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第15章. シングルベッド
【ふたりの遭遇】
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その数時間後のこと…
「ねえ、ムラコウいつでも挿入ていいんだよ」
「だ、か、ら!そう言うの無しって言っただろ!」
「冗談だよ、冗談」
結局美波は有香の目を盗んで僕の部屋に戻ってきた
そしてこの狭い部屋の対角線上に僕たちは
距離を置いて座っている
何かと理由をつけて密着したがる
美波への戒めの意味を込めて。
「私がここにもう1回来たホントの理由は…」
「あ!そのCD」
以前、美波に数枚CDを貸したのだが
その中の1枚だけが何故か返されずに
そのままになっていた。
それも限定生産の入手困難なバンドの自主制作CD
「ねえ、これ返すの忘れてたと思う?」
「いや、これ、借りパクしてどっかのお店で買い取ってもらうつもりで…」
「もう!私、そんなに酷い女に見える?」
「酷くないにしても何かと計算してそうだ」
「それは正解、ふふふ」
ー これはね人質だったの
「人質?」
「そっ、もしムラコウと会えなくなって…久しぶりに会いたくなったら」
「返しに来るつもりだった?」
「でも…もうそれも出来なくなるから」
「まあね、そりゃ」
「だから今日、返すね」
「何か…悪いことしちゃったな、みなみん」
「そんなこと言わないでよ、私はいい思い出しかないんだから」
「ほんとにそう思ってる?」
「…うん、楽しかった…よ」
「ありがとう、みなみん」
「で、気持ち良かったよぉ、ふふ」
「おいっ!」
「でもね、ムラコウ」
「何?」
「本当の優しさは一番大切な人だけに…う、っ」
「うん、わかった、やっぱりごめん、、だったね」
「ムラコウ…」
我慢できなくなったのか
美波は僕の隣で大粒の涙を流していた。
「元気でね」
「だ、か、ら、もう優しくしなくていいんだって!」
僕は色んな意味で
ようやく美波の背中を見送ることになった、
この部屋で重ねた思い出も含めて。
下宿の階段を降りながら
切なさと安堵が美波の胸に去来する。
「はぁ、これでよかったんだよね…」
一人言を言いながら美波が玄関のドアを開けると
「あ、岸田さん?」
「舞ちゃん、、?」
傘を畳みながらドアの前に立っていたのは
舞だった。
「あ、勘違いしないでよ、私は薮田さんに用事があったから来ただけだよ」
「え?別に何も…」
「あ、いや、私がムラコウと友達なのは知ってるでしょ?」
「うん、何か用事があったんだ?」
「そっ、薮田さんにね、でも居なかったからムラコウに前借りてたCD返しに行ったの」
「そうなんだ?」
「舞ちゃん、ムラコウと付き合ってんでしょ?」
「有香から聞いたの?」
「お喋りだからね、有香は。私、何にも聞いてないのに」
ーじゃ、ムラコウと仲良くね
「ありがとう、ホントは今日出掛ける予定だったの、でも行けなくなったから…」
「サプライズで登場…ってわけだね?」
「そう!」
「じゃ私はこれで」
「あ、岸田さん…!」
「え、何?」
「あ…何でもない」
「うん、それじゃ」
ー ダメだ…!
勝てないや…
あわよくばムラコウと…なんて思ったけど
私じゃあの娘に勝てっこない・・・
何だか恥ずかしくなってきた、自分が…
あんな女子感、私には出せないもんね。
一緒にいるだけで幸せだわ、
その上、エッチなことまでしちゃったりしたら…
私、諦めて正解だったよね、
潔く身を引きます。
美波の思いなど知らない舞は
サプライズを敢行するため
一歩一歩、鴻一の部屋へ向かっていた。
「ねえ、ムラコウいつでも挿入ていいんだよ」
「だ、か、ら!そう言うの無しって言っただろ!」
「冗談だよ、冗談」
結局美波は有香の目を盗んで僕の部屋に戻ってきた
そしてこの狭い部屋の対角線上に僕たちは
距離を置いて座っている
何かと理由をつけて密着したがる
美波への戒めの意味を込めて。
「私がここにもう1回来たホントの理由は…」
「あ!そのCD」
以前、美波に数枚CDを貸したのだが
その中の1枚だけが何故か返されずに
そのままになっていた。
それも限定生産の入手困難なバンドの自主制作CD
「ねえ、これ返すの忘れてたと思う?」
「いや、これ、借りパクしてどっかのお店で買い取ってもらうつもりで…」
「もう!私、そんなに酷い女に見える?」
「酷くないにしても何かと計算してそうだ」
「それは正解、ふふふ」
ー これはね人質だったの
「人質?」
「そっ、もしムラコウと会えなくなって…久しぶりに会いたくなったら」
「返しに来るつもりだった?」
「でも…もうそれも出来なくなるから」
「まあね、そりゃ」
「だから今日、返すね」
「何か…悪いことしちゃったな、みなみん」
「そんなこと言わないでよ、私はいい思い出しかないんだから」
「ほんとにそう思ってる?」
「…うん、楽しかった…よ」
「ありがとう、みなみん」
「で、気持ち良かったよぉ、ふふ」
「おいっ!」
「でもね、ムラコウ」
「何?」
「本当の優しさは一番大切な人だけに…う、っ」
「うん、わかった、やっぱりごめん、、だったね」
「ムラコウ…」
我慢できなくなったのか
美波は僕の隣で大粒の涙を流していた。
「元気でね」
「だ、か、ら、もう優しくしなくていいんだって!」
僕は色んな意味で
ようやく美波の背中を見送ることになった、
この部屋で重ねた思い出も含めて。
下宿の階段を降りながら
切なさと安堵が美波の胸に去来する。
「はぁ、これでよかったんだよね…」
一人言を言いながら美波が玄関のドアを開けると
「あ、岸田さん?」
「舞ちゃん、、?」
傘を畳みながらドアの前に立っていたのは
舞だった。
「あ、勘違いしないでよ、私は薮田さんに用事があったから来ただけだよ」
「え?別に何も…」
「あ、いや、私がムラコウと友達なのは知ってるでしょ?」
「うん、何か用事があったんだ?」
「そっ、薮田さんにね、でも居なかったからムラコウに前借りてたCD返しに行ったの」
「そうなんだ?」
「舞ちゃん、ムラコウと付き合ってんでしょ?」
「有香から聞いたの?」
「お喋りだからね、有香は。私、何にも聞いてないのに」
ーじゃ、ムラコウと仲良くね
「ありがとう、ホントは今日出掛ける予定だったの、でも行けなくなったから…」
「サプライズで登場…ってわけだね?」
「そう!」
「じゃ私はこれで」
「あ、岸田さん…!」
「え、何?」
「あ…何でもない」
「うん、それじゃ」
ー ダメだ…!
勝てないや…
あわよくばムラコウと…なんて思ったけど
私じゃあの娘に勝てっこない・・・
何だか恥ずかしくなってきた、自分が…
あんな女子感、私には出せないもんね。
一緒にいるだけで幸せだわ、
その上、エッチなことまでしちゃったりしたら…
私、諦めて正解だったよね、
潔く身を引きます。
美波の思いなど知らない舞は
サプライズを敢行するため
一歩一歩、鴻一の部屋へ向かっていた。
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