僕とあの娘

みつ光男

文字の大きさ
上 下
76 / 129
第15章.  シングルベッド

【ひとつ】

しおりを挟む
 体はひとつにならなくても僕と舞が過ごした一夜は

二人の関係を確固足るのものにするには
充分すぎる時間だった。

まさかこんな小さなシングルベッドで二人、
同じ時間を共有するなんて考えてもいなかった。

せっかくふたりが結ばれるのなら
出来ればもう少しムードのある状況で、などと…
考えたりもしたが

でもそれは僕と舞だから体感できた時間であり
かけがえのない思い出となることだろう、

そんなことを考えながら隣で静かな寝息を立てる
舞のあどけない横顔を眺めていた。

 いつもそれなりにバッチリメイクをしていた
舞の飾らないすっぴんを見るにつれ

ようやく二人は心も体も何一つ隠さずに
さらすことが出来るようになったんだ

飾ることも蓋をすることもない、
ありのままの自分をお互いに見せ合える。

体の関係なんてそんなのに比べるとちっぽけなことだ

それはまたそんな機会があれば
何も臆することなくひとつになれるだろう…

そしてこれからも、と
この時は何の疑いも持っていなかった。

 翌朝、二人でコンビニまで歩いて朝食を調達した
道端の野草に朝露が光る歩道の
凛とした朝の空気がとても心地よかった。

「何か、新婚夫婦みたい」

「早起きな夫婦だね」

「健康的だもん、わたしたち」

また夜まで舞と共に時間を過ごせる、
それは確かに夫婦のような心地よさだった。

その後もまだが終わらない舞と
やはり昨日のように結ばれぬまま求め合った。

それはお互いにとってごく自然な行為だった

これから舞と過ごす時間の中で
釣りや外食のように

欠かすことのないルーティンとして
加えられることになるのだろう。

ならばこの先は…?

僕たちがひとつに結ばれたその先に
二人は何を求めて前に進むのだろう?

そこがゴールなのかスタート地点なのか
その答えはきっと二人で過ごす時間が
解決してくれることだろう。

それはきっとその時にならなければわからない
そして今は舞との時間を大切にしよう

こうして二人だけしか知らない2日間は
静かに穏やかに…時に激しく過ぎていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

流星の徒花

柴野日向
ライト文芸
若葉町に住む中学生の雨宮翔太は、通い詰めている食堂で転校生の榎本凛と出会った。 明るい少女に対し初めは興味を持たない翔太だったが、互いに重い運命を背負っていることを知り、次第に惹かれ合っていく。 残酷な境遇に抗いつつ懸命に咲き続ける徒花が、いつしか流星となるまでの物語。

もしもしお時間いいですか?

ベアりんぐ
ライト文芸
 日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。  2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。 ※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。 そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。 そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...