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第20章. 「男」なんて
【終演】
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さあ、この長い夜もようやく終わる…
ほっとしながら背を向けた時
「ナカムラ…」
ふと襟元を捕まれ、振り返ると
怪訝そうな表情を浮かべた陽菜子の顔が
目と鼻の先にあった。
「うわ!何すか?」
僕の頬をその細い指でそっと撫でながら
「あ、そうだった」
「え?」
「チューする時はこれ、ダメだったね…あんたタバコ喫わないから」
「ま、気にしないっすよ」
「あら?やる気満々じゃない?今する?」
「やめときます」
「ふふ、じゃあね」
バイクから白い煙を吐き出して
帰っていく陽菜子の背中を見送っていた時
僕の中でひとつ結論のようなものが導き出された。
ヒナさん…もしかして女の子が好きなのでは?
それも友人関係などではなく恋愛対象として。
きっとそのことに対して
色々と悩んだりしていたのではないだろうか?
そして僕と出会い、接触したことにより
何かしらの原因でそれが解消されようとしている
ならばその行く末を見届けるのは
僕に課せられたミッションなのでは?
どこまでも僕は勝手な男に成り下がっていた。
この後も僕は陽菜子と何度となく飲みに行き
また肉体関係も変わらず続けていた。
そうしながら舞との関係も何ら変わりなく
平穏な日々を送っている。
「コウイチくん、最近楽しそうだね」
「そうなんだ、貯金も増えてるし早く舞と車で出掛けたいからね」
「楽しみだぁ…でも最近…多くない?」
「え?何が?」
「ほら…今日もだよ」
隣にはあられもない姿の舞が横たわっている
「何かさ、疲れるとこんな気持ちになっちゃうのかな?舞と会うのだけが楽しみで」
「そうなの?無理しないでね、わたしは一緒にいられるだけで幸せなんだから」
何と言うことだ
もはや微塵も舞に対して
後ろめたさを感じることすら無くなってしまった。
その一方で…
「ナカムラ、今日も一緒に飲んでくれてありがとね」
「あ、全然、ヒナさんのためですから」
「何か最近やたらと素直だね?あたしがかわいいから?」
「ま、それは間違いないっす」
「前みたいに反抗的で拒んでくるナカムラも好きなんだけどな」
「あ、そこはしっかり自制しますので」
「そお…ってどこがよ?」
陽菜子と何度も求め合った部屋の一室で
僕たちはそんな会話を続けていた。
「ヒナさん、もう『男』は大丈夫ですか?」
「ううん、やっぱあんた以外は無理、門脇さんなんて5メートル離れてても無理だわ」
「ま、あの人はまた別物ですから」
「何かギラギラしてるよね」
「女の子は大丈夫?」
「うん、かわいい女の子大好きだから」
「だから福本さんとも…」
「そう、だって若い頃絶対美人だったと思うよ」
「今でもキレイですもんね、あ、CD持ってきましたよ」
「ありがと、いつもありがとね」
「ヒナさんのためですから」
「またまた…じゃ…もう1回…ねっ!」
知らず知らずの間にこんな自堕落な生活が
日常化してしまっていた、
それはまるで怪談「牡丹灯籠」だった。
そしてこの妖しげな日常は
ある日突然終わりを告げることになる。
ほっとしながら背を向けた時
「ナカムラ…」
ふと襟元を捕まれ、振り返ると
怪訝そうな表情を浮かべた陽菜子の顔が
目と鼻の先にあった。
「うわ!何すか?」
僕の頬をその細い指でそっと撫でながら
「あ、そうだった」
「え?」
「チューする時はこれ、ダメだったね…あんたタバコ喫わないから」
「ま、気にしないっすよ」
「あら?やる気満々じゃない?今する?」
「やめときます」
「ふふ、じゃあね」
バイクから白い煙を吐き出して
帰っていく陽菜子の背中を見送っていた時
僕の中でひとつ結論のようなものが導き出された。
ヒナさん…もしかして女の子が好きなのでは?
それも友人関係などではなく恋愛対象として。
きっとそのことに対して
色々と悩んだりしていたのではないだろうか?
そして僕と出会い、接触したことにより
何かしらの原因でそれが解消されようとしている
ならばその行く末を見届けるのは
僕に課せられたミッションなのでは?
どこまでも僕は勝手な男に成り下がっていた。
この後も僕は陽菜子と何度となく飲みに行き
また肉体関係も変わらず続けていた。
そうしながら舞との関係も何ら変わりなく
平穏な日々を送っている。
「コウイチくん、最近楽しそうだね」
「そうなんだ、貯金も増えてるし早く舞と車で出掛けたいからね」
「楽しみだぁ…でも最近…多くない?」
「え?何が?」
「ほら…今日もだよ」
隣にはあられもない姿の舞が横たわっている
「何かさ、疲れるとこんな気持ちになっちゃうのかな?舞と会うのだけが楽しみで」
「そうなの?無理しないでね、わたしは一緒にいられるだけで幸せなんだから」
何と言うことだ
もはや微塵も舞に対して
後ろめたさを感じることすら無くなってしまった。
その一方で…
「ナカムラ、今日も一緒に飲んでくれてありがとね」
「あ、全然、ヒナさんのためですから」
「何か最近やたらと素直だね?あたしがかわいいから?」
「ま、それは間違いないっす」
「前みたいに反抗的で拒んでくるナカムラも好きなんだけどな」
「あ、そこはしっかり自制しますので」
「そお…ってどこがよ?」
陽菜子と何度も求め合った部屋の一室で
僕たちはそんな会話を続けていた。
「ヒナさん、もう『男』は大丈夫ですか?」
「ううん、やっぱあんた以外は無理、門脇さんなんて5メートル離れてても無理だわ」
「ま、あの人はまた別物ですから」
「何かギラギラしてるよね」
「女の子は大丈夫?」
「うん、かわいい女の子大好きだから」
「だから福本さんとも…」
「そう、だって若い頃絶対美人だったと思うよ」
「今でもキレイですもんね、あ、CD持ってきましたよ」
「ありがと、いつもありがとね」
「ヒナさんのためですから」
「またまた…じゃ…もう1回…ねっ!」
知らず知らずの間にこんな自堕落な生活が
日常化してしまっていた、
それはまるで怪談「牡丹灯籠」だった。
そしてこの妖しげな日常は
ある日突然終わりを告げることになる。
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