61 / 96
第12章. ささやかな誘惑
【この部屋に…】
しおりを挟む
「咲良、今日は帰らないんだ」
その言葉に思わずドキッとしたが僕は平静を装って
「え?どこに行ってんの?」
「何か怪しいんだよねぇ」
もしや昼間の僕の部屋での出来事が舞に伝わっている?
そんな疑念を払うために僕は
それとなく質問を投げかけた。
「え?友達のとこに泊まるとか?」
「何かね咲良ったら、明日の実習で使う資料を
実家に置いてきたんだって。だから家に取りに帰って明日、直接登校してくるみたい」
「え?そんなにすぐ来れるとこなの?さくちゃんの実家って」
「電車で2時間くらい、らしいよ、県外じゃないから」
「へぇ、そうなんだ」
よかった、それならば
僕が心配するような理由ではないようだ。
「明日は大学、行けそう?」
「うん、ニ限目だけだから夕方いつものとこで」
「うん、そうだね、久しぶりだぁ」
そして舞は再び咲良の話題を始めた
ーさっきも話したけど、何か怪しいんだ
今日いないのも何かタイミング良すぎるんだよね
何か知ってるんじゃないのかな?
今回の後輩の件について
それとも・・・
「他に何かある?怪しいとこが?」
「あるとしたら誰かいい人、できたとか、ね」
「で、そこに泊まる…的な?」
「そうそう、まぁそれならいいんだけど」
そう言いつつ舞とて何一つ確信のある事実はないので
この話題はここで立ち消えとなった。
内心、僕は胸をなで下ろしていた
今日の咲良の行動は確かにこれまでとは違う
正直、僕もどう対処すべきだったのか
咲良が帰った後でも引っ掛かっていた。
「じゃ、また明日ね!」
「うん、それじゃ」
ようやく気持ちが落ち着いた
咲良との一連の流れについては
深く考えないようにしよう
咲良も親友の彼氏とどうこう…なんて
考えていないはずだ。
この数秒間であれこれ考えながら階段を昇り
部屋のドアを開けた…その時
「あ、勝手におじゃましてまーす!」
僕の部屋には・・・
「え?さくちゃん?」
「えへへ、来ちゃった」
何故か咲良がいた。
「『えへへ』ってちょっと!何で俺の部屋にさくちゃんがいるんだよ?」
「ナカムラくんお願い!今夜一晩、泊めてくれない?」
咲良は一体何を考えているんだ?
さっき舞から聞いた話では
実家に帰ってるはず、じゃないのか?
「えへっ、それがね・・・」
今夜帰る話をしたらお母さんが
車でその資料、持ってきてくれてさ
帰る必要なくなった、ってわけ。
「それなら寮に帰ったんでいいだろ?」
「それが、外泊申請も出しちゃった手前、何か帰り辛くてさ」
ー うちの友達はほとんど寮生ばかりだし
他の友達のとこも何だかんだで泊まれなくって…
「だからって、何で俺のとこなんだよ?」
「だぁって、泊めてあげたでしょ?この前」
「あげた、ってか、ほぼ強引に潜入しただけだよ」
「ま、無料とは言わないから、さ」
そう言って咲良はスーパーの袋に詰め込んだ
大量のお菓子を差し出した。
「もしそれで足りなかったら・・・」
「え?」
「うちのことも食べていいから…ねっ!」
「あ、それなら~・・・ってなるわけないだろ!
さ、寮に帰んなよ、さくちゃん!」
「あれ~?そんなこと言うなら、バラしちゃうよ、昼間のこと、舞に」
これ以上、抗うことは出来なかった。
「この鬼め!」
「はい!商談成立ね」
何てことだ・・・
ようやく舞との思い出で
色んな過去が塗り替えられつつあるこの部屋に
舞の親友である咲良が転がり込んでくるとは…
その言葉に思わずドキッとしたが僕は平静を装って
「え?どこに行ってんの?」
「何か怪しいんだよねぇ」
もしや昼間の僕の部屋での出来事が舞に伝わっている?
そんな疑念を払うために僕は
それとなく質問を投げかけた。
「え?友達のとこに泊まるとか?」
「何かね咲良ったら、明日の実習で使う資料を
実家に置いてきたんだって。だから家に取りに帰って明日、直接登校してくるみたい」
「え?そんなにすぐ来れるとこなの?さくちゃんの実家って」
「電車で2時間くらい、らしいよ、県外じゃないから」
「へぇ、そうなんだ」
よかった、それならば
僕が心配するような理由ではないようだ。
「明日は大学、行けそう?」
「うん、ニ限目だけだから夕方いつものとこで」
「うん、そうだね、久しぶりだぁ」
そして舞は再び咲良の話題を始めた
ーさっきも話したけど、何か怪しいんだ
今日いないのも何かタイミング良すぎるんだよね
何か知ってるんじゃないのかな?
今回の後輩の件について
それとも・・・
「他に何かある?怪しいとこが?」
「あるとしたら誰かいい人、できたとか、ね」
「で、そこに泊まる…的な?」
「そうそう、まぁそれならいいんだけど」
そう言いつつ舞とて何一つ確信のある事実はないので
この話題はここで立ち消えとなった。
内心、僕は胸をなで下ろしていた
今日の咲良の行動は確かにこれまでとは違う
正直、僕もどう対処すべきだったのか
咲良が帰った後でも引っ掛かっていた。
「じゃ、また明日ね!」
「うん、それじゃ」
ようやく気持ちが落ち着いた
咲良との一連の流れについては
深く考えないようにしよう
咲良も親友の彼氏とどうこう…なんて
考えていないはずだ。
この数秒間であれこれ考えながら階段を昇り
部屋のドアを開けた…その時
「あ、勝手におじゃましてまーす!」
僕の部屋には・・・
「え?さくちゃん?」
「えへへ、来ちゃった」
何故か咲良がいた。
「『えへへ』ってちょっと!何で俺の部屋にさくちゃんがいるんだよ?」
「ナカムラくんお願い!今夜一晩、泊めてくれない?」
咲良は一体何を考えているんだ?
さっき舞から聞いた話では
実家に帰ってるはず、じゃないのか?
「えへっ、それがね・・・」
今夜帰る話をしたらお母さんが
車でその資料、持ってきてくれてさ
帰る必要なくなった、ってわけ。
「それなら寮に帰ったんでいいだろ?」
「それが、外泊申請も出しちゃった手前、何か帰り辛くてさ」
ー うちの友達はほとんど寮生ばかりだし
他の友達のとこも何だかんだで泊まれなくって…
「だからって、何で俺のとこなんだよ?」
「だぁって、泊めてあげたでしょ?この前」
「あげた、ってか、ほぼ強引に潜入しただけだよ」
「ま、無料とは言わないから、さ」
そう言って咲良はスーパーの袋に詰め込んだ
大量のお菓子を差し出した。
「もしそれで足りなかったら・・・」
「え?」
「うちのことも食べていいから…ねっ!」
「あ、それなら~・・・ってなるわけないだろ!
さ、寮に帰んなよ、さくちゃん!」
「あれ~?そんなこと言うなら、バラしちゃうよ、昼間のこと、舞に」
これ以上、抗うことは出来なかった。
「この鬼め!」
「はい!商談成立ね」
何てことだ・・・
ようやく舞との思い出で
色んな過去が塗り替えられつつあるこの部屋に
舞の親友である咲良が転がり込んでくるとは…
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる