

「なに?」

「今から遊びに行かない?」

「えっ?俺ら今から…」

「ふふふ、冗談よ」

「びっくりしたなぁ」

「あ、中村くん!」

「どうしたの今度は?」

「あのね、バイト終わってから…ちょっといい?」

「うん、大丈夫だけど」

まさか…可鈴から誘われている?
この時僕はまだ何も気づいていなかった

そう、全て何にも気づかなかった。

いや、むしろあんなことに気づくはずがないだろう。

 その日バイトを終えると僕は可鈴に連れられて
ある居酒屋へと向かった。

今日も特に用事はなかったし
舞とも陽菜子とも会う約束はしていなかった。

それよりも思わぬタイミングで
可鈴に呼び出された、その理由を知りたかった。

テーブル席でジョッキと
いくつかの料理を囲みながら会話が始まる。

「で、今日は何の話?」

「あのさ、ひなちゃが最近ちょっと…アレなんだよね?」

「あれ?…って」

「何か様子がおかしいって言うか…悩んでる、みたいなね」

これは間違いなく僕に探りを入れてきたな、
そう察したので

「仕事場では特に変わらないけど、もしかしたら…」

「なになに?」

「恋愛関係…とか?」

「そっかぁ、やっぱ中村くんもそう思う?」

「わかんないけど…ね」

「でさ…中村くんはどうなの?」

「え?どうって?」

「もう半年も一緒に働いてるんでしょ?特別な感情…みたいなのって」

僕には何を言われても大丈夫な
"最大の逃げ口上"があった。

「でも俺は…彼女がいるからね」

「知ってるよ」

「…え?」

「ひなちゃから聞いてる…だからそこなんだよね、何であの娘、私にわざわざそんなこと言うのかな?」

「さぁ…どうだろう?」

「ねえ」

向かい合わせに座っていた可鈴は
おもむろに立ち上がり僕の隣に腰かけた。

「ねぇ、中村くんさ、ひなちゃと何か…あった?」

「いや、別に…」

「ひなちゃよりも…私の方が」

可鈴はそう言って僕の右手を掴み
彼女のふくよかな左胸へそっとあてがった。

「ほら、大きいでしょ?」

「な、な、何やってんだよ」

仕切りで隠されているため
僕たちの行為は誰にも見られることはないが

すぐ隣では賑やかな話し声が聞こえる、
そんな中で可鈴は更に大胆な行動に出た。
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