僕とあの娘

みつ光男

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第15章.  シングルベッド

【ひとつ】

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 体はひとつにならなくても僕と舞が過ごした一夜は

二人の関係を確固足るのものにするには
充分すぎる時間だった。

まさかこんな小さなシングルベッドで二人、
同じ時間を共有するなんて考えてもいなかった。

せっかくふたりが結ばれるのなら
出来ればもう少しムードのある状況で、などと…
考えたりもしたが

でもそれは僕と舞だから体感できた時間であり
かけがえのない思い出となることだろう、

そんなことを考えながら隣で静かな寝息を立てる
舞のあどけない横顔を眺めていた。

 いつもそれなりにバッチリメイクをしていた
舞の飾らないすっぴんを見るにつれ

ようやく二人は心も体も何一つ隠さずに
さらすことが出来るようになったんだ

飾ることも蓋をすることもない、
ありのままの自分をお互いに見せ合える。

体の関係なんてそんなのに比べるとちっぽけなことだ

それはまたそんな機会があれば
何も臆することなくひとつになれるだろう…

そしてこれからも、と
この時は何の疑いも持っていなかった。

 翌朝、二人でコンビニまで歩いて朝食を調達した
道端の野草に朝露が光る歩道の
凛とした朝の空気がとても心地よかった。

「何か、新婚夫婦みたい」

「早起きな夫婦だね」

「健康的だもん、わたしたち」

また夜まで舞と共に時間を過ごせる、
それは確かに夫婦のような心地よさだった。

その後もまだが終わらない舞と
やはり昨日のように結ばれぬまま求め合った。

それはお互いにとってごく自然な行為だった

これから舞と過ごす時間の中で
釣りや外食のように

欠かすことのないルーティンとして
加えられることになるのだろう。

ならばこの先は…?

僕たちがひとつに結ばれたその先に
二人は何を求めて前に進むのだろう?

そこがゴールなのかスタート地点なのか
その答えはきっと二人で過ごす時間が
解決してくれることだろう。

それはきっとその時にならなければわからない
そして今は舞との時間を大切にしよう

こうして二人だけしか知らない2日間は
静かに穏やかに…時に激しく過ぎていった。
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