僕とあの娘

みつ光男

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第11章.  愛をちょうだい

【急転直下】

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午後10時前、門限には間に合い、遂に僕は
禁断の女子寮へと足を踏み入れることになった。

「ごめーん、咲良が飲み過ぎちゃってー!友達が送ってくれたの」

数人の寮生が心配そうに部屋から出てきた。

「あ、ありがとうございます、またですかー?咲良先輩」

「じゃ、鴻子こうこちゃん、ちょっと部屋までお願い!」

僕は小さく頷く…"鴻子"だって?
名前まですっかり女子になってしまった。


舞のひと芝居のおかげで
僕はまんまと寮の扉をくぐることが出来た。

幸い、寮長に出くわすこともなく
僕たちは息を潜めるように2階の部屋へと移動する。

部屋に入るなり

「もう、これで安心」

舞が安堵の表情を浮かべる

「迫真の演技だったね、しかしってベタな偽名だな」

「ふふふっ」

すると僕の耳元から

「おはよ」

咲良の声がした。

「…謀ったな」

僕は声を潜めて咲良に言い返した。

「あはは、やっと気づいた?どうしても舞が連れて来たいって言うから、ちょっと、ね!」

「ごめんね、コウイチくん、咲良は寝たふりしてただけなの」

「あの程度の酒じゃうちは酔わないからさ」

何でこんなリスキーなことを・・・?

「舞がね、見送ったり見送られたりが寂しいから、一度朝まで一緒にいたいんだって」

「だから、咲良に協力してもらって・・・」

「さくちゃんは大丈夫なの?俺がいても」

「うん、目の前で二人がエッチなこととかしない限りは大丈夫」

「しないよぉ!咲良の前では」

「じゃ別のとこでは?」

「もぅ!咲良!!」

こうして僕は一晩、女子寮の一室で
過ごすことを余儀なくされた

が、これは
これで非常にスリルのあるゲームのようでもあり

悪い気は全くしなかった。

男性の低い声はこうした建物の階下では
小声でもかなり響く、と聞いたことがある。

二人部屋は二段ベッドになっていて

僕たち三人は何故か下の段にある
舞のベッドに川の字になって座り

壁にもたれながら会話をしていた。

万が一に備えて僕は常に声を潜めて話し、
大笑いもしないように心掛けた。

日付が変わる頃になって

「じゃあ、うちは飲み直して一眠りするから」

そう言い残して咲良は上段に上がっていった。

僕と舞はベッドに二人きり

何とも言えず気持ちは高揚したが
今はこうして二人並んで座っているだけで

それ以上は何も要らなかった。

「俺、床で寝た方がいいかな?」

舞は無言で僕の服の袖をつまみ、
小さく首を横に振った。

ほどなく二人はベットに腰かけたまま
寄り添いなから眠りについた。

ふと目が覚めると舞は横になって
ぐっすりと眠っている。

さすがにこのまま
舞と同じ布団の中で寝てしまうのは、と

僕は壁にもたれたまま舞の寝顔を見ていたが

いつしか僕も眠りに落ちてしまったようで
そこからしばらく記憶がない。


静寂の中に幸福感


ただそばにいるだけで愛しい、
そんな人にこれまで出会ったことがなかった。

舞は特別な存在だ・・・
この関係をもっともっと大切にしていきたい


そんな穏やかな時間から急転直下
突然の窮地の訪れを告げたのもまた舞だった。

「…コウイチくん!コウイチくん起きて!」

「ん?もう朝かな?」

時計を見ると朝の5時、まだ外は薄暗い。

「隣の部屋の娘から今、教えてもらったんだけど…早朝に寮長が、各部屋の巡回に来るんだって!」

「うそでしょ?また?あのバカ寮長!」

突然の知らせに驚いたのか
咲良も寝ぼけ眼でベッドから降りてきた。
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